|
ファブレスで出発
結局、自社栽培に
−−社名のアイ・エム・ビーですが、初めて耳にするとコンピューター会社のIBMと間違えそうですね。社名を聞いただけで業務内容がすぐ分かる人は少ないのではないですか。
岩田 インターナショナル・マッシュルーム&ビーンズの略なんです。食用キノコの栽培・販売が主業務なんですが、たしかに初めてお会いする人からは「何をしている会社ですか」とよく聞かれます。
−−最初からアガリクスの生産でスタートされたのですか。
岩田 平成7年8月に会社を設立し、シメジ、マイタケ、エリンギなどの食用キノコの生産を開始しました。
−−なぜ、キノコだったんですか。
岩田 ご存じのように社長の片山がオーケー食品を創立し、業務用油揚げで成功しましたが、その後、食用キノコで失敗しました。その頃、私もオーケー食品で食用キノコの研究に従事していたんですが、オーケー食品は食用キノコから撤退する方針をほぼ固めていたので、会社に残り、油揚げの仕事をするか、それとも別の会社に行くかを考えていたんです。そんな時、片山が「キノコで失敗したんだから、キノコでリベンジを果たしたい」と言うものですから、一緒に食用キノコの研究・栽培を開始することにしました。
リベンジができるかどうかの確信はなかったんですが、当時、食用キノコ・エリンギ茸が日本に輸入され、普及し始めていた頃だったので、まずエリンギ茸の栽培から出発したんです。
とはいえ、会社はまだ設立したばかりで工場はもちろん本社用地さえなかったものですから、キノコ王国・長野の空き栽培場を賃貸契約で借りることを考え付いたんです。
−−いわゆるファブレス工場ですね。
岩田 ところが、いざスタートしてみると、いろんなことでうまく行かなかったんです。一つには気候の問題など条件面の違いもありましたが、ひと言でいうと農家的栽培と企業的経営栽培の違いですね。結局、1年程で契約を解消し、自社栽培に切り替えました。平成8年9月には敷地内にキノコ栽培場が完成しましたので。
従来の常識を覆す
菌床栽培で成功
−−ところで、アガリクスの栽培はいつ頃から取り組まれたのですか。
岩田 研究は会社設立当初からしていました。アガリクスの栽培方法は牛糞、馬糞、バガス(サトウキビかす)を主体にした堆肥で栽培するのが一般的なんですが、堆肥に含まれる大腸菌や残留農薬の問題、キノコに蓄積される有害な重金属など、安全性の問題があります。
なぜか分からないんですが、キノコは培地に含まれる有害な重金属を吸収して生育するんですね。さらに、こんな住宅地で堆肥を使った栽培をすれば臭気も問題になります。
それで従来とはまったく違う方法でやらなければダメだと目標を定めたんです。社長の片山も「うちは最後発なんだから、よそと同じことをやっていてもダメだ」と言うものですから。
しかし、違う方法でやれるなら、とっくに大手企業や外国企業がやっている。私なんかが挑戦してもできるはずがないと思いましたが、その前にホンシメジの菌床栽培に成功していたので、もしかすると、いままでの学説、やり方は間違っていたのかもしれない、と思って研究を続けました。
当時は実験室もなく、うちの台所が実験室代わりだったんですが、実験を続けているうちに「これはいけるぞ」という気がしたんです。確たる根拠はなかったんですが、ある種の啓示みたいなものを感じたんです。
安全・安心を目指し
無農薬工場栽培
−−アガリクスはいろんなところから様々な種類が発売されており、品質も価格もまちまちで、どれを買っていいのか分からないという声を聞きます。
岩田 当社で最優先しているのは安全性です。人の口に入るものですし、アガリクスを本当に頼りにしていらっしゃる人もいますので、そういう人の期待を裏切るものであっては絶対いけないと考えています。
そのために当社では特許を取得した、おがくず、米ぬか、ふすまに適量の水を加えて培地を作り、そこにアガリクスの菌糸を植え付ける菌床栽培を行っています。もちろん一切農薬は使っていません。温度、湿度管理をした工場栽培で、1時間置きに観察結果を報告し合うようにしています。
また、容器に紙袋を使用していますから、使用後の培地はそのまま有機肥料としてリサイクルできます。有機栽培をされている農家の方からは当社の肥料は混ざり物がないからいいと喜ばれています。
−−随分厳格な管理をされていますね。ところで、販売方法はどのようにされていますか。
岩田 アガリクスはおっしゃるように1万円から高いものは10万円もするものまであります。私どもはお客さんにできるだけ安く提供したいと思っています。そのためには直販しかないんですね。それで当初から通信販売でスタートしています。
最初に発売したのは乾燥アガリクスです。煎じて飲むタイプですね。お客さんの中にはうちのアガリクスを見て「こんな大きなアガリクスは見たことがない。別のキノコではないのか」と言ってこられた人がいますが、きちんと育てたらそうなるんで、正真正銘のアガリクスです。
その後、粉末、錠剤を発売しています。乾燥タイプが150g入りで13,230円、粒状タイプが90g入り10,080円です。
100%純粋な
錠剤を開発
−−粒状の場合は固めるためにつなぎになる物質を入れるから、100%純正ではなくなりますね。
岩田 錠剤を作ろうとした時に、つなぎを入れないと作れないとどこでも言われました。なぜアガリクス100%で固められないのか、と尋ねると、キノコは繊維が多く、コルクのようになっているから、一時的に固めても後でバラバラになる、と言うんです。では、コルク的な性質がなくなるまで微粉末にすればいいのではないかと考え、その技術を持った食品加工専門会社を探し、そこに依頼して粒状にしたんです。ですから1%の混ざり物もない100%純粋なアガリクス錠剤です。
−−それなら安心ですね。今後もキノコ一本で進まれますか。
岩田 キノコも1分野と捕らえ、広く健康関連分野の事業を行っていきたいと考えています。将来は健康村のようなものをつくりたいと思っています。
[取材を終えて]
いまでこそ同社の売上高は6億8,800万円('03年11月期決算)だが、当初、生産を開始したエリンギ茸は成功とは言い難く、3年間はむしろ研究開発中心。売り上げらしい売り上げもなく過ごしている。給料の遅配もある中で同社を支えたのは、女性社員達までもが出した5万、10万円という出資金。社員株主の恩に報いるためにも株式の上場はしたいと言う。
印象に残ったのは社員の礼儀正しさと社員手作りの社屋。松茸の菌床栽培にも挑戦しており、安くておいしい松茸が食卓に上る日は遠くないかも。
2004.09.20 データ・マックス発行「I・B」掲載
|