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「リエゾン九州」の取り組み方

多い、販路を持たない中小企業
 日本は、九州は技術で持っている国であり地域です。
技術立国と言えばハイテクと考えられがちですが、ハイテクを支えているのはロー
テク・ミドルテクで、それこそが中小企業の技術なんです。だから、中小企業がダ
メになればハイテクもダメになるいうことです。
ところが大企業はコスト優先主義でどんどん海外に出て行き、ローテク部分をアジ
アの技術で賄おうとしています。
その結果、国内では技術のレベルアップが進まないばかりか、技能に至ってはもっと悲惨で、優れた技能が日本から次々に消えようとしています。それは間違いなく日本の衰退に繋がる・・・。そんな危機感から、九州の技術系企業の紹介に力を入れてきましたが、取材に力を入れれば入れるほどあることに気が付きました。
 それは、小さくてもキラリと光る技術を持った中小企業、ユニークな技術を持っ
た中小企業が存在する一方で、販路を持たない中小企業が多いということでした。
むしろ技術力と販路は反比例するようにさえ見えました。そして彼ら自身がそのこ
とに悩んでいるということです。
 ちょっとデザインを替えれば売れるのに、もう少しカラフルにすればいいのに、
もう少し小型化できないのか、こんな商品パンフレットで売るつもりなのか・・・。
 このように業界が変われば当たり前のことが製造業の人達にとっては「非常識」
だったのです。いわんや価格に至っては原価計算プラス方式ですから、戦略的な価格設定思考などはゼロです。
これではどんなにいいものを作っても売れるはずはありません。

外部の知恵を結集
 では、どうすればいいのか。
内部で出来なければ外部に求めるしかないわけですが、コンサルタント会社だとかアウトソーシングとかいえば、まずmoneyありきです。結局、報告書のページ数で金額が決まったり、成果はなにもないのに金額だけかかったとなるわけです。
それなら成功報酬でやれないのか。そう考えていました。
 それにしても、右を向いても左を向いても金の亡者か、自己利益しか考えない人
達があまりにも多すぎます。皆、どこかで自分のビジネスにすることしか考えてな
いわけです。
 大体、昔から世界中そうですが、持てるものより持たざるものの方がボランティ
アや助け合いの精神に富んでいます。本来なら持てるものが持たざるものに与えればいいのですが、寄付でも持たざるものの方が協力的です。金は持たなくても心は富んでいるのでしょう。ただ、最近は必ずしもそうとは言えない例が増えていますが・・・。

 ともあれ、マーケットに近い人達を集めて議論すれば、いい知恵が出るのではないか、と考えたわけです。皆の専門知識や眠っている知恵をちゃっかり拝借しようというわけです。見返りは、前にも書きましたが、参加する喜びと自分の活用されない能力を活用することと、最後に成功報酬です。
 やり方は企業版勝手連方式のプロジェクト制です。
つまり応援したい企業を応援するということで、金をもらって頼まれればするということではないということです。その企業やベンチャー経営者の考え方に共感できたり、商品に惚れ込んだから応援しようじゃないか、ということです。ですから、当初はいまのように定期的に例会など開いていませんでした。その商品をマーケットに出すために知恵を絞り、議論しているわけですから、会合は毎週、あるいは各週といった具合に集まって議論していました。
まさにその企業のある部分、広告戦略、販売戦略、市場調査といった部分をアウトソーシングで受けるというか、その企業と一緒になって考えているわけです。
ですから、毎回会議にはその中小企業やベンチャー企業の経営者が参加することが条件になります。
代行ではありません。思いを共有することから始め、一緒に進むということを重視
したいと考えました。企業版勝手連と呼んだのもそういう意味です。

プロジェクト制による取り組み
 第1号案件は福岡の某ソフトウェア会社が開発したペット向けのある商品でした。
まず、その企業にプレゼンをしてもらい、商品について質疑応答をします。メンバーが商品をよく知ることから始めなければならないからです。
そしてメンバーが納得して、これは面白そうだとなれば、それから販売に向けての議論と調査を始めます。
 本当に市場性があるのか
 販路はどこなのか、ほかには考えられないか
 PRはどうする
 経費はどこまで出せるのか

そんなことを考えながら議論していったわけです。
 市場があるかないかということも重要ですが、その市場に合った販売方法を考えようとしましたし、販売価格が少し相場より高いのではと思っても、価格が下げられないと分かると、その価格で売る方法を考えました。
PRは私の仕事を生かしてパブリシティで各媒体に紹介したり、電波に持ち込んで
くれたメンバーもいました。通販雑誌への掲載、国際見本市への出店をセッティングしてくれたメンバーもいました。
不思議なもので皆が知恵を出し合えばかなりなことができるんです。

 うまい酒を飲もう!
それが合い言葉というわけではありませんが、そんな気持ちで皆が力を貸してくれました。
 私は人間性善説とまでは言いませんが、人に関してはオプチミスト(楽天主義)です。
世の中捨てたものではないよ。そんなに悪い人間はいない。
ありがとうって言わない人間はいない。そう言い続けてきました。
だが、人に対する私の楽天主義はその後多少の修正を余儀なくされました。
世の中には自分の利益しか考えていない人がいるということも分かったからです。

他力ということ
 リエゾン九州を立ち上げた最初の1年間はかなりのエネルギーを消耗しました。
私の生業は当時も今もフリーのジャーナリストですから、原稿料とたまの講演料しかないわけです。当時は事務局経費すらなかったから、手出しはあっても収入はないし、技術紹介の記事を書くために九州中を飛び歩いても取材費が出ない媒体もありましたから、原稿料で計算すると完全に赤字でした。
そのため県外取材は取材費が出る媒体で行った時、ついでに2社程取材して帰るという方法を取っていました。
 宮崎や鹿児島に1社の取材だけで行くのは勿体ないから、ついでに取材できるところを探して、そこも取材して帰るというやり方です。
どうせ1日潰れるんですから朝一で出かけて遅い便で帰ってきても一緒です。
とりわけ宮崎では取材先を色々設定して頂いた先輩のお陰でアポイントを取るのが楽で助かりました。
 まあ、もともと私の仕事は半分ボランティアみたいなところがありますから、取材に関してはそれ程苦でもなかったのですが、組織運営は結構大変でした。
そのため途中で何度も、もっと適任者がいるんではないか。
なぜ、私のようなフリーのジャーナリストがこんなことをしなければならないのか、と自問もしましたし、いっそ解散した方が楽かもしれないと考えたこともありました。
もともと組織を立ち上げたことからしてそうです。
もっと企業人がやるべきことで、金も持たず理想だけ持っている青年でもない中年がやるべきことかと感じていました。
雑誌に紹介された時もとても恥ずかしくて年齢なんて正直には言えなかった程です。
30代とか40前半ぐらいならまだしもね・・・。以来、年齢不詳にしています。
 ま、それはいいんですが、私がリエゾン九州を立ち上げた時の正直な気持ちはやむに止まれぬ気持ちというか、そのような組織が必要で、それを作らされたのではないかと思いました。
誰にと言うと、それは目に見えない大きな「時代」の意思だと思っています。
歴史の狂言回りの役目をさせられているわけです。
「時代」がこのような組織を必要としなくなれば、組織は役目を自然に終えるに違いない。続いているのは、まだ「時代」が必要としているからに違いない。
ある時、そう感じて、すべてを「時代の意思」に任せました。
抗わなくしたのです。組織が拡大するのも縮小するのも、なくなるのも、そして恐らく私自身の生命も、すべて「時代の意思」なのだから、一切を「時代の意思」に任せよう。
そう思ってから少し楽になりました。
 他力本願ーー御仏の前にすべてを投げ出し、ひたすら御仏を信じ、御仏におすがりする・・・。
これが他力本願ということだと私は理解しています。
対立語は自力本願で、こちらはひたすら肉体と精神を鍛え、悟りの境地に至る密教の教えでしょうか。
 だが、他力本願の境地に至るのはなかなか難しい。どこかでほかに道があるのではないかと思うし、それを探ろうとしてしまいます。
 リエゾン九州を立ち上げた時、私が漠然とした将来への不安を感じていたのも事実です。自分の人生、思い残すことはないか。人のために何かしてきたか。そんなことを考えないでもありませんでした。

2つのプロジェクトチームを立ち上げる
 ベンチャー・中小企業を育成するためにはどうしても次の2点が欠かせない。この数年ずっとそんな風に考え続けていたことを今年、実行に移すことにしました。
 一つはOJTチームの発足です。
中小企業が生産性を上げ、競争力を持つためには製造現場の改善をする必要があります。
最近いろんな分野でトヨタ生産方式の導入が行われています。別にトヨタ生産方式に限ることではありませんが、それだけ現場の見直しが急務になっているということです。
特にこれだけコストダウンを迫られると中小企業の生き残りは難しくなっています。
競争力を付けるためにはどうしても製造現場の改善をする必要がある。そう考えています。
そこでトヨタ生産方式をトヨタの大野副社長から学んだ地場企業OBの方を中心に「OJTチーム」を発足しました。現場に入り、現場でOJT指導をするのがこのチームの目的です。
 もう一つは「技術評価委員会」の発足です。
ベンチャー・中小企業が常に資金不足なのは金融機関から不動産を中心にした担保を要求されるからです。もし、技術が担保になれば、あるいは技術力を投融資の際の参考にしてくれれば、資金が流れるはずです。
 ただ従来、技術評価といえば大学等の研究機関がマーケットを無視して技術力の高さのみを評価していました。
これでは技術が担保になりません。あくまでマーケットとの関係で技術を評価することが大事なのです。
そのためのチーム作りをし、04年前半にはリエゾン九州内に「技術評価委員会」を発足させたいと考えています。


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