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負圧の原理を応用した強力換気システム「ハイキワン」を開発

ハイキエース株式会社 社長 川崎留二 氏
福岡市中央区薬院 

 

 地震、雷、火事、親父 ---かつてはこう言って恐れたものだが、いまでは親父は論外としても、雷もそれほど恐ろしい存在ではなくなってきた。だが、やはり地震と火災は相変わらず恐ろしい。福岡市では95年、96年と2年連続で天神、博多駅の地下街で出火。幸い大事には至らなかったが、市民の肝を大いに冷やした出来事はまだ記憶に新しい。いずれも出火個所は排気ダクトで、ダクト内の油汚れなどに調理場の火が引火したのが原因と見られている。
 一方、家庭では天ぷら油に引火して出火するケースが後を絶たない。通常、コンロに鍋をかけて熱した場合、中の天ぷら油に引火するまでの時間はわずか3分あまりである。この引火時間を9分少々まで延ばしたのがハイキエース株式会社(福岡市中央区薬院、川崎留二社長、資本金1200万円)が開発した換気システム「ハイキワン」である。

低圧と高圧の差を
利用して強力換気

 「論より証拠。まず、このビデオを見てください」
 取材に訪れた筆者に、いきなり川崎社長はビデオを見せながら次から次へと説明を始めた。
 「これは西部ガス総合研究所で実験してもらった様子をビデオに撮影したものなんです。最初はハイキワンを付けずにしています。3分40秒で発火しているでしょう。次にハイキワンを稼動させて実験すると、どうです、もう5分たちましたよ。まだ発火しないでしょ。まだ、まだ発火しませんね。あっ、いまやっと発火したでしょう。9分20秒かかっていますよ」
 西部ガス総合研究所の資料によれば、この時使用したコンロはハイカロリーバーナー、ガスは13A供給ガス。直径30aの天ぷら鍋に約700cの天ぷら油を入れての実験である。
 なぜ、ハイキワンを稼動させると天ぷら油が発火しにくいのか。ひとことで言えば、ハイキワンの優れた吸引力のせいである。
 「ハイキワンの吸引力が強いからコンロとの間にエアカーテン状の気流ができるんです。そのため気化した天ぷら油は瞬時に排出され、コンロの炎へ回りにくくなるから引火しないわけです」
 と川崎社長は説明する。
 この強い吸引力を産み出しているのが、低圧と高圧の差を利用した負圧式換気システムである。
 従来の換気システムはレンジフードのすぐ近くにファンを取り付け、ダクトによって空気を外に押し出すやり方。そのためどうしてもファンの回転音がうるさく、どうかすると換気中は話ができないこともある。
 ところが、負圧式換気システムはレンジフードとファンの間に低圧室(風袋)を設け、モーターによるファンの回転で低圧室内部を真空に近い状態にする。水が高いところから低いところに流れるように、気体も圧力の高いところから低いところに流れていく。そのため気圧の高いレンジ周辺の空気が低圧室に吸引される。この圧力差を換気に応用し、小さなファンの力で大きな吸引力を産み出しているのが特徴である。

国内、海外10カ国で特許
音が静かな換気システム

 しかもファンの音は外に排出されるため、室内はいたって静か。ちょうどジェットエンジンの音が後ろはうるさくても前はそれほど大きくないのと同じ理屈である。さらに低圧室入り口に空気整流板を設置し、低圧室の空気層が音を遮断する役目を果たしているのも特徴。
 「ヒントはスポイトです。液体でもスッと吸い上げるのだから気体を吸引するのは簡単だろうと考えた。ただ困ったのはスポイトのゴムに当たる部分。ここをどうするかと悩んでいる時に『ミニシロッコ』ファンという小さなファンが発売されたので、これを取り付けたところ非常にいい結果が出たわけです」(川崎氏)
 この負圧の原理を応用したシステムで同社は平成5年以降次々に特許を申請。現在すでに4件が公開されている。また海外は米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、中国、台湾、韓国、オーストラリアの10カ国に特許出願中である。
 このほかにもハイキワンの特徴として次のような点が挙げられる。

  1. 気化した油がキッチンに拡散する前に、瞬時に吸引・排気されるので油汚れがほとんどない。
  2. もし炎が上がっても、低圧室は酸欠状態に近いから、それより先に炎が行くことはなく、モーターなどの延焼がおきにくい。
  3. 本体はステンレスでできているから掃除が簡単。
  4. 従来の換気システムにつきもののフィルターがないから、ランニングコストが安い。
  5. 音が静かで吸引力が強いから空気清浄器としても使える。
  6. 面倒な作業がなく、ドライバー1本あれば素人でも簡単に取り付けられる。マンションなどでは現在使用中のダクトにそのまま接続するだけでOK。

通信販売も計画
中国市場にも参入

 同社の換気システムが最初に注目を集めたのは昭和55年。東京ガスの第1回器具展に出展した時。当時は現在のような上引き換気システムではなく、下引き換気システム。吸引口がガスコンロより少し高いぐらいの位置にあり、ダクトをレンジ台の下を通している以外は原理は同じ。
 「継ぎ目のない1枚ステンレスの流しを作って欲しい、とお客さんに言われたのが水回り商品に進出したきっかけ」と川崎氏は言う。こうして欲しい、こんな機能が欲しい、というお客さんのニーズを聞いている中で生まれたのが負圧の原理を応用した換気システムだと語る。  川崎氏はもとをただせば第一工装(福岡市)の創業者。それが新換気システムの開発に夢中になり、以前の会社を「後輩に譲り」、自分でまた新会社をつくったのだ。しかも「一つの特許だけでは会社をいつまでも守れない」と、下引き排気システムから数年後に、現在の上引き排気システムを開発。昭和58年には中小企業庁長官奨励賞も受賞。昨年開催された「テクノピア'96九州」に福岡県企業振興公社の推薦を受け、出展し、各方面の注目を集めた。
 ハイキワンの名称は現在の上引き換気システムからで、「ハイキ」は排気の意味。「ワン」は業界でナンバーワンを目指したいという願いを込めて付けたもの。さらに今後、中国市場の開拓を進める計画もあり、「ワン」は中国語でいえば王。文字通り中国でトップの地位を確保する願いも込められている。
 現在、大手家電メーカーやゼネコンからの引き合いが相次いでおり、今後、業務提携による販売を積極化していく方針だが、取り付けが簡単という利点を生かして、通信販売も計画中である。本体価格は25万円だが、現在は発売記念価格の19万5000円で販売している。

参考画像.A
参考画像.B 図:床下タイプ<内部構造・取付図>
参考画像.C 写真



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