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中国で成功する方法(1)

中国人の文化・考え方を理解せず、
自分のやり方を押し付けるから失敗する。


上海平野磁気有限公司  代表者:平野信幸董事長、呂振総経理
本社工場:上海市普陀区同普路1225号 長征工業区7号楼

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 生産拠点と見るか、消費マーケットと見るかの違いはあっても、日本、いや世界中の企業にとって、中国はますます無視できない存在になってきつつある。しかし、かたや中国に進出して成功している企業があるかと思えば、こなたでは失敗し、二度と中国人とは組まないと息巻いている人もいる。なぜ、そのようなことが起きるのか。今後、中国に進出する企業はどこに注意すればいいのか。中国に進出した中小企業で成功組といわれる上海平野磁気有限公司の董事長、平野信幸氏に聞いた。
(聞き手・ジャーナリスト 栗野 良)

 

総経理は昔のバイト留学生
能力を見越して、彼に投資

 ーー董事長というと日本式に言うと会長ということですね。どういうきっかけで中国に進出されたのですか。
 平野 以前、私の会社(東洋磁気工業梶A東京)でアルバイトをしていた中国人留学生がいたんですが、中国に帰ると会社を辞めてから音沙汰なかったのが、2年後に突然、手紙が来て「社長、上海に来ませんか」と言うわけです。「上海は大発展しているから、ぜひ見に来てください」と。急に会社を辞めて、その後、音沙汰なかったのですから最初はちょっと妙な気がしましたよ。でも、中国の変化に関心はあったので来てみると、「中国で磁気産業に取り組めば絶対成功する」と熱心に説得するわけですよ。それが92年ですね。それから2年後の94年に会社を設立したわけです。
 ーー進出企業の多くは現地の中国人を総経理に据え、日本から時々来て経営を見るというパターンが多いと思います。平野さんは最初から董事長として中国に常駐されていたわけですね。
 平野 いや最初からではないんです。94年に進出したんですが、まだ日本で事業をしていましたので、それまでは出張で来て経営を見ていたわけです。私がこちらで住みだしたのは99年からです。
 ーーパートナーであり、総経理に就任したのは当時、日本でバイトをしていた留学生ですね。
 平野 私は彼が留学生だったとか日本語が話せるからパートナーとして組んだのではありません。彼から上海で会社を作りたいから投資してくれという話があってから2年間、上海の状況やいろんなことを観察し、彼には企業家的なものがあると判断したからパートナーとして組んだわけです。
 よく、日本に留学していたとか、日本語が話せるからというだけで、その中国人と組んだり現地のトップにする例がありますが、これはほとんど間違いなく失敗しますよ。

明治維新に似た感動が
変化し続ける上海にある

 ーー日本の事業を整理してでもこちらに拠点を移そうと思われたのはなぜですか。
 平野 上海に来るたびに目の前で上海の街が変わっていくわけですね。それを見ているとワクワクしてくるわけです。事業家としてこんないいステージはないと思いましたね。あの頃の感動は恐らく明治維新を生きた人達の感動と同じものだったと思います。
 来るたびにどんどん近代化され変わるわけです。こんな所にビジネスチャンスがないわけはないと思いました。それと日本にどんどん魅力がなくなってきたということも相対的にありますけどね。
 ーー中国の企業と取り引きしたり、中国への進出、あるいは投資をためらう理由に、中国の企業は品質が悪い、納期を守らない、共産党1党独裁政治だからいつ政策が変わるか分からない、これからはベトナムだという人もいますが。
 平野 中国のマイナス要因をいう人達は中国に進出しない理由を探しているだけですよ。情報を上手に収集して、現状を分析して行くか行かないかを決断するのではなく、行かない理由を探しているだけです。
 ベトナムとかタイに工場を移転している人はその企業の持っている特性であり、いま中国で頑張ろうとしている人達は中国を市場として見ている人達です。この10年程で中国はアメリカに並ぶでしょう。その中国を自分の事業の市場として見るかどうかだけです。

海外で事業する文化が
日本には育ってない

 日本が海外進出してきたのはこの数10年ですよ。まだ日本に海外で事業をするという文化が育ってない。早くから海外展開してきた欧米などは成功事例などの教科書などもたくさんあるが、日本にはそれがない。だから、海外でうまくやれない。
 中国人が納期とか製造ということに対してどういうように認識しているのか、中国人がどんな文化を持っているのということを日本の企業トップが認識せずに、自分たちのやり方を押し付けている。だからギャップが生まれる。しかし、こうしたギャップはどこの国でもあるし、実は日本国内でもあることなんです。
 あまりに中国だからという目で見るからおかしくなる。60歳以上の人は分かっていると思うが、日本が過去通ってきた問題ですよ。コピー商品の問題にしてもね。
 ーーたしかに、中国はいろんな面で変化していますね。サービスもよくなりましたし。
 平野 10年前、5年前はこうだったという人がいますが、1995年当時といまの中国は、日本でいえば江戸時代と明治維新後ほどの違いですよ。中国では1年前の情報は古くて役に立ちません。だから、考え方を変えなくてはダメです。中国人だって変化しているんだから。
 たしかに過去、合弁方式で失敗した企業もあります。そして、「中国人は日本人を平気で騙す」とか「会社を乗っ取られた」と言っている人がいるのも事実です。しかし、ここは中国なんだから、中国独自の商習慣や文化・風習の違いなどを理解しないと。そういうことをせずに、自分達の論理で経営を行うから失敗した企業が多いと思いますよ。
 ーー日本人はどこに行っても自分達のやり方を押し付けようとする傾向がありますからね。

上海平野磁気有限公司
本社工場:上海市普陀区同普路1225号 長征工業区7号楼
代表者:平野信幸董事長、呂振総経理
設立:1994年8月、平野信幸と呂振の共同出資
事業概要:
1.着磁電源装置の製造・販売
2.磁気測定装置・解析装置の製造・販売
3.製造ライン冶工具の設計・開発
4.電器機器・磁気応用製品の受託生産
5.25年以上の経験による磁気応用製品の開発支援

                                   

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