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午前0時閉店、0時半開店の準24時間営業で
データを蓄積し、24時間営業を開始しました。


(株)マキオ 代表取締役社長 牧尾英二 氏
鹿児島県阿久根市赤瀬川2210 / tel  0996-72-2500

 平成9年3月、鹿児島県阿久根市の国道3号線沿いに24時間営業大型店「AZスーパーセンター」(売り場面積11,635u)をオープンした。売り場面積1万u以上の24時間営業大型店は九州はもちろん国内最初である。食料品を中心に日用品や家庭用品、医薬品、酒など約16万品目を取り扱っている。だんご屋、たこ焼屋、ゲームセンターを除くと生鮮食品、ラーメン・カレーショップ、ベーカリーに至るまですべて直営というのも珍しい。

昭和61年に川内市郊外で24時間営業、
1万uの店をプランニングしていた


 −−阿久根市の人口が2万7000人。地方の小都市で24時間型大型店舗をオープンされたわけで、業界ではどこも興味津々といった感じで見ていると思うんですが。
 牧尾 皆さん方から3つのリスクと言われます。1番目に立地リスク、2番目に商品構成のリスク、3番目に営業時間のリスクと。なぜ、そこまでのリスクを冒してやるのかと。私は、そういう企業があっていいじゃないか、と思っています。
 15年前に帰ってきて我々を育んでくれた土地を、山を、農地を荒らし、ほったらかして、はたしてこれでいいのか。もっと田舎を見詰め直さないといけないと思ったことが一つです。
 それから仕事をさせていただく以上は社会的に価値観を見出せることをしたい。二番煎じ、三番煎じではダメだということが2つめ。
 3つめは、日本の小売り価格は世界で一番高いと言われるぐらい海外と価格差がある。商品構成も供給者側の都合で提案されている。これはいかん。ということで計画したのがAZの最初のプランニングなんです。
 じゃあこんな田舎でできるんだろうか。理想はそうでも現実は甘くない、ということで問題をいろいろ整備して、できそうだ、とプランニングを具体化したのが昭和61年なんです。

 −−今回初めて考えられたんではなく、実は61年から考えられていた、と。
 牧尾 その時はここではなく隣町の川内市樋脇町でした。それで通産局に行きましたら一笑に付されました、そんな田舎では難しいよ、と。人口当たりの売り場面積が飽和状態だから出店できないと。

 −−その時はどれぐらいの売り場面積を計画されていたんですか。
 牧尾 いまと全く同じです。奥行きが99.5m、幅140mです。
現在の建物は奥行きが98m、幅150mですから規模的にはほとんど変わりません。
すでに食品なんかも組み込んでいましたし、衣料品、ホームセンターのゾーンも入っていました。ただ食品の比率がいまの方が大きくなっているぐらいです。
 最近アメリカのウォルマートさんを見ましても、ちょうどこれぐらいの規模なんですね、スーパーセンターというのが。でも、その頃はウォルマートさんにも食品を入れたスーパーセンターなかったからですね。だから、アメリカのウォルマートを真似られたんじゃないかと言う人もおられますが……。
 −−むしろ先取りをしていた、と。

販促費は対売上高0.2%で、チラシはほとんど入れません。
商圏人口3万人で成立が基本です。


 牧尾 この店を、ディスカウントストアですか、ホームセンターですか、スーパーですかとよくおっしゃるけど、私どもがやりたいのはお客様サイドから見てどういう形がいいのか。
 例えばこの店は田舎立地の小商圏型ですから、好むと好まざるとにかかわらずなんでも揃えるワンストップ型でなきゃいかんというのがコンセプトです。
 ここで間に合わなかったら県庁所在地とか隣の川内まで買いに走らなきゃいかんですから。だからこういう広いワンフロアが必要だったんです。

 −−たしかに2フロアとか別棟建てでは2万uぐらいのものはありますが、ワンフロアでこのスペースのものはありませんね。
 牧尾 一見普通の大型小売店と似ていますけど、中身はかなり変えてるんです。
例えばチラシは6年ぐらい前からどんどん減らしています。業界常識の10分の1ないし20分の1ぐらいのコストでやっています。大体売上高に対して0.2〜0.5%ぐらいですから。それもお知らせ的なチラシで、日替わり目玉商品は昭和59年頃からやっていません。
 オーソドックスにシンプルに行った方がコストもかなり安くできます。それでお客さんが来やすく、安心して買える店にしたいと考えています。

 −−商圏人口は16万人ぐらいと発表されておられましたね。
 牧尾 それはマスコミが付けられた商圏だと思います。
 1次商圏で3万〜4万弱、2次商圏で6万ぐらい、3次商圏で10万人。そんなところだと思います。正月とかお盆などを除けば3万人ですよ。第1次商圏人口の3万人で成立しないといけないというのが基本です。

夜間の方が客単価はアップ。コストも予定より少なく、
高齢者・障害者に還元している。


 −−24時間営業の前に8か月近く、夜12時に閉店し30分後の12時半に開店する準24時間営業をされていますね。この訓練期間というか、ここでかなりのノウハウを積まれましたか。
 牧尾 そういうことでやったんじゃないんです。当初は午後7時閉店でして、それを延ばしてください、延ばしてくださいと(通産省に)お願いしていたんです。
 それで夏時間に限っては1時間延長が認められ、引き続き24時間営業のお願いをしていたんですが、その後、10時まででどうかという話があり、10時までなら12時までやらせてくださいと。
 実は大規模小売店舗法には閉店時間は通産省の許可が必要とされていますが、開店時間は規制がないわけです。
 それで12時に一度閉店し、12時1分に開店しようと。ところがレジを閉めるのに20分ちょっとかかるんです。それで12時閉店、12時半開店にさせていただきました。
 準24時間なんですけど、これである程度データを蓄積しまして、時間帯別来店客数、売上高データを逐次通産省に送り、こういう状態です、来店客数はこうなってますと説得しながら、お願いしたわけです。

 −−閉店時間を延長すると同時に開店時間も繰り上げていかれたんですね。
 牧尾 最初は午前9時オープン、午後7時閉店。それから午後8時閉店になり、午前7時オープン、午後12時閉店。そして午前0時半オープン、午後12時閉店。今回は24時間営業です。

 −−夜間の客単価の方がアップしているそうですね。
 牧尾 当初の予定からしますと、夜間営業コストはかかるだろうと思ったのが意外とかからないということが分かりました。
 オープンしてちょうど四半期ですが、オープン直後は特別ですから外して計算しても、当初予定より経常利益が上がったものですから、思い切って、長年私が考えていた、高齢者の方、身体障害者の方に対する還元・優遇処置を実行しようということで、7月10日から60歳以上の方と身体障害者の方に消費税5%分を現金でバックする制度を導入したんです。
 これもかなり寄与して、おじいちゃんのカードを使えば5%バックで買えるからと、夜間は3世代家族揃って買い物に来られ、これが客単価が上がる要因の一つです。
 もう1つは、私も想定しなかったんですが、午後12時前後になりますと飲食店関係の方達が仕入れでお見えになる。
 市場に行くと買う単位が大きかったりで自分の思う通りにできないんですね。ところが私どものところは全体的に安くなっておりますし、必要なだけ買えばいいから結果的にロスが出ない。品数も多い。というようなことで夜中はそういう買い物が多いですね。多いということは結構率は上がるんですね。そういことで客単価は明らかに上がっています。

 −−1人当たりいくらぐらいですか。
 牧尾 昼間の客単価が3500円ぐらいで、夜間が大体4500円ぐらいになります。買い上げ点数も夜間の方が上がっています。これははっきり傾向として出てきています。

 −−今後の課題といいますか、手直しすべき点はございますか。
 牧尾 こういう小売りをやっていればとどまるところを知らないという感じじゃないでしょうか。
最近、店を少し変えましたけど、オープン後3か月ごとに見直していくつもりです。まだ60%ぐらいの仕上がりですから。

〈牧尾英二社長プロフィール〉
 昭和16年7月阿久根市に生まれる。同35年県立川内商工高校機械科を卒業し、富士精密工業設計研究部(現日産自動車)に入社。昭和57年に帰郷し、マキオホームセンターの経営に乗り出す。平成8年度の売上高は約31億円。9年度は50億円が目標。AZスパーセンターの初期投資額は実質約12億円。オープン半年で黒字になっている。

    (このインタビューは1997年に行ったものだが、AZスーパーセンターの原点が
     よく現れているので、ここに収録した)


 


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