「コロナ」一色世界は「合成の誤謬」を生まないか(1)


栗野的視点(No.680)                     2020年4月14日
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「コロナ」一色世界は「合成の誤謬」を生まないか
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 なんとも憂鬱な社会になったものだ。右を向いても左を向いても「コロナ」「コロナ」で、いまや「コロナに気を付けて!」が挨拶になってしまった。他の話題はないのかと思うが「緊急事態宣言」まで出されればますます「コロナ」一色に染まっていく。

外出禁止でDVの増加

 「緊急事態宣言」の発令は4月7日。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象である。福岡は早すぎるのではと思ったが、感染者の増加カーブが急上昇したかららしい。期間はゴールデンウィークが終わる5月6日までということだが、それはあくまで当面の話で、延長される可能性もある。そうなると社会生活への影響はさらに増す。
 そして、この間は「不要不急の外出」は控えろと言う。まあ、言い方は「控えて欲しい」という「要請」だが、この国のやり方は言葉は柔らかいが実際は「強制」と同義語だから怖い。

 大体、外出というものはほとんどが「不要不急」だ。かつては生きるための日常生活品の買い出しだって、いまや店まで買いに行かなくてもネットで買える。企業活動でも電話、メール等で済ませる部分は多く、本当にその外出は必要かと改めて問われると「不要不急」ではなくなる。かくして人は建物の中に閉じ籠もらざるを得ない。
 閉じ籠もるとストレスがたまるし、運動不足にもなる。それならフィットネスクラブにでも行ってひと汗流そうかと思えば、「緊急事態宣言」でフィットネスクラブも映画館も娯楽施設も皆休業。

 幸い電車、バスは動いているから通勤はなんとかなる。時短営業で退社は早いが、寄り道するところもないから帰宅が早くなる。
 帰宅すれば家族も出かけるところがないから皆在宅。「亭主元気で留守がいい」とは互いに言えること。それが子供を含め皆、一つ屋根の下に顔を揃えているものだから互いの距離が近い。
 個体間の距離が近いとストレスがたまり、攻撃的になり互いに傷付け合うことはマウスや魚の観察でも明らかにされている。結果、DV(ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力)が増えているという報告もある。

合成の誤謬が起きる

 それは別にして、私が憂鬱さを感じているのは、この先の社会に危惧を抱いているからである。というのも今、世界は似たような状況、異を唱えにくい社会になりつつあるからで、戦前の状況を知っている年代の方は既視感を覚えるのではないか。

 ごく一部の国を除いて、世界の政治リーダーはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)との戦いに勝利することを至上命題と考え、全国民、全地球人に、この「戦争」に参加し、共に戦うことを求めている。
 そう、ハリウッド映画「インディペンデンスデイ」の米大統領のように、彼らは「ヒーロー」になりたがっている。とりわけ戦争を知らない若いリーダーほどウイルスとの「戦争」という表現を使いたがる。
 そして彼らに共通しているのは
1.新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐ
2.そのためには私権の制限はやむを得ない
3.緊急時にはトップの権限で立法府の権限を停止し、全権を掌握するという図式
を思い描いていることだ。

 集団が危機に直面している時、外に敵を求めるのは、いつの時代にも取られてきた手法である。
「巨大な敵が攻めてきており、我々が存亡の危機に瀕している。こんな時に内輪で揉めている場合ではない。全国民が一致団結して事に当たるべきだ」
「そうだ我々も多少の不自由は我慢すべきだ」
「こんな時に贅沢を言ってはいけない」
「我々にできることがあれば言って欲しい。協力する」
「感染者は隔離しなければならない」
「陽性反応が出ても症状が軽い人間は自宅待機で様子を見て欲しい」
「感染者が全員、病院に来ると医療崩壊を起こす」

 これら1つ1つは正しいし、その通りだと思うに違いない。だが、手放しで喜べないのも事実だ。
 1つは最初の小さな善意も声が集まり大きくなると、どんどんエスカレートしていくことはよく見られる現象で、やがて自発的な善意が他者への強制へと変化していく。非協力者は「非国民」と言われ、有形無形の圧力、差別を受けだす構図はなにも日本だけに限ったことではない。
 2つ目は限定的な権力集中が、危機が去った後も居残り続け、それが既成事実として定着していくことだ。
 そして、それらは既に現実のものとなりつつある。
                                    (2)に続く

 


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