「地域商店街から店舗が消える(2)
〜少子高齢化が閉店を加速させる

少子高齢化が閉店を加速させる

 内閣府が発表した1月の国内景気動向指数は前月より2.7ポイント下がり、これまでの「足踏み」から「下方への局面変化」と引き下げられたが、人手不足感はまだ緩和に向かわないのはなぜなのか。それは景気動向が現場に反映されるのに時間がかかるからだが、景気と雇用の曲線が連動しているのは過去の例からも明らかで、しばらくすれば人手不足感が緩和に向かうのは間違いないだろう。

 ところで、昨年後半から今年にかけて私が住んでいる住宅地では閉店する店舗が相次いでいる。冒頭の靴屋閉店以前にも美容院、理容院、整骨院(マッサージ店)、八百屋、ドッグカフェ、博多創業の和菓子屋の営業店舗、ファミリーレストランと7店もが閉店している。

 これらの店舗はバス停の1区間、距離にして300m程の間に位置していたから地域の閉店率はかなり高いと言える。ファミリーレストランを除き、これらの店はいずれも小店舗だが、「アベノミクス」の恩恵は受けなかったのか、あるいは2本、3本の矢は大企業止まりで小・零細企業にまでは届けられなかったと言うのだろうか。それとも「アホノミクス」、いやまた間違えた「アベノミクス」は最初から地方の商店など眼中になかったのだろうか。
 いずれにしろ地方の小店舗は景気の好影響を受けることがなかったにもかかわらず、今後は経済減速の影響をモロに受けていくことになり、ますます苦境に立たされることになる。

 ところで、この地域はかつての公団の分譲、賃貸マンションや戸建住宅が並んだ「高級(?)住宅地」と言われたこともあったが、今はその頃と様相がすっかり変わり空き家と高齢者が目に付く街になっている。福岡市でも比較的初期に開発された中・大型団地がある地域はどこも似たり寄ったりだと思うが。

 では、景気減速前の店舗閉鎖は昨今の人手不足によるものなのかと思うが、事情は少し違うようだ。ファミリーレストラン以外は大抵2、3人の家族経営。美容院にしても場所を変えての営業再開予定と貼り紙が出ていたから、人手不足閉店というより売上減による閉店、少子高齢化による閉店と言った方がいい。
 かつてこの国の経済発展を支えた層はいま高齢者になり、胃袋も財布も細っている。代わりに増えるのは杖姿とグランドゴルフ、ウオーキングに精を出す姿。外出機会も減るから自家用車の買い替えもない。となると最初に客が減るのはファッション系ショップと美容院。
 第一、100mに1店の美容院は多すぎる。それでも壮年齢以下の女性が多ければ成り立つだろうが、年齢が上がるにつれ美容院に通う頻度は減るだろうし、そうなると美容院過多で1店当たりの売り上げが減少するのは自明で店の数は減らざるを得ない。

早朝7時から営業している美容院

 そんな中でも頑張っている美容院もある。他の店の美容師が客と同じく高齢化している中、珍しく30代の男性美容師が1人でやっているのだ。営業を続けていられるのが不思議(と言えば怒られそうだが)だなと思っていたが、ある朝ウオーキング中にその美容師が店を開けている時に出くわしたので、これはいい機会とばかりに話しかけた。
「朝早くから開けていますね」
「はい、7時から開けています」
「えっ、そんなに早く。以前から?」
「もう6年になります」

 昨日今日開店時間を早めたのではなく、6年前から朝7時開店を続けていたのだ。早朝に来る客がいるのかと思ったが、私が早朝ウオーキングをしている時間帯に客が入っているのを何度か見かけたことがある。
 10時開店という美容院が多い中、逆に開店時間を早めることで他店と差別化し顧客を掴んでいるわけで「人の行く裏に道あり」を地で行っていると感心した。その代りに閉店時間は午後5時と早い。もしかすると5時以降は別の店か別の職種で働いているのかも分からないが、知恵を絞ればやっていけるという見本だ。

 高齢化社会は今後ますます進んでいくのは間違いない。それは大都市でも地方でも同じだ。そして人口は減少していく。少なくとも頭打ちになる。日本だけではなく韓国でも、中国でさえも急速に少子高齢化に向かっている。危機感を持った中国政府は一人っ子政策を廃止し、子供2人を推奨しているが、国民はそれに応えていない。
 現在人口が増えているインドも、アフリカなどの開発途上国も今後は人口増から横ばい、減少へと推移していくだろう。識字率が上がり、女性が働く比率が上がれば合計特殊出生率は下がっていく。女性は子供を生むために存在しているのではないという自覚が芽生えるからで、女性としてではなく能動的に人として生きていこうとするのは世界共通だ。
 ところが変わらないのは経済。相変わらず拡大経済から脱せられずにいる。人口が減少しているのに経済は拡大させようとしているから過剰生産、過剰商品、過剰店舗になり倒産、閉店が増えることになる。経済も生産も店舗も、そして欲望をコンパクトにすれば地域は生きていける。そう言えばコンパクトシティ化という動きが一時唱えられたが、その後どうなったのだろうか−−。


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