デル株式会社

 


必要なのは技術力での解決ではなく、パラダイムの変換(1)
〜隠すために利用される科学技術


栗野的視点(No.731)                   2021年4月8日
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必要なのは技術力での解決ではなく、パラダイムの変換
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 「科学技術立国」と唱えられてきた−−。この国、日本のことである。たしかに日本の製品が「made in Japan」と持て囃された時期もあった。だが、それは短い期間の幻影だった。

不都合な真実を隠すために
利用される科学技術


 しかし、50年代に「鉄腕アトム」で育った世代や、その時代を担った人々の頭の中には「科学技術信仰」が根付いており、経済発展も環境問題も、果ては貧困問題でさえ科学・技術で解決できる、解決しようとする傾向があるばかりか、日本の科学・技術は韓国や中国の後塵を拝していることさえ認めようとしない。

 日本はとっくの昔に「科学技術立国」ではなくなっているのだから、そんな幻想に頼って「立国」しようとしても土台無理なのだが、経済産業省はいまだにその幻想をバラマキ、中小企業に夢を持たせて働かせようとしている。
 徳川幕府の「百姓は生かさず殺さず」政策と同じようなものだと思うが、当の中小企業の側にも、それが夢と分かりつつも、そこに菅って、いや間違い、縋って生きていかざるを得ない現状もある。

 夢は必要だし、夢を持つことは悪いことではない。しかし、それは時に現実を覆い隠すことに使われたりする。そう、「不都合な真実」を隠し、人々に真実を知らせないために利用されることがある。そのことは10年前の原発事故で明らかになったはずだが、喉元過ぎれば熱さを忘れで、相変わらず科学・技術信仰から抜け出せずにいる。

 その最たるものが環境問題だろう。環境に負荷を与えているのは生産活動であり、それは人間の欲望からきているのはのは明らかだが、それは「不都合な真実」故に真正面から捉えることができない。代わりに迂回せざるを得ず、その時に使われるのが科学技術(の進歩)による解決である。

 地球温暖化に影響を与えている二酸化炭素の排出を減らすために「省エネ」技術で対処しようとし、化石燃料の代わりに太陽熱を利用しようとソーラパネルの設置に動く。
 その結果、地方は今ソーラパネルだらけになっている。それが自然破壊を引き起こしていても、その「不都合な真実」には目を瞑っている。第一、ソーラパネル製造段階での二酸化炭素排出はカウントフリーだから、原子力発電の時とまったく同じ論理、同じ構造だ。
 だが、そのことはほとんど言われない。それを言えば「反原発」運動初期の頃さかんに言われた「電気のない江戸時代の生活に戻るのか」と反発されたように「太陽熱利用は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーだ。それのどこが問題なのか」と反論(反発)されるからだろう。

 人間が生きていくために生産(経済)活動は必要だし、それを止めろと言うつもりはない。問題は過剰な生産活動、欲望に基づく過剰な経済活動を控えようということだ。
 例えば本当に24時間営業は必要なのか、時速400kmで走る列車やプライベートジェット機は本当に必要か。
 幸いなことにというか、24時間営業はCOVID-19も影響し、またプライベートジェット機は富裕層への反発や環境問題から減少傾向にあるのはいいことだ。                             (2)に続く


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