独自路線で行く異色のMVNO、トーンモバイルの子供を守るスマホ(2)
〜かけ放題、使い放題で月1000円


 他社への転出を防ぐためには道路幅と走行車数を適正に保つ以外にない。
 1つは走行車数に合わせて道路幅を広げ、常に高速で走れるようにすることであり、もう1つは走行状態を見ながらインターチェンジで交通整理(侵入規制)をしたり、途中のサービスエリアで車を休ませ、できるだけ混雑していないように見せかけることだ。
 前者の「道路幅を広げる」というのは仕入れ回線数を増やすことであり、仕入れ資金が必要になる。多くのプロバイダー、MVNOは潤沢な資金を持ってスタートしているわけではないから、資金はユーザーから回収して、仕入れ資金に回そうとする。つまり道路幅の拡幅よりユーザー数の増加を先行させる。
 そのためサービス開始当時は速度が速くても、すぐ遅いというマイナス評判になる。マイナス評価が広く知れ渡りだすとユーザーの獲得に支障が出るから慌てて回線を仕入れる。すると速度が速くなったという評価になり新規加入ユーザーが増える。このイタチごっこのようなことを今でも続けている。

 その点、DTIは路線走行車数を常に一定数に決め、それをオーバーすると新規回線を増やすという方法を取っていたため、渋滞で回線速度が遅くなるということが比較的少なかった。もちろん、それができたのは三菱電機グループというバックがあったからだろうが、三菱電機グループが慶應義塾大学の学生たちにDTIの運営を任せていたことと無関係ではないだろう。

 その後、DTIは三菱グループから離れ独立することになるが、創業時から中心的な役割を担いDTIの生みの親と言っていいのが石田宏樹(いしだ あつき)氏で、現在、フリービット(DTIの親会社)の会長、DTI・トーンモバイルの社長だ。因みに同氏は佐賀県伊万里市生まれで福岡県育ちである。

かけ放題、使い放題で月1000円

 さてトーンモバイルである。細かい経緯は省略するが、DTIがスマホと通信サービスをセットにして提供するフリービットモバイルを設立。後にトーンモバイルと改称し現在に至っている。フリービット時代に「PandA」というスマホを開発・販売しているが、以後一貫してハード(スマホ)とソフト(SIM)をセットで販売する垂直統合型経営を行っているのが特徴だ。
 この点、アップルのやり方に似ているが、トーンモバイルはもう1歩ユーザー側に踏み込み、使いやすいスマホ、ユーザーが安心して使えるスマホを提供している。

 同社はスマホ本体とSIMを一体で提供している(一部を除く)が、月額利用料はわずか1,000円。通話料、データ量込み。しかも電話、データ量ともに使い放題で、この料金だから格安。
 ただし通話は「トーン電話」を使った場合。「トーン電話」とは050で始まるIP電話のことで、トーン電話同士、あるいは050で始まる番号にかける電話がすべて無料になる。
 では、固定電話や090等で始まる携帯電話などにかける場合はどうなるのかと言えば、「10分かけ放題」オプションが月500円で用意されている。MVNO各社の「10分かけ放題」850円に比べても安い。
 また回線はNTTドコモの回線を使っているので、電波の受信エリアはドコモと同じだ。

 データ量制限なしの使い放題は通信速度が500-600kbpsと少し落ちるが、写真や画像が多いHPや動画を見ない限りほとんど不自由することはない。例えば私は他社のSIMを使っており、月350円のオプション料を払って500kbpsで使い放題契約をしているが、メールの送受信はもちろん、普通にHPを見たりする分にも不自由を感じていない。
 トーンモバイルはオプション料なしでデータ使い放題なのだから、通話中心のシニア層や、月々のスマホ料金を安く抑えたいユーザーには打ってつけだと思う。
                                            (3)に続く



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