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仏カルフール日本から撤退。

4年数カ月で撤退

 フランスの小売り大手カルフールが日本から撤退する。
日本国内で展開している8店舗はすべてイオンに売却する予定のようだ。
同社が日本に1号店を出したのは2000年12月。わずか4年数カ月での撤退である。
 同社撤退の噂は早くからあった。
すでに開店1年もしない頃から撤退するのではと言われていたから、見方によってはよく持ったというべきかもしれない。

 外資系企業の常で、儲かると思えばそれまでの提携関係を反故にしてでも新しい相手と組み進出してくるが、逆に儲からないと思えばすぐ撤退する。
その間、大体数年である。

外資系が失敗する理由

 それにしてもなぜ外資系小売業は日本で失敗するのだろうか。
1つにはマーケティング不足である。
出店場所の研究を真剣にしたとは思えないことが多い。
 次に、自分たちの基準を押し付けようとすることだ。
郷に入りては郷に従えという諺があるが、日本の習慣を無視して、彼ら流のやり方を押し付けてもうまく行かない。

 ここで言っている「日本の習慣」とは商習慣のことではない。
食習慣のことである。つまり日本の消費者の購買行動のことである。
日米では消費者の購買行動がまるで異なっている。
そのことを無視してアメリカ流のやり方を直輸入しようとするから失敗する。

 例えば米コスコ(日本ではコストコと表記)が1号店を福岡県粕屋郡久山の大型商業施設・トリアス久山内に出店した時もそうだった。
アメリカ流の販売方法をそのまま適用した。
牛乳は1000ml入り紙容器2個を1パックにして売っているし、菓子パンときたら8個〜1ダース入りだ。
これでは子供がいる家庭以外は多すぎて買えない。
 たしかに1個当たりの価格は安いだろうが、余分なものを買わされるため総額は高くなる計算だ。
こうした点が日本の消費者から支持されなかった。

まとめ買いする米国人
食品は毎日買う日本人


 日本人はアメリカ人のように1週間分の食料をまとめ買いしない。
第一、まとめ買いをしたものを入れておけるほど大きな冷蔵庫を持たないし、大きな冷蔵庫にスペースを占拠させておけるほど家も広くない。

 日本人にとってスーパーの食料品は自宅の冷蔵庫代わりである。
だから毎日か、せいぜい2日に1回買い物に行く。
いくら安くてもまとめ買いはしないのだ。

 家庭の冷蔵庫代わりだから毎日新鮮なものを並べて販売しなくてはいけない。
魚もさばいてくれなくてはいけない。
おまけに最近は個食の時代だから、パックはますます小さくなるばかりである。

 ただ、カルフールの場合は米式の失敗例を研究していたし、仏式の市場的な演出を取り入れ、ばら売りをするなど、日本の消費者に受け入れられるように努力をしていた。
 だが、競合が多く、彼らとの競争に破れてしまった。
そういう点では1号店の出店場所にも多少問題があった。
やはり周辺の競合を含めマーケティング不足ではなかったか。

控え目なウォルマート
直営店展開をしない賢さ


 ところで、外資系小売業といえばウォルマートはどうなるのか。
ウォルマートはアメリカ企業とは思えないほど控え目な手を打っている。
他社が皆直接販売に乗り出す中で、日本のパートナーと組むという戦略を採った。
ただ組む相手はダイエーにしたかったようだが、ダイエーがうんと言わなかったので次善の策として西友を選んだ。
そのことが同社を苦しめてはいるが。

 内心忸怩たる思いはあるだろうが、やり方は実に控え目だ。
決して他社のようにドラスチックに変えない。
変えたくても西友側が抵抗しているのかもしれないが。

廃止できない折り込みチラシ

 九州では食品系スーパー・サニーが西友グループ入りしたので、間接的にウォルマートの傘下に入っている。
ウォルマートいえば「エブリデー・ロープライス」を売り物にし、特売日商品を設けないのが特徴であり、売りだが、現実にはその通りにはいってない。

 実はサニーもウォルマートの傘下に入った時、特売日商品は作らない、行く行くはチラシそのものも廃止する、と言っていた。
そして一時期新聞折り込みチラシの頻度を減らしたのは事実である。
 ところが、間もなく音を上げてしまった。
やはり日本の消費者はチラシを見て買い物に行く習慣からまだ抜け出せていないのだ。
最近では他社並みにチラシが入るから、よくいえば郷に入りては郷に従えで、ウォルマート流ではなく日本式を取り入れたということだろう。

 サニーを見る限り、ウォルマート流と日本式がうまくミックスされているように思える。
 ウォルマートにとって唯一の誤算はやはり西友と組んだということだろう。
まるで泥沼に足を突っ込んだように、もがけばもがくほど資金を投入しなければならない。
 恋いこがれたダイエーには肘鉄を食らい続けているが、この先全く可能性がないわけでもない。
途中からでも丸紅と組んでダイエーのスポンサーになる道がまだ残っている。
もし、それにも失敗したら、西友との関係を解消して撤退するだろう。


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