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中国の携帯・インターネット事情


毎年1億件ベースで
拡大する電話市場


 中国に行く度に驚くのが携帯電話の普及である。6、7年前、上海に行った時はノキアの携帯電話の広告を目にして、中国でも携帯があるのかとビックリしたのを覚えている。ただ、その時は実際に使っている人を目にしたことはなかった。
 3年前に行った時は今度は実際に携帯電話を使っている人を目にしたが、まだ一部の人に限られているような印象を受けた。そして今回である。行き先々で目にした光景は日本とまったく変わらなかった。列車の中でも地下鉄の駅構内でも人々は大声で携帯電話を使い、若者は街角でも地下鉄の中でも通話より携帯メールの方を多様していた。ただ日本の若い女性のように片手に携帯電話を握りしめ、もう一方の手にタバコというスタイルはさすがに見かけなかったが。
 面白いのは上海という街は流行もスタイルも香港に酷似しているという点だ。地下鉄車両は香港で走っているのと同じ英国スタイルだし、携帯電話も香港のようにイヤホンを使っている人が増えだしている。
 それにしても中国のデジタル化は急拡大だ。携帯電話とパソコンがその象徴だろう。ハードの普及の次にはコンテンツの充実が待っている。中国の、いや世界の若きベンチャー達にとって中国は今後ますますチャンスを提供していく場となっていくのは間違いない。
 さて、拡大著しい中国の通信環境だが、つい10年前までは通信後進国といってよい状況だった。
 例えば固定電話の加入件数は79年にわずか203万件しかなかった。それが92年に1,000万件を超えると、6年後の98年8月には1億件を超えた。そして2000年9月にはついに2億件を超えたのだ。もちろん13億人の人口に対し2億件の加入はお世辞にも多いとはいえないかもしれない。しかし、以後、毎年1億件ペースで増加を続けているのだから、その普及率は驚異的である。


携帯電話の加入数が
固定電話を上回る


 電話加入件数は今年6月に7億件を超えたが、なかでも携帯電話の伸びが著しい。固定電話が3億3743万8000件なのに対し、携帯電話の加入件数は3億6316万8000件。すでに携帯電話の普及数が固定電話を上回っているのだ。
 中国の携帯電話は小さいのが特徴。ちょうどかつての日本のPHS電話と同じくらいの大きさだ。それを器用に操作し、若者はひたすらメール機能を使っている。
 実は上海滞在中、中国の若者が携帯で通話している姿はほとんど目にしなかった。代わりに目にしたのが街角でも地下鉄の中でもメールをする姿だった。蘇州に行った時など、駅まで迎えに来てくれた若い女性が筆者を送っていくタクシーの中でもメールをチェックしているのには驚いた。もうこうなると日本も中国も若者の光景は同じである。
 それにしてもなぜ彼らはメールばかりをしているのだろうと思っていると、取材先の若い社員が疑問に答えてくれた。
 「中国は通話料が高いから、安いCメールを皆使っているんです」
 なるほど。上海の携帯電話通話料は市内1分9円。日本円で計算すると決して高いとは思わないが、彼らの収入からすればやはり高いことに代わりはない。通話で長時間お喋りするよりはCメールで会話をした方が安上がりということだ。


通信費は値下がり

 因みに携帯電話の普及は98年に100世帯あたり6台だったのが、04年には同160.8台と急伸している。しかも新通信システムの導入で旧通信システムのモデルが値下がりしたり、メーカー間の価格競争で価格が下がったことも携帯電話の普及を急伸させている。さらなる普及に伴い通信費そのものもダウンしていく(04年上海市の消費者物価水準は前年より2.2%上昇しているが、交通・通信は逆に3.5%マイナスになっている)と思われるから、携帯電話市場はまだ今後しばらくは関連産業をも巻き込んで成長を続けるだろう。


普及するネットバー

 では、インターネットの普及はどの程度なのか。
 今春、香港に行った時感心したのは、地下鉄駅構内などに無料のインターネット接続端末があり、誰でも自由に使えたことだ。また市内のカフェには端末を複数台置き、飲み物を注文すれば無料でインターネットを利用できるようにしているところが多く、これは非常に助かった。
 さて、上海はどうか。さすがに香港のように無料のインターネット接続サービスはなかったが、筆者が宿泊したホテルは部屋からインターネットに接続できるようになっていた。
 宿泊ホテルは上海の中心部、南京路近くの揚子飯店という伝統がある格式高きホテル。といえば聞こえがいいが、早い話が古いホテル。最近では20階以上が当たり前の上海のホテルが多い中で8階建てと低層である。それでも数年前に改装した後、館内にLANを引き、インターネット接続環境を整えていたのが気に入り、そこを宿泊先に選んだのだった。
 インターネット接続料金は10分20元。1日80元が上限で、それ以上の課金はなし。このサービスは大いに助かったが、それにしても料金が高い。10日間の滞在中に電話料は別にしてインターネット接続料金だけで530元近くになってしまった。
 そこでインターネットカフェのようなものがないかと色々聞いていると、「ネットバーがあちこちにある」と教えられた。中国ではインターネットカフェのことを「ネットバー」というらしい。バーといっても夜だけ開いているとか、アルコールが出るわけではない。日本でよく見かけるネットカフェと同じで、薄暗い部屋にパソコンがズラリと並べられ、その前に座ってインターネットをするのだ。こちらは1時間3元と安く、利用客も多い。


ブロードバンドは
米に継ぐ普及数

 中国のインターネット人口は毎年対前年20%台の伸びを示しているが、05年6月末段階で1億30万人に達している。しかも、その半数以上の5,300万人がブロードバンド接続ユーザーであり、インターネットユーザー数、ブロードバンド接続ユーザー数ともに米国に次いで世界第2位(中国ネットワークインフォメーションセンター調べ)。驚異的な伸びである。ただ、中国のブロードバンドはADSL中心。それでもストレスなく接続できる。やがては光ファイバーに変わるだろうし、無線LANの普及はもしかすると日本より速いかもしれない。それでもまだインターネットの普及は大都市中心に限られているから、今後さらに増え世界1位になる日もそう遠くないだろう。

データ・マックス刊「I・B」05.8.22掲載


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