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ネーミングで巻き返しに出た「好きメグ」

「牛乳のおいしさ」という中身勝負に変更

 カラー効果に期待しすぎた結果、4工場閉鎖、社長の引責辞任、大リストラと、崖っぷちに立たされた日本ミルクコミュニティ。
本来はカラー戦略そのものを見直すべきだろうが、赤色をシンボルカラーにしてしまったので、もはや全面変更はできなかった。
そこでやむなくカラーに関しては部分修正をした。

 ただ商品コンセプトは全面的に見直して、新商品を市場に投入した。
逆の言い方をすれば、新商品を市場に投入せざるを得ないほど「赤いメグミルク」
の売れ行きが悪かったということだ。
実際、九州では「赤いメグミルク」を店頭で見ることはほとんどなくなった。


 新商品は基本に立ち戻り、「牛乳」そのもので勝負することにした。
パッケージ勝負ではなく、牛乳本来のうまさという中身で勝負することにしたのだ。
ネーミングは「牛乳が好きな人のメグミルク」(好きメグ)とした。

 販売戦略もまず関東、中部、関西で先行販売し、その売れ行きを見てから全国販売に踏み切るという手堅い手法を採用した。
 カラー戦略の基本は変えず、若干の手直しを加えた。

 変更点は以下の通り。
 1.赤色を少し深みのある、ワインレッドに近い色に変えた。
 シャープの調理器「ヘルシオ」の赤色も深みのある赤色を投入しているように、同じ赤でも最近は高級感のある濃い赤色が流行色である。このことは景気回復、高級品の売れ行き好調と無関係ではない。

 2.パッケージの上部にゴールドのリボンをデザインした。
 
 以上1、2はともに高級感を演出するためだ。

 3.ミルククラウンをパッケージ下部にデザインすることで牛乳のイメージを強化した。

 4.顧客ターゲットを牛乳好きに設定するなど、商品コンセプトを明確にした。
 ネーミングに「牛乳が好きな人の」と入れたように、「赤いメグミルク」で薄められていた「牛乳」イメージを、「好きメグ」では逆に随所で打ち出している。

 5.「低温脱気製法特許」を謳い、おいしさを前面に打ち出した。
 「”牛乳が好き”だから、生乳本来のおいしさを楽しみたい。そんなあなたのために
『低温脱気製法』を開発。生乳から低温でやさしく酸素を除去することで、生乳本来の”コク”と”フレッシュ感”を実現しました」と、ここでも「牛乳好き」「おいしさ」を訴えている。

 6.価格もメグミルクより高く設定。
 店頭では「明治のおいしい牛乳」とほぼ同価格で販売されている。
 明らかに価格で買う層ではなく、中身で選ぶ層をターゲットにしている。

プロ故に陥りやすい失敗、他山の石とすべし

 こう見てくると分かるように、カラーを除き「明治のおいしい牛乳」と同じコンセプトで勝負している。
 つまり「メグミルク」のカラー戦略の失敗を自ら認めたわけであり、今回はカラー戦略偏重主義から変えたということである。

 商品カラー戦略は非常に重要だが、そこに頼りすぎると失敗するという好例である。
こうした失敗はプロが陥りやすい失敗でもある。
映画評論家に高く評価された映画が興行的には失敗するのと同じだ。
あまりにも芸術性を高めようとするが故に、本来の目的、ベーシックな部分が忘れ去られるという。

 いまのところ販売は順調なようだ。
特に「好きメグ」の場合は1年前に関東、中部、関西で先行販売し、その売れ行きを見てこの5月9日から九州・北海道でも販売をするなど慎重にマーケットを攻めている。
しかも、同日から100ml入りの小さなパックを全国販売。商品のラインナップも順次行うなど手堅い戦略に転じたのが功を奏しているようだ。
 まさに「前車の覆るを以て後車の戒め」とした同社だが、似たような失敗(マーケティング不在の部分戦略重視)は伸び盛りの企業にはよく起こりうるだけに他山の石とすべきだろう。


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