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地球温暖化防止以上に健康被害がもっと怖い割り箸の使用


 最近テレビ等でも割り箸に関する報道が急増しているが、それらの報道を見て割り箸を使うのが怖くなった人も多いのではないだろうか。
そう、割り箸の問題は地球温暖化だけではなく、健康被害を含め様々な問題を含んでいるのだ。

 一つは森林伐採の問題である。日本人一人が年間使用する割り箸は平均200膳で、日本全体では250億膳の割り箸が使用されており、その90%が現在では中国からの輸入である。
なんと国内で生産されているのはわずか10%に過ぎないのだ。
 割り箸は間伐材を使用しているから環境に優しいと思っている人もいるが、この数字を聞けばそれは誤解だと気付くだろう。
もともと間伐材からのみ割り箸が作られていたわけではなく、間伐材の利用が叫ばれだし、一部で間伐材を利用した割り箸も作られていた(作られ出した)のである。

 ところで、中国からの割り箸輸入が一昨年から危機に直面している。
一つは需要と供給の関係から(中国政府の政策的なものも含めて)、一昨年、中国の輸出価格がアップした。
実際、中国に集中し過ぎたため、中国もロシアから原木を輸入して生産し出した部分もある。そうでもしなければ日本の要求に応えられないということだ。

 もう一つは中国の国内事情の変化である。
経済成長が著しい中国は大都市を中心に建設ブームであり、国内の木材使用量が急増している。その結果、森林伐採が進み、中国政府も環境破壊防止への取り組みを強化せざるを得ないのが現状である。
 そこで木材の伐採を規制し始めたが、格好の対象になったのが日本向けの輸出割り箸で、06年3月、中国政府は割り箸の生産を制限する措置に出た。さらに第2弾として早ければ今年中にも割り箸の輸出を禁止する意向を示している。

 では今後、国産割り箸が増えるのかといえば、その可能性は非常に薄い。
中国産割り箸価格が値上がりしているとはいえ、依然国産割り箸との間には価格差がありすぎる。それ以上に国内産地が壊滅的な打撃を被っている上に、林業従事者は激減しているし、残っている従事者も高齢化している。
 間伐材の利用どころか間伐そのものができずに国内の林は荒れ放題になっているというのが現状だ。

 結局、割り箸は輸入に頼るしかなく、仮に中国以外の国に替えるとしてもいまよりは輸入価格がアップするのは避けられそうにない。実際、昨年より割り箸価格はすでに値上がりしており、このままいけば割り箸の有料化も避けられないという声さえ一部で囁かれている。
 では、木製ではなく竹製割り箸にすればいいのではないか。
そう考える向きもあるかもしれない。
たしかに竹は成長が早いし、森林伐採を防ぎ、環境にもやさしい。
だが、この場合でも輸入に頼るしかないのが現状である。

 そしてなによりも問題なのは、TV番組でも現地業者が証言していたように「日本人が白い割り箸を好む」ことである。
「日本人が白い割り箸を好む」から漂白剤が使われているのだし、竹の場合は防カビ剤を、畳表にはイ草の青を強調する化学薬品が使われている。
 しかも、これらの中には我々の健康を蝕むものが多くあり、基準値を超えて使用されていることが問題なのだが、そのことに注意を払わない消費者が意外に多い。
 割り箸の問題は地球温暖化防止のためという以上に、自らの健康を守るために使用を控える必要があるのだ。

 では、割り箸をマイ箸に替えれば健康が守られるのかという点である。
答えはノーだろう。
いまやマイ箸は100円ショップ(100均)でも売られている時代である。携帯用のプラスチック箸が100円で売られているとなれば、そちらを利用しようと考える消費者もいるだろう。
ただ、これは木製をプラスチック製に替えただけで、健康被害の問題は解消されていない。
 そう、塗りが問題なのである。
塗料に何が使われているのか。食器類に昔から使われている漆なのか、それとも化学塗料なのか。その化学塗料は安全性が確認されているものなのか。
こういうことを考えれば、安いというだけで飛び付くのは危険かもしれない。
 最近、アトピー性皮膚炎を患う人や、化学薬品過敏症の子供達も増えている。毎日口に入れる箸だけに、安全安心なものを使いたいものだ。

 かつて森林破壊の問題から割り箸が木製から竹製に替えられた時期があった。
飲食関係も割り箸を木製から竹製にこぞって替えたが、ある時期を境に再び木製に戻された。
 金魚鉢に竹製輸入割り箸を入れると3日で金魚が死んだという週刊誌の報道で、人体に有害な防カビ剤、漂白剤が使用されていることが明らかになり、木製から竹製に替えた各社が再び木製に戻したのだった。
 いま飲食業界には割り箸を廃止し置き箸に替えようという動きがある。しかし、その場合でも問題になるのはやはり塗りだろう。
つまるところ自らの健康を自衛するためには安全なマイ箸を持ち歩くのが一番ということになりそうだ。

 さて、最近は中国製のみが問題視される傾向があるが、こうしたことはなにも中国製に限ることではないだろう。
 ところで中国製割り箸でも安全安心なものもあるし、地球温暖化防止に貢献しながら、安全性の問題にもきちんと取り組んでいる企業もある。
北九州のベンチャー企業、楽しい株式会社である。
同社の内容と取り組みについては私の取材記事「竹製割り箸、リサイクル竹炭の販売を通し、中国での植林活動に取り組む北九州のベンチャー企業」に詳述(HP「九州の頑張る企業」に収録)しているので、そちらを一読して欲しい。


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