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宮崎県知事選に見る、東国原(そのまんま東)氏の勝因分析


 東国原英夫(そのまんま東)氏が宮崎県知事選に立候補する前後からマスコミはいろいろな論調で取り上げていたが、真面目な形で取り上げたところは恐らくなかった。
半ばバカにした取り上げ方か、ほとんど無視で、泡沫候補の1人というのが大方の味方だった。
 当選後は「しがらみのなさ」で選ばれたとする論調が目に付くが、果たしてそれだけだろうか。
ほかに選ぶ人がいないからという消去法で選ばれたわけでも、しがらみのなさで選ばれたわけでもない。

 宮崎県は長年、保守系候補が強い自民党の地盤である。
自民党候補が崩れたことはない。
それが今回、自民党推薦候補は2位どころか3位に甘んじるほどの凋落だった。
それには自民党支持者の分裂という側面があり、票が割れ、「漁夫の利」的な要素が東国原候補に働いたのは事実である。
 しかし、自民党支持者の分裂が主要因なら、その票はもう一方の自民党支持者が推す川村秀三郎氏に流れたはずである。
ところがそうはならず、自民党支持者の多くの票が東国原氏に流れたのである。
そうさせたのは過去の選挙で何度も目にしたしがらみからの脱却を県民が選択したという側面はあるだろうが、それ以上に県民を動かした動機があった。
それは東国原氏へのサプライズと氏の真面目さである。

 例えば私が最初におやっと感じたのは、東国原氏が脱タレント宣言をした時だった。
当時彼が所属していたたけし軍団の応援はおろか、タレントの応援を一切頼まない、選挙結果のいかんに関わらずタレントには戻らない、所属事務所との契約も解除したという事実である。
自らの退路を断ったわけだ。
 心構えとして言う人はいるが、実際に退路を断つのはなかなかできない。
極端なことを言えば、落選した場合、明日から飯が食えなくなるわけだから、誰しもなんらかの糸は残しておきたいと思うものだ。
 大臣になった竹中氏でも実際に帰る帰らないは抜きにして、出身母体の大学に帰れる道は契約上残っていたのだから。
それを一介のタレントであるそのまんま東(東国原英夫)氏が退路を断ったわけで、それほど真剣であり、真面目だったということである。
この姿勢が有権者に通じたと思う。

 次に政策論議をきちんとしているということである。
マニフェストを作り、宮崎県のことを勉強もし、人気戦術ではなく、政策論議を展開するというオーソドックスな方法をとったことが有権者を掴んだに違いない。
実際、当初タレント候補に何ができるかという目で見ていた人達が、「他候補よりよほど勉強しているし、マニフェストをきちんと作ったのはそのまんま東だけだ」と言い始めたのだから、この時点で流れが向いたと思われる。

 3つめは、都城地方の方言で呼びかけ、演説するなど、県民に親しみを感じさせたこと。
 他候補も宮崎県出身を謳っていたが、実際住んだのは3歳までとか、「お偉い」官僚出身では親しみを持たれない。
 それと同時に、東国原氏に対する見方が変わってきた、刮目して見だしたことが大きいと思われる。つまり、そのまんま東というタレントではなく、候補者、東国原英夫として見はじめたのだ。

 そうなると彼の経歴、早稲田大文学部に再入学し卒業、その後政経学部に再々入学し、地方自治を勉強という経歴もきちんと見ようというプラスの連鎖が働き出す。
そういう目で見ると、顔自体がそれまでのタレントの顔とは一変していることに気付いていく。
 街頭演説で訴えていることもくそ真面目な内容であり、選挙運動の仕方にもお笑いタレントを想像させるものはまったくなかった。
これで最初はバカにしていた県民も、「おやっ」と思ったに違いない。

 最後に私が感心したのは当選直後の万歳三唱の時である。
いままでTVに映し出される光景はほぼ例外なく候補者が支持者達と一緒になって万歳をしている姿である。
 ところが東国原氏は支持者達が万歳を叫ぶ中、一人頭を下げていた。
これが本当である。
皆さんのお陰で当選することができました。ありがとうございます、と当の本人は頭を下げるのが普通である。
それを最近の候補者は一緒になって万歳をして喜んでいるのだから、こういう人達が当選後国民や県民のために何かをしてくれるはずがない。
我がことしか頭にないはずだ。
 しかし、東国原氏は真面目だった。
宮崎県民の選択は正しかったと思う。
あとは県民が新知事を支え、助けていけるかどうかだ。

 それにひきかえ福岡市長に就任した吉田氏は顔が見えない。
聞こえてくるのは選挙期間中の不透明な経費処理などマイナス面ばかりだ。
もっと市民に対して情報を発信し、市民の力を利用することが必要だと思うが。
議会対策にばかり目が向いているようでは本末転倒だろう。
開かれた市政を心がけて欲しいものだ。
吉田氏こそ反山崎の受け皿で当選したということを自覚すべきだと思うが・・・。


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