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補助金の上手なもらい方


 今回、経済産業省の中小企業・ベンチャー挑戦支援事業制度の評価委員になって気付いたことがある。
それは国の補助金制度が実に多いということだ。
しかし、それらの大半を私は知らなかったが、知らないのは私だけでもなさそうで、他の委員やアンケート調査でも「国はこれらの制度をもっとPRすべきだ」という意見が出ていたから、やはり制度だけ作って自己満足しているとの誹(そし)りは免れないだろう。

 補助金制度が多いということは、裏を返せばそれだけ過保護政策を多くとっているということである。
過保護な子供はどうしても虚弱体質になりがちである。
温室でもやしのように促成栽培されるから早く伸びるかもしれないが、その分、根も幹も細く、少し風が吹くだけで倒れてしまう。
こんな促成栽培のひ弱な企業ばかり育てても仕方ないようなものだが、そうともいえない一面もたしかにある。
金はあっても困るが、なくても困る、といわれるように、本当に資金不足で研究開発や商品開発がストップしそうな企業や、ここでもう少し資金があれば飛躍できそうという企業にとっては国の補助金は大いに助かるだろう。
なんといっても銀行融資と違い無利子、無担保で、おまけに返済の義務もないのだから願ってもないことだ。

 といっても、手放しで喜べるわけではない。
本当に金がない企業は、この補助金すらもらえないからだ。
補助金を利用するにも資金がいるのである。
別に補助金をもらうのに賄賂がいるという話しではない。
そうではなく、補助金というのは全額補助ではなく、半分とか3分の2とかの補助率だから、自己資金を半分とか3分の1持っていないと補助金すらもらえないことになる。
さらに補助金が支給されるのは年度末だから、それまでは立て替え払いをしなければならない。
となると、ある程度の自己資金が最初からある企業が対象にならざるをえず、ベンチャー支援とはいっても創業時の資金がないベンチャーを対象にしたものでないのは分かるだろう。

 そうはいっても補助金を欲しいと思っている企業はたくさんいるに違いない。
自己資金の問題はなんとか解決するしかなさそうだが、そのほかにも補助金をもらうためにはある種のコツがいる。
 まず、公募を見てから(公募になってから)応募したのではすでに遅いのだ。
国が公募するのは4月以降で、それから応募内容を審査して決定通知が来るのが9月頃になる。
しかも国の制度は単年度事業だから、残り半年ということになる。
だから審査通知を受けてから動いていたのでは間に合わないのだ。

 では、どうすればいいのか。
見切り発車である。
補助金を前提に事業をすでに進めており、その過程の中で補助金が入ってくるようにしなければならないだろう。
さらにいえば公募を受けて応募するのではなく、公募前に応募の準備をするのだ。

 そんなことができるのかと思われるだろうが、実際に補助金を受けている企業の多くはそのようにしてきている
 公募前に応募するといっても不正な裏取引をするわけではない、正々堂々と表から進むのである。
 ここまでいえば頭のいい読者は情報が命と気付くに違いない。
そうなのだ。情報の先取り、というか、情報により公募の先取りをするのだ。

 どのような方法でそんなことが可能になるのかといえば、
1.官公庁の情報を常に得る努力を怠らないこと。
2.役所の関係部署に事前に相談に行くことである。
 事前に相談に行くといっても「今度の補助金制度を教えて下さい」と真っ正面からいえば、「公募前に特定の人に教えるわけにはいかない」という答が返ってくるのは明らかだろう。
 そうではなく事業内容を説明し、アドバイスを求めれば(この研究を進めたいのだが、そのための資金が不足して困っている、といったような)、彼らは必ず助けてくれるはずである。情報のみならず、申請書類の書き方まで丁寧に教えてくれるものだ。
 逆にいえば、情報にも疎く、人脈もなく、ただ金がない、人がいない、モノが売れないと嘆いているだけの経営者は補助金さえもらえないということだ。


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