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中小企業活性化のために必要なものは(後)
苦しい時ほど率先垂範、トップセールスに力を入れよ


技術を市場性の中で
評価する技術評価機能

 産業の活性化のためには中小企業を活性化する以外になく、そのために必要なものは技術力のアップとマーケティングである。そして、肝心なのがやはり資金である。
 最近、やっと金融機関の無担保融資も増えてきたが、それも都市銀行が中心で貸出先も地場の優良企業に限定されている。そのため相変わらず圧倒的多数の中小企業は資金不足に泣いているのが現状だ。
 なぜ、そうなるのか。それは金融機関が昔ながらの担保主義、それも不動産中心の担保主義や業績主義から脱却できないからである。ところが、現在のように不動産価値が下落する時代に不動産担保一本槍の方法は時代に合わないことは分かっている。にもかかわらず不動産担保主義から脱却できないのは、それに代わる有効な手段を見つけられないからに他ならない。いや、正確に言えば今回のベンチャーブームの当初から他の方法が提唱されてはいる。だが、導入されないのだ。
 他の方法とはなにか。それは技術担保、特許担保方法である。もし、技術や特許を担保に融資を受けられるなら、さしたる業績もなく、不動産担保も持たないベンチャー企業や中小企業は大いに助かるはずだし、そうしなければベンチャー企業・中小企業の活性化は望めない。
 では、金融機関に技術評価ができるのかといえば、答えはノーである。それでは、どこが評価するのか。外部の第3者機関がする以外にない。また、そうであるからこそ客観的な評価ができるわけだ。
 ところが、技術評価といえば、すぐ大学や各種研究機関のお偉いさんを集め委員会を作って、そこで評価してもらう、ということを行政は考えるが、これではダメだ。学者が評価する技術は技術力の高さであり、技術の革新性や技術の市場性ではないからだ。
 筆者が提唱している技術評価とは、技術力の高さより技術の革新性・市場性を評価することである。それに事業化性を加えて、つまり技術を市場性の中で評価すれば、技術や特許が十分担保になるはずである。そして大事なのは評価理由を明らかにすることである。このような機能をリエゾン九州の中に持たせたいと筆者は考えている。

暖かい資金を集める
小口ファンドづくり

 次に、非技術系企業の資金不足対策である。
 まず、利用したいのは国や地方自治体の資金だ。様々な資金が用意されているから上手に使えば大いに助かる。ただ、窓口が一本化されてないため、どこに行けばどういう資金が用意されているのかを調べる面倒がある。
 その次に、提出する書類づくりが煩雑なため、常日頃から貸借対照表などをきちん作成しているところはいいが、そうでなければ提出書類づくりの煩わしさの前に挫折することになる。また、仮にそうした時間と労力を惜しまず申請しても、今度は決定までに数カ月待たされることになる。これでは余裕がある企業しか実際には利用できないのと同じだ。中小企業が必要としているのは急な資金で、数カ月先の資金ではない。
 融資までの期限は1両日〜1週間以内。必要額は数百万円〜せいぜい数千万円以内だろう。いわゆる繋ぎ資金だ。無担保、無保証で、即融資。おまけに低金利。こんな資金を中小企業に提供する小口ファンドを作る必要がある。
 それはキャピタルゲインが目的ではなく、身内のように応援する、暖かい資金である。かつてはこのような資金が存在していた。頼母子講がそれだ。頼母子講が引っかかりがないのは、講仲間が同じ地域の人で構成されていることが多く、顔見知りだからだ。金額が比較的小口という要素も大きいと思われる。つまり、このような要素を持った小口ファンドを作り運用すればいいということである。

苦しい時ほど
トップセールスが必要

 中小企業の経営者の中にまだまだ多いのは「いいモノをつくれば売れる」という考え方である。「いい加減なモノをつくれば売れない」というのは真理だが、いいモノをつくっても売れるとは限らない。それは本シリーズ1回目でも書いたが、販路がなければどんなにいいモノでも売れない。第一、「いいモノ」とは何を指すのかが問題だ。ユーザーにとっていいモノなのか、開発者側・販売者側から見ていいモノなのかが問題である。
 「うちのソフトは素晴らしいですよ」。こう力説するソフト開発会社の社長がいた。あまりにも素晴らしいという言葉を連発するので、一度、私が主宰しているリエゾン九州の例会の場でプレゼンをしてもらった。
 その結果分かったことは、映像を扱う放送関連施設には便利な商品だが、そのほかの用途が不明ということだった。そこにもってきてプレゼンが下手だったので、参加者を納得させることができなかったし、販売は代理店に任せ、自社は代理店のサポートという営業スタイルを取っていた。そこに一抹の不安を筆者は感じていた。
 いかなるものにも段階に応じたやり方がある。広告や販売スタイルも同じで、商品の初期段階(認知段階)、市場成長段階、成熟段階によって、それぞれ取りうる方法が異なる。最もエネルギーがいるのは新商品を市場に投入する時で、この段階は商品のことを熟知し、最も愛情を持っている人間が当たるべきである。それを他人任せにして売れるかといえば、答えはノーだろう。
 しばらくして前出の社長に会うと、やはり販売に苦労しているようで、営業所も縮小していた。ただ、縮小ばかりではなく、「これからはトップセールスで頑張ります」と言っていたので、その意気で頑張るようにと励ましておいた。
 苦しい時を乗り切れるかどうかは、苦しい時に率先垂範でトップ自らが先頭に立って切り拓いていけるかどうかにかかっているが、2代目経営者や最近の若いベンチャー企業経営者には、その気概に欠ける点が見受けられるのが残念だ。
 最後に、いままで述べたことをまとめてみよう。
1.ユーザーニーズに応えよ。ただ、それは多機能ということではない。
2.技術力を高めよ。ただし、商品化する時は逆に考えよ。
3.技術力を高めるために大学を上手に使え。
4.大手企業のシステムに学び、ムダ、ムリ、ムラをなくせ。
5.現場の改善は継続的に行え。
6.ファンづくりに務め、暖かい資金を集めよ。
7.営業に力を入れ、トップセールスに徹せよ。

                           


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