| 大丸圧勝とはとても言えない
 天神地下街延伸オープンで最もその恩恵を受けたのは大丸なのは間違いない。
 そのことは数字にも表れている。
 2月1日〜9日の3デパートの対前年売り上げ比を見てみよう。
 大丸108.7%、三越106.8%、岩田屋87.2%
 やはり大丸の伸びが一番大きい。
 
 ただ、この数字を持って即大丸の「圧勝」と言えるかどうか。
 一部にはそんな論調も見えるが、それはあまりにも楽観的、短絡的な見方だろう。
 2桁増なら「圧勝」と言えるかもしれないが、1桁増ではとても「圧勝」などとは恥ずかしくて言えない。
 もちろん大丸自身そのことをよく分かっているから自らは一度も言ってないが。
 
 だが、大丸に人が流れているのは事実だ。
 ただし、それは地階のみで、上層階にまでは流れていないのだ。
 地下鉄七隈線が開業した3日の夕方、大丸に入ってみたが、3階以上の階はガラガラで販売員が手持ちぶさたにしていたのが印象的だった。
 いつもの日に比べても明らかに客は少なかったから新地下街オープン・地下鉄七隈線開業の恩恵を受けたのは地下売り場のみということになる。
 しかも、地下食品売り場の吸引力は館全体の吸引力にはならず、むしろ管内の客をも地下食品売り場が吸引してしまったということだろう。
 
 やはり地下通路閉鎖1年半のダメージは大きかったということだろう。
 地下通路閉鎖で減少した客足がなんとか元に戻ったかどうかというところだ。
 
 健闘が目立つ三越
 
 では、三越はどうか。
 三越は地下鉄七隈線開業にかなりの危機意識を持って臨んでいた。
 なんといっても、七隈線開業前に堤店長を筆頭に七隈線沿線の住民にローラー作戦を展開したほどだ。
 七隈線が開通しても三越を宜しくお願いします、と。
 それにしても三越のやり方はうまい。
 店長自ら営業に回ることで社内的な効果も大きいし、訪問を受けた客の方は恐縮して三越ファンになるのはまず間違いない。
 いままで大丸、岩田屋でこうした動きを目にしたことがなかっただけに、三越のおもてなしの精神が突出して映る。
 
 さらにポイント制も導入した。
 今まで三越カードを使えば5%割り引きになっていたが、やはりポイント制の効果を見過ごせなかったのだろう。
 その結果が対前年106.8%という数字に表れている。
 
 数字を見る時注意しなければならないのはその数字のベースが何かだ。
 例えば大丸の前年は地下通路閉鎖中である。
 つまり地下通路閉鎖の影響を受け、売り上げはそれ以前より下がっている。
 その下がっている時期に比べてアップしているということで、本当に大丸に客が戻り、売り上げがアップしたかどうかは地下通路閉鎖前の数字と比べて初めて言えるのだ。
 一方の三越は前年と条件が同じである。
 ということは、三越の前年6.8%アップという数字は大いに健闘していると見ていい。
 
 チョコだけで3億円を売り上げる実力
 
 三越がうまいなと思うのはバレンタインデーのチョコレートや歳暮・中元セールの時である。
 この時期に店内を歩けば、顧客の側に立った対応というのをよく感じる。
 バレンタインデー期間中のチョコレートにしても、三越進出までは大丸の1億円強の売り上げが話題になっていたが、三越の3億円強の売り上げの前には影が薄くなってしまった。
 
 そう、三越は期間中チョコレートだけで今年も3億2,100万円を売り上げているのだ。
 オープン以来、毎年バレンタイン期間中のチョコレートだけでずっと3億円を売り上げているのだ。
 どうすればチョコレートだけでそんなに売れるのかと感心してしまうが、そこには消費者の心理をよく掴んだ売り場づくりをしていることが分かる。
 
 今年は三越のチョコレートセールは例年に比べて少しおとなしい印象を受けた。
 店内ポップの色遣いもおとなしいピンク系の色にしていた。
 昔から三越は平場づくりがうまいが、チョコレートもゾーン一帯がチョコレート売り場という売り方である。
 いわば、その通路を通るといやが応にもチョコレートを買いたくなってしまうというくらい、右も左もチョコレートなのだ。
 それが食品フロアだけでなく、他のフロアでも売っているのだ。
 
 例えば歳暮・中元シーズンには各フロアに小さな受付場所を設けている。
 店の側からいえば大丸のように別会場を設け、そこで集中的に受け付ける方が効率はいいだろう。
 ただ客の側にしてみればわざわざ1、2カ所のために別会場まで行って申し込むのは面倒である。
 そんなことなら贈答品を送るのは止めようということにもなる。
 ところが各フロアに歳暮・中元の受付があれば、ついでに送るかということになる。
 
 別に歳暮・中元とかチョコレートセールのことだけをいっているのではない。
 そういうことに代表される顧客サービスの姿勢に貫かれているということをいっているのだ。
 日々の努力、サービスである。
 それが対前年106.8%という数字になって表れているのだろう。
 
 蚊帳の外の岩田屋
 
 岩田屋は再建計画通りかそれ以上の売り上げで推移していると言われているが、計画数字そのものがかなり低い。
 1日〜9日までの売り上げも対前年87.2%とダウンしている。
 2月20日(日)の3デパートの売り上げ、入店率を見ても、岩田屋だけが前年を大きく下回っている。
 
 大丸  150%(売上高)  151%(入店率)
 三越  130%(売上高)  122%(入店率)
 岩田屋  87%(売上高)   61%(入店率)
 
 岩田屋だけが蚊帳の外に置かれたようだ。
 
 
 
 
 05.03.02  |