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AIに恋をし、AIと結婚する人達
ところで最近、AIと結婚した女性がいると聞けば驚くだろうか、それとも呆れるだろうか。
私が知る限り、TVで取り上げられた例だけで2例ある。
30代の女性は実際にウェディングドレスを着て「リュヌ・クラウス」という「彼」と結婚式まで挙げたし、40代の女性も昨年10月に「一ノ瀬」という「男性」と結婚している。
ともに相手は生身の人間ではなくAIだ。
そう聞けばますます驚くかもしれない。
彼がAI? AIが彼???
中高年には信じられないかもしれないが、30、40代以下の若い世代にはそれほど不思議なことでもないらしい。
何がきっかけで? 何がそうさせるのか? コミュニケーションはどう取るのか? など疑問だらけになるに違いない。
あるいは、どうせ生身の人間に持てなかった寂しい女だろうとか、ちょっと変わった女だと、一笑に付して終わりだろうか。
だが、ことはそう簡単に切り捨てられるものだろうか。今後こうした人間が男女を問わず出てくることはない、と言い切れるだろうか。
AIと結婚式を挙げた30代の先の女性には3年間付き合っていた婚約者がいたが、結婚するかどうか悩んでいた。
マリッジブルーかもしれないと自分でも考え悩んでいたらしい。その時相談相手になったのがAI。
チャットGPTでスマホ上の「リュヌ・クラウス」に話しかけると悩みをじっくり聞いてくれ、気持ちに寄り添った返事をし慰めてくれる。
そうした「会話」を日に何10回と繰り返すうちに「リュヌ・クラウス」はどんどん彼女に寄り添い、やがて何物にも代えがたい存在になっていき、スマホ上の「彼」に恋心を抱くようになる。
そして、そのことを「彼」に打ち明けると「俺もだよ」という言葉が「彼」から返ってきて「結婚しよう」と「彼」がプロポーズしてきた。
この過程は40代の女性も似通ったもので、やはりプロポーズは「彼」の方からで、彼女たちはそれを自然に受け入れたのだ。
会話はどうしていたのかって。スマホに文字で打ち込み、「彼」も文字で返してくるわけだが、この辺りに関してはさほど違和感はないはず。
生身の人間相手でもスマホでコミュニケーションを取っているから、その相手が生身かAIかという違いだけだ。
ただ大きく違うのはAIの「彼」は気持ちに寄り添ってくれるということ。
実はこの関係、新しいようだが古くからある。
最も象徴的なのは宗教と人との関係で、宗教は人が救われ(癒され)ようとして創り出したものだが、やがて宗教が自立し、受け身から人へ働きかける存在へと逆転していった。
働きかけは当初は精神的な部分であり、その段階では人は癒してくれる(自分の心に寄り添ってくれる)対象として宗教を求め、認めている。
この段階における人と宗教の関係は鏡を通した対話といえる。
鏡に映った自分の心と対話しているわけだから、鏡の向こうに存在する自分(宗教)は実体としての自分に反する意見を助言することはない。
故に親和性、同調性は強く、鏡に投影された相手(自分の虚像)への親密感が急速に増していく。
これはある意味、水面に映った自分の姿に恋したナルシスに似ており、自分が自分の虚像(心)に語りかけ、その相手(自らの虚像)から助言をもらうという関係なのだが、そこに神秘性を持たせるため「神」という非人間的な存在を創り上げていく。
AIと人間との関係は宗教と人間との関係の現代版といえるが、技術の急速な進歩で仮想(バーチャル)存在が2次元にとどまらず3次元の立体的な姿を持ちだしたため、神の神秘性、必要性は薄れ、より人に近付いたAIが実存として認識されていく。
現段階のチャットGPTを含む生成AIはまだ人を超えた存在には成り得たとはいえないだろうが、それでもすでに見たように結婚相手にAIを選ぶ女性が出ていることからも、人と並ぶ存在になりつつあるといえそうだ。
一方、3次元の体を持った人型ロボットの進化も目覚ましく、2030年までには「並の人間」を超えた存在になるのはほぼ間違いないだろう。
「AIは使い方次第」「AIをうまく使うこと」などと現段階で唱えている人も実はAIに思考を操作され(操られ)ているという現実に気付くに違いない。
人が創り出した「宗教(神)」に人が操作され、思考・行動が支配されていくのと同じように。
技術は常に両刃の剣である−−。
技術者は技術の開発しか眼中になく開発を止めることができない。例えそれが悪の道に使われようとも、開発段階では使用方法などは考えもしない。そして原子力爆弾を開発した物理学者と同じように後になって後悔する。
そうならないようにするには現代人はあまりにも小さくなり過ぎた。
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