「ブレーキとアクセルの踏み間違い」について考える(1)
〜踏み間違いは高齢者に特有のミスなのか


 このところ、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故が数多く報道されている。そうしたメディア報道に接して感じるのは、ブレーキとアクセルの踏み間違い=高齢ドライバー=認知症=危険運転=運転免許証の返納、という図式である。
 こうした報道に日々接していれば、ブレーキとアクセルの踏み間違い事故は高齢者に特有か、高齢者に多い人為的ミスで、認知症との関連も疑われる。こうした事故を未然に防ぐために高齢者は運転免許証の返納を、という図式が視聴者の中に自然に刷り込まれていく。

メディアも煽る高齢者の踏み間違えミス

 例えば5月27日付けの毎日新聞は「高齢ドライバー 死亡事故、年400件超 踏み間違いなど」という見出しの下、次のような記事を掲載している。

「警察庁によると、75歳以上の運転免許保有者数は2016年末で513万人となり、10年前から倍増した。これに伴い、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題化している。
 全国の死亡事故件数は減少傾向にあるが、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は最近10年以上、400件超の高水準を維持。16年は459件で、全体の13.5%を占めた。06年の7.4%から大幅に上昇している。不適切なハンドル操作や、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどが原因のケースが多い」

 この記事を読めば誰もが高齢ドライバーは危険運転をしていると思い込むに違いない。コンビニの店舗に突っ込んだ事故現場を目撃したり、そういう報道を見聞きすればなおのことだ。
 たしかに毎日新聞が報じているように75歳以上の高齢ドライバーによる交通事故は10年前に比較して増えている。そのことは1月に配信した「栗野的視点(No.570):高齢者の運転事故は本当に激増しているのか」でも書いた。
 だが、そこでも書いたが交通事故発生件数が最多なのは高齢ドライバーではない。最も多いのは未成年者によるもので、その次に多いのが20代運転者による交通事故である。
 若者の交通事故がトップという構図は現在も10年前も、それ以前も変わらない。にもかかわらず、警察発表も、それを受けてそのまま書く新聞報道にもなにか別の意図があるように感じてしまう。

 では、ブレーキとアクセルの踏み間違い事故は警察やメディアが報道するように高齢者に特有(というのが言い過ぎなら、高齢者に多い)なのだろうか。
 実はそうではない。そのことは以前から指摘されてきたにもかかわらず、そのことを知ってか知らずか警察もメディアも、さも高齢者に多い事故のように報道しているのは問題だろう。ミス誘導は真の解決策から目をそらせることになる。

 踏み間違いは年齢に関係なく、以前から起きているが、若い世代は踏み間違いに気付くととっさに修正し事故にまで至らないケースが多い。ところが、反射神経が衰えてくる年齢になると踏み間違いの修正動作ができない上に慌ててブレーキと勘違いしてアクセルをさらに踏み込み事故に至るケースが多い。つまるところ反射神経の差が事故に至るかどうかの差になっているわけだ。
 実は昨日、私の目の前で踏み間違い事故が起こった。夕刻、家の前に立っているとすぐ前の信号のない交差点を4WDの車が何を思ったか急にエンジンを吹かして左折した。そしてさらにアクセルを踏み込んだものだから斜め前の民家に突っ込みそうになり慌てて急ブレーキをかけて止まり、一応事なきを得た。
 すぐ横が中学校だし、本来スピードを出すような道でもない。一体何を思ったか、狂ったか。夕刻のため運転者の顔は見られなかったが、中高年でないのはほぼ間違いないだろう。この事故未遂は私が立っている場所から3m以内だったから、立ち位置が悪ければ巻き添えになっていたに違いない。
                                            (2)に続く

デル株式会社  


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