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ディーラーに対するBMWジャパンの見せしめ?
  〜読者の投稿から〜


 自動車業界の事情に詳しい、ほり編集事務所の堀 達哉氏から投稿があったので以下に紹介します。

 こんにちは栗野さん、ほり編集事務所の堀です。「視点」で取り上げておられた、広島のバルコムVSヤナセBMW福岡との“仁義なき闘い”。福岡県内の輸入車業界内でも色々な情報が錯綜しており、私も取材で輸入車ディーラを訪れるたび、『どうなると思う、バルコム?』『裏でBMWジャパンが煽ったんだろ?』等々、何とも返答しようが無いような質問を喰らいっぱなしです。

 (株)バルコムモータースの福岡県進出は、表向きには『BMW北九州(ウイルプラスモトーレン)とヤナセBMW福岡にとっての拠点空白地域を補完するため、BMWジャパンがバルコムに対して出店を要請した』というふうに、業界内ではアナウンスされています。
そのため、バルコムBMWに与えられた福岡県でのテリトリー(これまた表向き)は、現時点で拠点空白地帯である、中間市〜遠賀郡、宗像〜古賀市、飯塚市及び田川市・郡、福岡市の城南区〜西区の西端、ヤナセBMWが拠点を引っ込めた大宰府〜筑紫野、そして久留米市以南の筑後地区などということで、丸く収まった…ことになっています。
 しかし実際のところ、今回の“テリトリー侵害”に近いBMWジャパンの采配は、BMWジャパンに対して従順ではないヤナセと、BMW販売に対してそこまで積極的では無いウイルプラスモトーレンに対する、ある意味で『見せしめ』に近いものだと思われます。
 BMWに限らず、日本国内にメーカー直資のインポーターを置いている輸入車チャンネルは、インポーター側がディーラーに対して要請した(テリトリー人口あたりの)販売目標台数に何年間も達しない場合、正規販売店契約を一方的に解除できる旨の権限を持っています。
 それで、これは私個人のうがった見方ですが、BMWジャパンは今後、バルコムの福岡県内における販売を積極的に支援し、その結果、販売目標が達成しにくくなったヤナセBMW福岡の代理店権を一方的に解除。その事実を、ウイルプラスモトーレンやヤナセ本体に対して、『ほら見ろ、うち(ジャパン)の言うことを聞いてないとBMWという人気商品を扱えなくなるんだぞ!』とばかりに見せしめる考えなのではないか…と思います。それほど、今回のバルコム福岡進出は、業界では掟破りの事件としてとらえられています。

 今や、収まりがつかないところまで発展しているBMWジャパンとヤナセの不仲は、もともとはBMWとヤナセの双方が持っていた、大げさ過ぎるほどのアフターサービス体制に主な原因があります。
 栗野さんもご存知の通り、正規ディーラーで購入したBMW車には、一定期間内走行距離無制限で保証が受けられる「サービス・フリーウェイ」とか、電話でオペレーターが対応してくれる「24時間エマージェンシー・サービス」、「消耗品20品目メインテナンス保証」などなど、他銘柄の輸入車では到底真似のできないようなアフターサービスが付いていて、そのサービスを全国各地のBMW正規店で受けられることになっています。
 ヤナセも、BMWほど手厚くは無いものの、「ヤナセのお店なら全国どこででも」といった、似たようなアフターサービスを実施しています。ただ、ヤナセの場合は、全国どこのヤナセディーラーも「(株)ヤナセ」の支社なり支店であるのに対し、BMW正規店は、県が違えば全く資本関係の無い別会社である場合がほとんどです。
 そのため、例えば北九州BMWで車を購入したユーザーが、保証期間内に鹿児島までドライブに行き、現地でメカトラブルに見舞われたため、鹿児島BMW(ハニ・バイエルン)のサービス工場で大がかりな整備作業を受けた…という場合、ハニ・バイエルンは、自社とは無関係なユーザーの車の修理を無料で行わなければならないことになるため、その分の修理代金はBMWジャパンに請求して良いルールになっています。

 ところが、ヤナセBMWでクルマを購入したユーザーが、BMW系列ではないヤナセ(アウディを取り扱っているヤナセオートモーティブとか、GM車を扱っているヤナセグローバルモータースとか)でサービスを受けざるを得ない状況になった場合、修理代金をどこが出すべきかで、非常にややこしい話になってしまいます。
 チャンネルが何であれ、ヤナセの店舗でクルマを購入したユーザーは、全国のヤナセで保証を受けられるのが本則なので、ドライブ中に愛車のトラブルに見舞われた際、「ヤナセ」の看板を見かけたら、安心してサービス工場に飛び込むでしょう。そこがアウディチャンネルとかGMチャンネルのヤナセ店だった場合でも、BMWジャパン側が約束しているアフターサービスのルールに則って作業をしたのだから、修理代金はBMWジャパンに請求することになります。
 しかしBMWジャパンは、こうしたケースの場合は一切支払いを履行しません。「BMW正規店では無い工場でのサービスは、保証外」「ヤナセのお客さんなのだから、ヤナセさんが責任を持つべき」というのが、ジャパン側の言い分のようです。それだけではなく、BMW純正以外のパーツを使って整備を行った場合は、次回、何らかのトラブル(保証範囲内の部品)が発生した場合も、保証外にされてしまう場合があります。

 これでモメるケースは予想以上に多いらしく、数年前からBMWジャパンは、ヤナセに対して「BMWチャンネルにおいては、“ヤナセカラー”を抑えていただきたい」という要請を出しているそうですが、これは栗野さんもお書きになっていたように、輸入車業界の大御所であるヤナセから見れば、BMWジャパンは「後輩の、そのまた後輩」です。
そう簡単に、ジャパンの要請を聞き入れるわけがありません。
 さらに人事に関しても、ずいぶんとトラブルが発生しています。ヤナセは、一般的な全国規模の企業と同様、幹部候補の社員を全国のヤナセ支社・支店に数年おきに転勤させ、支店長などのポストで修行を積ませてから、役職の階級を上げていく手法を数十年前から続けています。
 ところがBMWジャパン側は、完全にヤナセカラーに染まり、数年後には他のヤナセ店に転勤することが判っている人材が、BMWチャンネル店のトップになることを拒んでいます。社内人事にまで口を挟まれたら、ヤナセ側も面白くないのは当然のことで、これによる衝突も、何度か耳にしたことがあります。

 その他、店舗内で着用するユニフォームが、ヤナセの場合は社内での支給品(いくらかの給料天引きはあるのでしょうが)であるのに対し、BMWの場合はジャパンからの買い取り制です。BMW正規代理店のCIが微妙にマイナーチェンジするたび、ユニフォームを買い取らなければならないのですから、ヤナセの他チャンネル店からBMWチャンネルに異動してきた社員からは、当然ながら不満の声が噴出しています。

 まあ、最後のユニフォーム買い取りは、ごくごく些細な問題ではありますが、そんなこんなでヤナセとBMWジャパンとの亀裂は想像以上に深まっているのですが、その一方でヤナセにとっては、人気商品であるBMWを手放すわけにもいかず、「不発弾を載せたまま走り続けるトラック」のような状態で、今も関係が続いているのが実態です。

 そんな中で起きた、今回のバルコムの福岡進出。いずれBMWジャパンは、“見せしめ”行動に出るはず…と予測しているのは、多分、私だけでは無いと思いますよ。
                                      ほり編集事務所・堀 達哉


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