ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか〜環境編(2)
高温と人口動態の変化が森林火災を招く


高温と人口動態の変化が森林火災を招く

 もう少し視点を広げると、日本とはまた違った現象が見えて来る。ヨーロッパやアメリカ大陸に住む人々の方が環境異変を生死に直接関係するものとして、より切実に感じているかもしれない。
 この夏は特に40度を超える熱波が欧米大陸を襲っているからだが、その上、エアコンの設置がない住宅が多く「住宅のなかで異常な高温に苦しんでいる人が今も数100万人いる」ため、彼らを熱中症による死から救おうと「今回初めて連邦資金を家庭でのエアコン設置などに使えるようにした」とバイデン米大統領は7月20日、人々に訴えた。

 問題はこれで解決したわけでもない。欧米大陸を襲っている異常高温は各地で山火事を引き起こしている。乾燥した空気が山を覆い、タバコの火やチェーンソーや草刈り機の火花、あるいは樹々のちょっとした摩擦でも発火し、あっという間に燃え広がっている。
 数年前から米フロリダなどでは森林火災が起きていたが、最近は住宅地にまで迫るなど火災の範囲も火勢も増し、その分被害も甚大になっている。
 こういう現象は日本ではほとんど目にすることはないが、今年は特に欧米大陸の空気は乾燥し、危険な状態に陥っている。しかも一度燃え上がった火は拡大する一方で、鎮火はおろか消火すらできないというから、湿度が高い日本に住む我々には想像すらできない。

 甚大な山火事被害が拡大している原因は2つ。いずれも自然環境によるものというよりは、人の活動によるものである。
 1つは都市への移住であり、もう1つは人口動態の変化によるものだ。前者は世界で共通に見られる現象で、収入や利便性、快適さを求めて都市への移住が進んでいる。
 それは一方では地方の人口減少と高齢化を招いている。それがいま最も顕著に現れているのが日本と中国で、とりわけ中国は急激に進みつつある。

 その結果、何が起きているかといえば、地方の土地管理機能の喪失である。かつては山森林の機能維持のために間伐や野焼きが行われ、土地を能動的に管理してきたが、地方の人口減少と、山森林を管理する担い手の高齢化により山森林に人の手が入らず放置されたままになっている。
 これは山で暮らす生物達にとってはいいことだが、放置され荒れ放題になっている山森林は災害を招く一因になっている。
 気温が上がり空気が乾燥すれば、倒木は燃料となり、樹々の摩擦やちょっとした火花で燃え上がり、一たび山森林火災が起きれば火力は勢いを増し、際限なく広がっていくことになる。これが近年、ヨーロッパで見られる森林火災の特徴である。

 また間伐しても運び出されず、その場に放置されたままになっている倒木は豪雨に見舞われると、倒木が堰の役目を果たしたり、堰が崩れて山裾の民家を襲ったり、土砂崩れを起こし、交通網を遮断する被害などが近年、日本ではたびたび発生している。

 一方、アメリカでは人口の都市への流入と逆の動きも見られている。都心を離れ郊外へ移住したり別荘を建てて移り住む人々や、沿岸部での暮らしが困難になった人々が、より生活コストが低い森林地帯へ移動しているのだ。
 ここでは自然と人間の距離が近すぎ、間に緩衝地帯がない。それ故、山森林火災は直接脅威になっている。

 つまるところ熱波という自然現象が山森林火災を引き起こしているのではなく、人間の人口動態が引き起こしているのである。
                        (3)に続く


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る