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不正列島ニッポン(2)〜犯罪、不正行為に鈍感な社会(1)


栗野的視点(No.801)                   2023年6月27日
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不正列島ニッポン(2)〜犯罪、不正行為に鈍感な社会
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 「不正列島、日本」と言っていい程、不正がまかり通っている。不正、偽装はありとあらゆる分野に及び、今では何を信じていいか分からない程だ。

 上の文章は2022年2月24日に配信した「栗野的視点(No.759)」の書き出しである。この時は食の分野での不正を中心に書いたが、その後も「不正」は減るどころか、我々の目に触れるだけでも分野と数を拡大しているが、それらは氷山の一角に過ぎないだろう。まだ明らかにならず、隠されているものはかなりあるはず。

近ツリの不正請求と過去最高益

 驚くのは不正が大手企業、有名企業、公務員など、かつては「お堅い」と考えられていた分野で頻発していることだ。
 最新のものでは近畿日本ツーリスト(近ツリ)の不正請求がある。不正請求額は分かっているだけで3年間に渡り約16億円という。これだけの金額で済むと思っている人は少ないだろうが、適当なところで幕引きを図りたいという意識が各方面に働き徹底的にメスが入れられることはないだろう。
 それ故、同業他社でも行われていた同じような例が後になって出て来る。それは自動車メーカーの不正検査問題で我々は経験済みであり、大手メーカーだから安心というのは何の根拠もない幻想、思い込みだったということを思い知らされている。

 許せないのは大手企業の不正行為である。もちろん中小なら許せるわけではないが、弱小企業の場合はある部分で生き残るための方策というか、背に腹は代えられない切羽詰まったところで行った部分があるかもしれない。もちろん、全てがそうではなく、近年は悪質なものが増えているが。

 しかし大手企業の不正行為には一片の同情を挟む余地もない。身勝手な、自己中心的な考えからくる不正であり、中には下請け企業を巻き込んだものまである。しかも、巻き込まれた側の方がダメージが大きい。積極的に加担したわけではなく、「やむなく」とまでは言わないが、発注側、受注側の上下関係が存在する中で「勧誘」されれば拒否するのは余程の覚悟がなければ難しいだろう。

 コロナ禍の3年間、多くの業界が大打撃を受けたが、特に旅行関連業界は軒並み売上減に陥りかなりの打撃を受け、中には廃業、倒産を余儀なくされたところもある。
 ところが近畿日本ツーリスト、クラブツーリズムを傘下に持つKNT-CTホールディングスが6月1日に行った2022年度の決算発表は過去最高益だったから驚く。営業利益、純利益ともに、である。売上減、利益減のマイナス決算かと思えば、そうではなく最高益なのだ。
 さらに驚くのは2月9日に業績の上方修正を一度発表している。すでにその時点で過去最高業績を予想していたが、6月1日の決算発表ではさらなる上方修正をした。
 一体いかなる錬金術を使えばコロナ禍で過去最高益を出せるのか。

 近ツリが使った錬金術の1つが今回の不正の元になった自治体からの受託業務(観光施設の運営管理業務等)の増加であり、コロナ禍で受託業務を強化したこともあり、この分野の売上高が増えている。といっても主力が旅行業務であることに変わりはないが。

 では、不正はどのように行われたのか。ここで仮にA支社の立場に立って考えてみることにしよう。
 ツアーを含め旅行業務の売り上げが激減しているのは同社から送られてくる旅行案内冊子を見ていても想像つく。
 1.旅行案内誌のページ数が極端に減り、ペラペラになった。
 2.パンフレット、旅行案内誌が届く回数が減少した。


 
この2つのことから同社が経費削減に動いていることは容易に察しが付くし、掲載されている旅行情報を見ればツアー自体も減少(売り上げダウン)していることが分かる。

 A支社としては旅行業務の落ち込みをどこかでカバーしなければならない(売上高の維持)のと同時に、支出を減らす必要がある(経費削減、利益確保)。
 そこで自治体からの受託業務の開発、強化で旅行業務の落ち込みをカバーしようとした。といっても売上高で言えば旅行業務分野の方が圧倒的に多く、自治体からの受託業務を開発、強化しても旅行業務の売り上げにははるかに及ばない。とはいえ将来に向けて旅行業務以外の分野を開拓、強化することは必要だ。

 その上、自治体からの受託業務は旅行業務に比べて利益率が2倍近くも高い。これは企業にとっては好材料で、この分野に注力しない手はないと考えるのは当然だ。                                        (2)に続く


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