Google

 


少ない経費で、いかに自社の特徴をPRするか。(2)


会社のPRを運ぶ社封筒&トラック

 「納期が明確。しかも速い」
光陽産業(株)(岡山県笠岡市)の箱形4tトラックの後ろにはこう大書されている。
まさに「走る広告」。
 「走る広告」といっても、車のボディーに商品広告を書いているようなものとは全く違う。同社の場合は、キャッチフレーズや商品名ではなく、「会社のポリシー」「顧客への約束」を打ち出している点が他と大きく異なる。
 他社と差別化できる自社の特徴をきちんと訴求しているわけで、これこそPR、広告の原則である。
 しかも、広告媒体は毎日走っている自社のトラックだから媒体料はゼロ。費用対効果は大きいといえる。

 一般的にトラックの仕事効率は50%以下だろう。行きは荷物を積んでいるが、帰りは空便というのがほとんどである。
ところが同社の場合、荷物を積んでない時でもPRをしながら走っているわけだから、仕事効率は100%とはいわないまでも、かなり高い。
まさに経費をかけずに行うPRの見本だ。
 うまい方法を考えたものだと感心していたが、同社の経費をかけないPR方法は「走る広告」にとどまらなかった。
 会社の大型角封筒や名刺など使えるものには皆、自社の特徴、内容を記しているのだ。

 まず会社の大型角封筒。
表に

 納期が明確。
 しかも速い。

 と2行に渡って大書されている。
 さらに、この文字の上に

 【小ロット対応】金属・非鉄材料・部品の総合熱処理。
 納期をはっきりお伝えできます。


 と業務内容も書かれている。

 社封筒に書かれているものは社名と住所というのが一般的だ。
同社のように封筒の半分を使って自社の特徴をアピールしているものは見たことがない。
 でも、これならどこでもすぐ実行できる。

 ただ、来山尊社長に言わせれば悩みもあるとのこと。
忙しい時など社員から悲鳴にも似た「お願い」がつい口を突いて出ることがあるらしい。
「社長、納期が明確で速い、というのは外してもらえませんか」と。
それだけ顧客に同社のポリシーが浸透しているということだ。また社員にもいい意味でプレッシャーを与えるようだ。

 ここまでやる企業だから名刺も普通の名刺ではない。
社員一人ひとりの似顔絵入りなだけにとどまらず、「平・丸・角鋼、小型サイズはおまかせください」とか「より良い品質でより速く」などと表に書いてある。

 以上2例を紹介したが、いずれもほとんど経費をかけずに、いますぐ出来ることだ。
特に光陽産業のやり方は大いに真似るべきだろう。

 ただ、その前に一つだけしなければならないことがある。
それは他社と差別化できる、自社の特徴を把握することである。
「己を知る」こと。
中小企業が弱いのはまさにこの点で、「おのれ」、つまり自社、自社製品の強み、弱みを分析・把握してないことだ。
これができなければ表面だけ真似ても同じである。



(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る