高級・高額ホテルの逆を行くホテルチェーンがニッポンを救う(2)
〜温泉地宿泊施設は軒並み値上げ


PB商品を増やし値下げする動き

 どこもかしこもが富裕層をターゲットにしたビジネスを展開する中、逆張りも起きている。イオンを筆頭に小売り各社は商品を値下げし消費者に支持されている。注意して店頭の商品を見ればナショナルブランド(NB)の商品が値上げされている中、PB(プライベートブランド)商品が増えているのに気付くはず。
 PB商品は品質が劣るというのは昔の話で、今ではPB商品はNB商品と同等品質であり価格は安いというのが常識になっている。
 それもそのはずで商品の裏側に表示されている内容を見比べて見れば同じメーカーがNB商品とPB商品を作っているのに気付くはず。

 例えばイオンのPBビール。以前は韓国メーカー産だったが、1、2年前から国産メーカー産に替えている。国産メーカーといってもあまり知られていないメーカーだろうと思ってはいけない。キリンビールとサッポロビールが製造し、イオンがイオンブランドビールで販売しているのだ。
 容器にはキリンやサッポロのメーカー名が表示されているから製造元メーカーも品質を落とすわけにはいかないし、実際おいしい。しかも価格は両メーカー製ビールより安い。
 イオンが製造元をサッポロビール、麒麟麦酒に替えてから、私はイオンビールをよく買って飲むようになった。

温泉地宿泊施設は軒並み値上げ

 流通小売業がPB商品を増やし価格を下げる動きをしているのとは逆に宿泊施設は軒並み値上げが目立つ。理由は仕入れ材料費の値上げ、人手不足など様々だが、ターゲット層を国内外の金持ち、アッパークラスに変更したことがある。
 その背景には「星のや」「界」などの宿泊施設を全国展開する星野リゾートの成功もあると思われるが、庶民向けのリーズナブルな宿泊施設が減れば庶民は旅行を楽しめなくなる。
 カネを持ってない連中は野宿(とは言わないか)かグランドキャンピング、車中泊すればいいと言うのだろうか。たしかに現在、収入格差が社会格差に繋がり、格差が固定化する階級社会に日本はなってきた。

 一部の金持ち層を除けば旅行費用は安く抑えたいと思う人が多いだろう。ところが今、この国は相手の足元を見た商売を促している。土日・祝日の高速道路料金は割り引き廃止に動き、タクシー料金や宿泊施設も土日・祝日、繁忙期は値上げ料金を認めている。
 これでは庶民の旅行は従来より割高になる。代わりに平日料金が割安になるのかと思えば、それはない。高速道路も宿泊施設も運輸会社も平日料金を下げるのではなく土日・祝日料金を上げるという一方通行に終始しているからだ。
 そうさせている背景、というかお墨付きを与えているのが「人手不足」で、それを煽っているのがマスメディアだ。

 旅館よりホテルが選ばれるようになったのは江戸時代に越後屋(三越デパートの前身)が正札販売をし、庶民に支持されたのと同じ。それまで旅館の宿泊料は週末・祝日が高く(今でもこの慣習は残っているが)、仲居さんにチップを出す慣習まであった。
 一方、欧米から輸入されたホテルは1年中同一料金。越後屋の正札販売で支持を広げた。
 いつの間にか週末・祝日前日は別料金という旅館と同様のシステムになりはしたが。

 2昔前まで温泉地は湯治場であり、湯に浸かってノンビリという旅行を楽しむ先ではなかった。傷付いた鷺や猿などの鳥獣が湯に浸かって治って行くのを見て人間も傷や病気を治すために訪れるようになったのが始まりで、1週間〜1か月その地に留まり朝夕湯に浸かって治癒して帰る湯治場として栄えた。
 その間、食事を提供する宿もあるが多くは自炊である。ひなびた温泉地に行けば今でも自炊場跡を認めることができるし、今でも稀に自炊ができる温泉地(宿)がある。

 コロナ禍以降、ホテル、旅館を問わず宿泊施設は軒並み値上げをしている。しかも上げ幅がビジネスホテルでも35%〜50%、オークラやハイアットなど東京の大手シティホテルでは11万円〜20万円弱に4月から値上げする。この料金は食事付きではなく1泊素泊まり料金だから驚く。

 もちろんインバウンドや金持ち層を当て込んだホテルばかりではない。「人の行く逆に道あり」という言葉があるように、リーズナブルな価格を維持し、従来にはない新しい方法で客を取り込み、全国展開しているホテルもある。それらの新しい動きを以下で見ていきたい。
                            (3)に続く

#リーズナブルで納得のホテル


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