森下仁丹の食養生カレー

 


米ヤフーの在宅勤務制限に関連して(2)
〜読者のメールから〜


 話が少し横にそれましたが、仕事のスタイルでもアメリカの真似をする必要はないと思っています。在宅勤務にも長短両面ある、仕事の内容や人によって向き不向きもあるのではないでしょうか。
 興味深いのはメイヤーCEOが「人は1人でいる方が生産性は上がるが、集団になった方がイノベーティブになる」と、在宅勤務禁止の理由を述べていることです。
 この意見には私も賛成です。自分の経験からしても雑談であれ議論であれ、人の意見や話から触発されたり、考えを深めることが多々あります。
 暇さえあれば、それが休憩時間や人待ち時間、あるいはスターバックスでコーヒーを注文する行列に並んでいる時でさえ、タブレットやスマホの画面を見つめて「モノ言わぬコミュニケーション」をしている人を多く見かけますが、そういう人はせっかく「イノベーティブ」になれるかも分からないチャンスを自ら潰しているように思いますが、それは私の勝手な思い込みでしょうか。

 最近学生を教えていて、感じることですが。ネットで調べ、短い時定数の中で知識を駆使してさも自分の意見の様にいう、レポートにするという事が多くなりました。勿論人間は、自分の考えを創造するために本を読み資料を調べますので、素朴なプロセスそのものは以前と変わらないですが、、。
 何が違うか?調べる、探し当てる、様々な意見の中からその価値を自分で斟酌するといった時間のかかる過程で人間の脳は刺激され、成長すると私は信じています。
 だから、アーカイブのデーターは、自分で作ったノートに書き込みし、加工しデータベースを築き上げる。そのことが、しばしば人の頭の良さや質とられることすらも有り、整理学や暗黙知、経験値と言われる所以でしょう。ところが、IT技術は検索に長けているので、時定数は非常に短く目的のデーターにたどり着け、たとえズバリとした目的にかなうものでなくても、流布している膨大な資料をキーワード分類整理してくれる。そのため、即戦力になると思われる情報は頭を悩まさずに出てきます。


 恐らく最近の学生の辞書には「調べる」という語はないのではないでしょうか。
代わりにあるのは「検索する」「ググる」ではないかと思います。
 実は私のHPには全国の大学からアクセスが頻繁にありました。当初、それは企業情報や経営関係の記事が多いからだろうと考えていましたが、1,2年前あることに思い当たり、関連記事をHPから完全に削除してみました。すると、その頃を境に大学のアカウントからのアクセスが減りました。
 削除したのは「転換期を生きた宮本武蔵」という記事で10回連載したものです。
通説に反し、かなり独自の視点で武蔵の生き様を評論的に書いていますし、当時の各種資料も引用しているので、文系学生のレポート、あるいは卒論の参考にもなるものなのでコピペ(Copy & Past)されていたのかも分かりません。

 さぼる、効率の悪い勤務の問題は私もわかりません。働きアリを集めたらさぼるアリの分布が出るそうですから。その問題でなく、頭脳の知的な営みのプロセスの弱体化はもっと深刻な問題かも知れません。テレビでも、考えるというより知っているかどうか、または推測などに関して、一瞬にして正解を答える時間を競うクイズ番組が有ります。人間の頭の検索能力を競っているようで、知の活動で無いのではと思いたくなります。

 同じことが、入試制度で最近話題になっています。センター試験の改革ですが。
内容はよく分りませんが、時間内に正解を競う事でなく、達成度を評価する。確かに良いかもしれません。でも、これからの日本の大学、日本人に必要なことは、入り易く、卒業しにくい大学にどう変わるかが本質のような気がします。つまり、高等教育の役割の一つとして、正解のない問題を見つけ、ソリューションを探し出す。最適解でなくても、時間内にまとめ上げ、有る条件の範囲で形作る。
 だれでも検索できる情報をいち早く探し出す能力ではなく、過去から学んで、何が求められ、求められている価値を創出、それに近づくという頭脳活動でしょうか。大量生産、価格破競争でなく、価値の創出と言う点ではアイリスオオヤマの話に繋がる気もします。何度かあの会社ユニークさの紹介のTVを見たことが有ります。

 何時ものモノづくり論ですが、高度な専門性ばかりでなく、ジェネラリストとしてのバランス、形あるものを人に示す能力、それは、コミュニケーションや集団の力かも知れません。


 もともと日本人は同質を好むから、コミュニケーション力は低かった(さほど必要とされていなかった)のかも分かりませんが、最近、とみに落ちているように感じますね。グローバル化すればするほどコミュニケーション力が必要になりますが、それが英語を話すことに矮小化されているように思います。

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