免許返納する高齢者、オープンカーを買う高齢者(2)
〜オープンカーを買う高齢者


オープンカーを買う高齢者

 次は正反対の動き。つい最近、高校時代の同窓生に会った。ちょっと尋ねたいことがあって、時間を割いてもらったのだが、話が一段落した時「車を買おうかと思うんじゃが、ベンツとBMWはどちらがいいか」と尋ねられた。
 この間まで私がBMWに乗っていたのを知っているから、そう尋ねたのだろうが、「ベンツにしろ」と私は答えた。
 理由は「BMWはディーラーが岡山市と倉敷市にしかないが、ベンツは津山市に営業所があり近いから修理や点検の時に岡山まで持って行かなくてもいい」というもの。
 実は以前、津山のベンツ(ディーラーはヤナセ)に行って尋ねたことがある。「ヤナセは全国的にはBMWも扱っているのだから、ここでBMWの修理はできないか」と。
 答えは「ノー」だったが、その時、ベンツなら車で30分弱の津山で修理が出来ると分かったことだ。だから友達にも、買うならBMWよりベンツにしろと勧めた。
 もう一つの理由はBMWは新車の時はいいが、年数が経つと修理費が世界的に最も高いことで有名だから。

「輸入車は電気系統の故障が多いと言うな。持って行く言うて、故障したら動かないのにどうして持って行くんや」
「いや、今頃そこまでの故障はないだろう。俺の場合は一度は高速で走行中にワイパーが動かなくなったのと、もう一回は後部座席のウィンドーの上げ下げが出来なくなって持ち込んだけど、車そのものがまったく動かなくなって修理というのはないだろう。普通その前にちょっとした異常や不調に気付くから」

「そうか。君はベンツを勧めるんじゃな。実はベンツのオープンカーを買いたいと思って毎日ネットで検索しているんじゃけどね。買う言うても新車じゃなく中古やで」
「なに、ベンツとかBMWじゃなく、オープンカーに乗りたいんか」
「そうなんじゃ、ベンツSLというのに乗りたいと思うてな。オープンカーに乗って走りたいんじゃ」

 彼は後期高齢者になっている。免許返納でも、大きい車から小さい車に買い替えるでも、安全装備がしっかり付いている車に買い替えるというのでもない。オープンカーを走らせたい、と言うのだ。前々からオープンカーに乗りたいという夢があったのだろう。その辺は深く聞かなかったが。
「いいんじゃないか。ただ君が知っている自動車工場がベンツのことに詳しいかどうかだね。そうか、最後に乗る車がオープンカーか」

 免許返納する高齢者がいる一方で、これからオープンカーを買って走りたいという高齢者がいる。高齢者だからと一概には言えない。まさに多様化だなと実感しつつ彼と別れたが、彼が今乗っている車は軽自動車。一年前に市議会議長の職を最後に市会議員も辞めたから、今風に言えば「自分へのご褒美」と考えているのかもしれない。
 人生いろいろ、人もいろいろ−−。


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