淘汰の時代に入ったSIMフリー市場(2)
〜色気の多い経営者は失敗する


2.第4のキャリアを目指した?

 プラスワン・マーケティングはMVNOの中では異色の存在だった。というのはMVNO各社がSIMフリー回線の提供とハード(スマートフォン)の販売代行のみを行っているのに対し、自社ブランドでハードの製造・販売も行うという、ドコモやKDDIなどのキャリアと同じ方向を目指していた。
 多くのMVNOがほぼネット販売だけなのに対し、同社は比較的早い段階から実店舗展開を行っていた。最初はヨドバシカメラなどの量販店に自社コーナーを設ける形で、後には直営店舗の出店も。
 こうした動きからは第4のキャリアを目指していたのかもしれない。だが、これは小企業がある時、大企業の真似をしてゲリラ戦を捨て、正規戦で挑むようなものであり、明らかに戦略ミスである。

 同社の戦略はたしかに競合MVNO他社に対しては大きな差別化戦略であり、ユーザーにはサービスの充実と、一見メリットが多いように見えるが必ずしもそうではない。
 実店舗展開はキャリアと同じ方向だから、競争相手が同業MVNO業者だけでなくキャリアにまで広がることになる。
 次に出店コスト、維持コストが増える。その分、顧客数が増えればいいが、思惑通りにはならず、逆にコスト増になることの方が多い。そして実際その通りになった。
 ひと言で言えば戦略ミス、分不相応な戦いを始めたわけだから、敗北するのは当たり前だろう。大手の真似をして正規戦を行うには兵力も兵糧も少なすぎる。ゲリラの戦いは兵力を集中して一点突破(全面展開までやると失敗する)することだ。そしてそこに拠点を築き、築いた拠点を守り抜くことである。

 それにしてもなぜ同社はベンチャー企業なのにこうした戦いをしたのだろうか。それは1でも述べた経営者の「色気」故だろう。カッコイイことをしたい、新しいことをして注目を浴びたい。こうした色気が地道な戦いより派手なやり方を選ばせたと言える。そしてそれは海外展開と派手な広告宣伝へと続く。

3.派手な広告宣伝と携帯端末の海外展開

 ベンチャー企業であるMVNOがキャリアと同じ戦い方をすれば失敗するということは上述した通りだが、それに重ねて同社が失敗したのは携帯電話端末の自社製造を早くから行ったことである。
 自社製造と言っても大半の部品がコモディティー化しているデジタル時代の現在、完全な自社製造を行っているところはほとんどない。商品企画のみ、あるいは最終工程の組み立てを国内で行うのがほぼ常識。そのため大量販売を行わなければ利益を確保できない。
 製造は中国企業への委託だろうから、製造原価、販売数量ともに中国企業には敵わない。しかも、世界の携帯端末はアップルと中国企業にほぼ抑えられている。そこに後発メーカーとして参入する以上、市場をセグメントし、ターゲット層を絞るべきと思われるが、同社が選んだ市場は中国以外の新興国とアメリカだった。投入するスマートフォンの価格帯は低価格〜ボリュームゾーン。もっとも利幅が薄いところである。
 それにしてもなぜ海外市場でスマートフォンの販売なのか。その辺りがいま一つ分かりにくい海外展開であり、私が同社に最も危うさを感じた点がこの部分だった。

 2番めが佐々木希と高田純次という有名人を使った広告宣伝。誤解を恐れずに言えば、若くてきれいな有名女性タレントを使いたがる経営者にはスケベが多い。ここで言うスケベとは先の「色気」とは違い、文字通りの女好きという意味だ。もちろん女好きが悪いわけではない。「女を知らずにモノが売れるか」という本さえあるくらいだから、若い女性の好みを知るのはいいことだ。少なくとも堅物経営者よりははるかにいい。
 しかし、である。そこで止まればいいが、止まらぬ人が多いのが問題だ。少なくとも収支計算、費用対効果を考えてタレント起用、広告宣伝をするべきだと考えるが、先行投資に走る傾向がある。それ故、上記タレントを使った広告宣伝を見た時、2つ目の危険信号と私は受け取っていた。

4.速度低下と繋がらない電話

 私がFREETELSIMから他社に変更した直接的なきっかけになったのが、速度低下と電話が繋がらなくなったからだ。
 電話が繋がらないというのは変な言い方だが、携帯電話時代にもよくあったから、それほど気にはしなかった。要は回線の集中時に規制をかけて繋がらないようにしているわけだ。例えて言えば、道路にいつも以上に車が殺到すれば大渋滞になり、ノロノロ運転はまだ増しな方で、全く動かなくなったりするのを防ぐため、一部の車を別のルートに誘導したり、その道路に入らせず待機させたりするのと同じだ。
 いまでも年末年始や災害時にはこうした回線規制をかけることが多いが、何もない平日に規制がかかることはまずない。MVNOの回線によっては昼時や夕方の回線利用が多い時間帯に通信速度が落ちることはあるが、電話が繋がらなくなったり、勝手に留守電になることはない。

 FREETELはサービス開始当初こそ速度が遅い、繋がりにくいと言われたが、その反省に立ち、以降は「倍速マラソン」と称して通信速度の低下を防ぐ方法を適宜実施していたが、その後、さらに毎週「増速マラソン」を実施するようになった。
 これも懸念材料になった。というのも回線増設には経費がかかるからだ。もちろん「増速」と言っても単純に回線を増やしているわけではない。それは車の混雑解消の方法が道路の拡幅工事だけではなく、部分的に車線を増やしたり、ゆずり合い車線を部分的に設けて車の流れをよくするのと同じだ。
 詳しい説明は省くが、回線増設ほどではなくても、ある程度のコストはかかる。それ故、毎週増速はやり過ぎだろうと考えていた。すると案の定というか、6月頃に、毎週実施していた「増速マラソン」を「適時実施」することにしたとHP上で密かに(?)発表していた。
                                         (3)に続く



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