独自路線で行く異色のMVNO、トーンモバイルの子供を守るスマホ(1)
〜大手キャリアの寡占化がさらに進む


栗野的視点(No.720)                   2021年1月12日
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独自路線で行く異色のMVNO、トーンモバイルの子供を守るスマホ
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 昨年、武田総務相が投げた「曲球」に困惑したのはNTTドコモなどの大手キャリアではなく第4のキャリアを目指していた楽天モバイルだったに違いない。菅首相のお友達の三木谷氏は武田総務相の発言に喜ぶどころか逆に追い詰められてしまった。

大手キャリアの寡占化がさらに進む

 「競争を促す」ためと言いながらライオンの餌を減らしたものだから、それまで共存共栄などと悠長に構えていたライオンが俄然、自分が生きることのみを考え、形振り構わずに行動し出した。
 その煽りを諸に食らうのが楽天モバイルの「UN-LIMIT V」で、「菅さん、ひどいじゃないか」と泣きついたかどうかは定かではないが、恨み言の一言でも言いたくなったに違いない。
 というのもドコモの「ahamo」プランで最も窮地に陥ったのは楽天モバイルだからで、それは同社の死活問題になりかねない。

 影響を受けたのは楽天モバイルだけに留まらず、むしろ格安SIMを謳い文句に小判鮫商法を行っていた格安SIM提供業者(MVNO)こそ、いい迷惑と感じているだろう。なんだかんだと言ってもユーザーがMVNOに求めるのは格安通信料。それを卸元のキャリアが直接販売価格を下げれば、ユーザーはそちらに流れる。
 もちろんすべてのユーザーがキャリアに流れるわけではないが、MVNOのウリである「低価格」が色褪せて見える。少し高いぐらいなら通信速度が速いキャリアの方がいい、と考えるユーザーは少なからずいるだろう。
 それならMVNOも価格を下げればいいではないか、と思われそうだが、「そうは問屋が卸さない」。それは今回のNTTドコモと日本通信の協議を見ても明らかだ。
 総務大臣裁定まで持ち込みドコモに「原価に適正利潤を加えた金額を超えない額での料金算定」を求めたにもかかわらず、NTTドコモは2020年12月29日の期限までに料金提示をしなかった。
 問屋(キャリア)が卸価格を下げなければ2次販売業者は価格を下げられない。それでなくても利幅が薄い商売をしているのだから。

 そうなると菅首相の思惑とは反対に、今年後半、MVNOの事業撤退、大手への吸収合併が相次ぎ、気が付いた時には大手キャリアのさらなる寡占が進んでいることになるだろう。その時はじめて国民は菅首相の人気取り政策の中身を知ることになる。

ユーザーサイドに立った独自路線

 こうした動きに1線を画し、独自路線を歩み続けているMVNOがある。トーンモバイルという名前を聞いたことがあるだろうか。TUTAYAを展開するカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)と資本・業務提携し、TUTAYAやカメラのキタムラでスマートフォン(以下スマホ)や格安SIMを販売していた会社である。「していた」と過去形で書いたのは2019年12月1日にCCCとの資本・業務提携を解消したからだ。
 トーンモバイルの現在の親会社はドリーム・トレイン・インターネット(DTI)。元々DTIが親会社だったから生みの親の元に帰ったといえる。

 ここから少しインターネットの歴史に触れることになるが、DTIの設立は1995年。三菱電機グループが慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの学生らと提携して立ち上げたインターネットサービスプロバイダー(ISP)である。プロバイダー事業への参入は決して早くはなかったというか、むしろ後発といってよかったが、慶応大の学生に運営を任せたこともあり、当初からユニークな動きをしていた。

 実は私が最初に契約したプロバイダーがDTIだった。理由は同社の回線が速かったのと、同社の理念というかユーザーへの向き合い方に他社にない良心を感じたからだった。
 プロバイダーにしろMVNOにしろ回線リセール業者のやり方は今も昔も同じで、仕入れた回線をできるだけ小分けして多くの客に再販して利益を上げている。効率を重視するなら回線あたりの再販数を増えした方が儲かる。その代わりユーザーは回線速度の遅さに我慢を強いられる。

 これは高速道路を走る車の速度によく例えられるが、高速が謳い文句の高速道路(光回線)でも多くの車が乗り入れれば渋滞が発生し、どうかすると一般道路並みの速度しか出なくなる。
 そうなるとユーザーから不満が出て、A社の高速道路は遅いからB社の高速道路に乗り換えるユーザーが出てくる。ユーザー数が減少すれば薄利多売のビジネスモデルは成り立たなくなるから、リセール業者はユーザー引き止めの手を打たざるを得ない。
                                            (2)に続く

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