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ウクライナを孤立させるな


栗野的視点(No.761)                   2022年3月17日
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ウクライナを孤立させるな
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 時代は繰り返す−−。今回のロシアのウクライナへの軍事侵攻を見ていると、どうしても既視感に捕らわれる。そして人間とは歴史に学ばないものだとつくづく感じる。
 ロシアの大統領プーチンはウクライナへの軍事侵攻の理由として
・ウクライナの現政権はファッシストであり、民衆を抑圧し、民族虐殺を行っている。民族虐殺に遭っている民衆はロシアに助けを求めている。
・ウクライナの民衆を守るためにウクライナを非軍事化、非ナチス化しなければならない。
・ウクライナが核兵器を開発している疑いがある。
・米国がウクライナ国内で生物兵器の研究所を設置している
・ウクライナが西側諸国に近付きNATOに加盟すると、ウクライナにNATOの軍事施設が建設され、ロシアの直接的な脅威となる。
・ウクライナを非軍事化、中立化させ、ロシアと西側諸国との間の緩衝地帯にする必要がある。

 こうした理由を次々に展開しウクライナへ軍事的侵攻を開始し、今や両国は全面戦争になっている。
 プーチンが言うこれらの理由はことごとく嘘っぱちであり、それらの大半はウクライナではなくロシアが行っていることなのはロシア以外の多くの国、報道の自由が許され、インターネットの接続が規制されず自由に接続でき、諸外国やウクライナが発するニュースやSNSに接することができる国の人々は知っている。
 自由とはそういうことであり、それほど大事ということである。そして、こうしたニュースに接し、ウクライナで今行われている現実を見聞きしている人は、私も含め何とかこの戦争を止められないか(ロシアの侵攻、無差別攻撃、虐殺を止められないか)、ウクライナに連帯し、支援を行えないかと思っているに違いないし、すでに様々な方法で支援活動を行っている人もいるだろう。

 プーチンのウクライナ侵攻の最重要目的は同国の非軍事化・中立化にあるのは間違いないだろう。
 問題はウクライナの「非軍事化・中立化」がなぜそれほど重要であり、プーチンが拘るのかだ。そこで思い出すのがスターリン。
 スターリンは国際共産主義運動を主導したが、それはソ連中心で、それ以外の社会主義国はソ連を守るために存在した。
 プーチンの頭の中にあるのもスターリン同様にロシア一国をいかに守るかということであり、かつてのソビエト連邦構成国が西側に近付き、NATOに次々と加盟すればロシアがNATOと国境を接することになる。
 これはロシアにとって「脅威」だから、NATOとの境界線の間に緩衝地帯が必要になる。以前、ウクライナは親ロシア派の大統領だったがゼレンスキー大統領になってからNATO加盟を表明するなど西側の一員になりたがっている。プーチンはそれが許せなかった。
 そこでありとあらゆる理由を付けてウクライナに軍事的侵攻を開始した。結局、プーチンはウクライナが非武装化し中立化(ロシア側に近い形での)しない限り諦めないだろう。

 問題は西側諸国の対応だ。ウクライナに攻め込むまでほぼ座して待った。その後、経済制裁を加えだし、確かに効き目は出ているようだがプーチンは一向にこの戦争をやめる気配はない。今ロシアがウクライナで行っているのは「ジェノサイド」と言っても言い過ぎではない。民間人も病院も学校も避難所も、とにかくありとあらゆる建物を爆撃し、攻撃し続けている。そしてそれらはすべてウクライナが行っているから反撃しているだけで、ロシアは攻撃していない、とさえ言っているのだから開いた口が塞がらない。「ナチス化」しているのはロシアの方であり、プーチンは完全にヒットラーと化している。

 なぜ人は歴史に学ばないのだろうか。様々に都合のいい理由を付けて隣国へ侵攻したのはナチスドイツで経験しているはずだし、今回、ロシアのやり方を見ているとかつて日本が中国に侵略し、満州国をでっち上げた時と実によく似ている。
 我々はまるで過去の歴史を見せられているような既視感を覚えるではないか。あの時も欧米列強は日本の動きを察知しながら西側諸国から遠く離れた東側の出来事に多大な関心を示さなかった。
 それを見た関東軍は中国東北地域に軍事進攻し、愛新覚羅溥儀を担いで傀儡政権とし、満州国をでっち上げたわけで、プーチンの手法も実によく似ている。

 歴史に「もしも」はないし、過ぎたことを今更とやかく言っても現実が変わるわけではないが、それでも言いたい。もしバイデン米大統領が早い段階で「米軍はウクライナでの紛争に関与しない」と明言しさえしなければロシアはウクライナに侵攻していただろうか、と。

 今、世界に求められているのはウクライナを孤立させないことと、ロシアの侵攻を止めさせることだ。
 そのためにできることを今すぐ実行すべきだろう。経済制裁が効果を発揮しているなら、さらなる経済制裁を、今すぐ実行すべきだ。
 日本企業も政府も様子見を決め込むのではなく、できることを今すぐ行うべきだ。重要なのは「今すぐ」で、3月いっぱいでロシアから撤退みたいな悠長なことではなく、今でしょ!

 米企業等と比べて日本企業の撤退、一次販売停止等の動きは遅すぎる。販売停止ぐらいすぐやるべきだ、柳井さん。
「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利を持っている」と柳井正代表取締役会長兼社長。
 そう言えばこのご仁、新彊ウイグル自治区のウイグル民族に対する中国の人権抑圧が問題になった時も、調査したが人権抑圧はなかったとして新疆ウイグル製綿花の使用をやめるとは一切言わなかった。決算発表会見(2021年4月)でも質問が出る度に「政治的な質問にはノーコメント」と繰り返している。
 こうした言葉からはファーストリテイリング社の利益第一と考えているとしか受け取れない。
 独裁者の思考とよく似ている。まあ代表取締役会長と代表取締役社長を兼任していることからもナンバー2は置かないという独裁者に共通した点が見て取れるが。
 それにしても、なぜ、ソ連、ロシア、中国、北朝鮮の権力者はこうも似たように猜疑心が強く、似たような行動を取るのだろうか。

 ともあれ我々庶民が取れる行動は限られている。ロシアの侵略戦争に反対する声を上げ続けるか、ウクライナの人々に連帯し、戦火を逃れてきたウクライナ難民への支援ぐらいしかできないが、できることを少しでもしていきたいと思う。

 もし、私と同じように考えている人のために、ウクライナ支援募金を募集している機関を下記に載せておきます。

 国連UNHCR協会 ウクライナ緊急支援
  >https://www.japanforunhcr.org/

 日本ユニセフ協会 ウクライナ緊急募金
  https://www.unicef.or.jp/kinkyu/ukraine/


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