崩壊するニッポン(7)
富裕層優先の経済が社会を壊す(2)

〜宿泊施設もメーンターゲットは富裕層


 ところがである。コロナ禍が多少収まり企業がオンライン勤務から通常勤務に戻し、列車の乗客も以前と同程度近くに戻っても朝夕の通勤時間帯の運行本数を元通りに戻すわけでも、減らした座席数を元に戻すわけでもない。利用者に不便さを押し付けたまま自社のみが過去最高益を達しているのだから、これをおかしいと思わない方がおかしい。

 こうしたことはJRだけに留まらない。企業各社も同じで、売り上げが減少した時は声を大にして叫び、コロナ禍以前の水準に売り上げが戻った時には声を潜めて、決算報告の直前になって初めて「過去最高益」と発表する始末。
 過去最高益というならその分、社員なり消費者に還元するのが当然と思うが、値上げはしても値下げをしないのが資本主義経済。「新資本主義」と言おうが、「異次元の」と言おうが、それは口先だけで、これほど言葉に重みも中身もない首相は過去に例を見ない。
 「魚は頭から腐って行く」と言われるがその通りで、この国は政治も企業も腐っている。
 確かにベースアップした大企業もあるが、それは一部だ。それも正社員中心で非正規雇用を正社員に雇用替えをした企業もあるにはあるが、それは数社ほど。
 こんな状態でデモも暴動も起こらないこの国の民は正常なのか、それともすっかり飼いならされているのだろうか。

宿泊施設もメーンターゲットは富裕層

 観光列車が富裕層「限定」の豪華料金なら宿泊施設も豪華で、国内外の富裕層を対象にした施設や部屋が相次いでいる。1泊10万円の部屋はまだ安い方らしい。こうした宿泊施設は京都などの有名観光地のみかと思えばそうでもない。地方の、観光地としては聞いたこともない兵庫県の田舎町に1棟貸しの宿泊所がオープンしたと昨年聞き驚いた。
 旧宿場町ではあるが、いままでその町に宿泊施設はなかった。それが旧家を宿泊所にリノベーションし、今流行りの1棟貸しにしたらしい。果たして利用者があるのかどうか。

 まあ、そんな具合に各地で富裕層を狙った宿泊所が次々にオープンしている。その一方で従来の宿泊施設は接客サービスをどんどん省いている。一時期、言葉だけ流行った「お・も・て・な・し」はいまでは富裕層相手の施設でのみ見られるものになり、庶民には無関係なものになった。

 富裕層以外は客ではないという風潮はあらゆる分野に及んでいるが、高速料金もその1つだ。
 従来、土日祝日の高速道路通行料は3割引きだったが、数年前からゴールデンウィーク、シルバーウィーク、お盆、年末年始の割り引きが廃止された。理由は休日に集中する人と車の移動から来る混雑解消。
 さらに今年から「繁忙期の休日割引は永続的に適用が除外」。つまりGWや年末年始、お盆休み等の繁忙期は今後、割り引きなしになったわけで、高速道路通行料割り引きはかなりの程度なくなり、利用者負担が増えるということである。

 車を利用しない人や高速道路を走らない人には別になんていうことない問題かもしれないが、週末によく遠出をする人にはかなりの出費増になる。
 例えば私は数か月に一度、片道約550km走っており、高速料金は通常料金で約12,000円、休日3割り引きの適用で8,400円。つまり土日の利用なら片道3,600円、往復で7,200円の割り引き。年に3、4回はこの距離を利用しているから割り引きがなくなれば年間28,000円〜21,000円の負担増となり、これは私にとってかなり痛い。
                                      (3)に続く
  #崩壊するニッポン #富裕層優先社会


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