デル株式会社

 


 愛しき訪問者と招かれざる「夜の訪問者」


栗野的視点(No.701)                   2020年8月10日
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愛しき訪問者と招かれざる「夜の訪問者」
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 岡山県北東部の田舎に「移住」して3週間程になるが、まるでこちらの帰省を待ちかねていたようにやって来る「夜の訪問者」がいる。時間は大体決まっていて、人の目を気にしてか、夜の帳が下りる7時半過ぎにやって来る。それも毎夜欠かすことなく。

夜の愛しき訪問者

 その時間、私は大抵食事中か食後の休憩中だ。それを狙って来るわけではないと思うが、彼らもご相伴に与りたいと考えているのは間違いなさそうだ。

 しかも、ちょっとズルイところがあって、最初は小さな子供がやって来て、こちらの気を引く。その後に兄弟と思われる、少し大きいのが現れる。そして時には兄弟で場所の取り合いをする。攻撃を仕掛けるようにぶつかり、小さい方を追いやるのだ。
 弱いものイジメをせずに分け合って食べろと思うが、逞しくなければ生きていけないのかもしれない。そうこうしていると親が出て来る。時には夫婦で来る。
 こうしたことは、もう毎晩の行事みたいなもので、こちらも彼らに毎回構うことはしないが、それとなく観察していると、やって来るのは4、5匹家族のようだ。

 そう彼らはヤモリの家族で、毎回、私の帰省を待っているかのように、帰るとキッチンの窓ガラスに張り付いて来る。だからいつもこちらには白い腹と手足の指しか見せないが、モミジ葉の先がプクリと膨れたような指が実にかわいい。
 ヤモリは別名カベチョロとも呼ばれるようにちょろちょろと這いまわるが、我が家にやって来る「夜の訪問者」達の動きは鈍い。窓ガラスにじっと張り付いたまま身動き一つせずにいることもある。
 獲物を見つけてもサッとは寄らない。間合いを詰めるようにゆっくりゆっくり近づいて行き、1、2cmの距離まで近付きながらじっとしていることも結構ある。
 それをガラス窓の内側から見ているこちらの方がやきもきする。そこまで近付けばもう一気に飛びかかるだけだろうと思うが、どうもそうならない。獲物に興味がないのかと思って見ていると、さらに近付いてパクっと食いつく。

 そんな彼らの様子を毎晩見ているものだから彼らにシンパシーを感じてき、まるでペットを飼っているような気になっている。
 いままでなら食事が終わるとさっさと電気を消して別の部屋に移るのだが、今回の帰省からは寝る直前まで電気を点けたままにしてやっている。エサになる虫達が明かりに釣られて集まって来やすいように。

 さすがに夜10時を過ぎると、ヤモリも自分達のねぐらに帰っているだろうと思うが、案外夜更かしで12時近くになっても窓ガラスの向こうにいたりする。
 ある時など小さな赤ん坊のようなヤモリがドアガラスに張り付いたまま身動き一つせずいた。もう12時である。いくら何でもこの時間まで獲物を狙って待機しているわけはないだろう。ましてや小さな子ヤモリである。この態勢で寝ている? いやいや、そんなわけはないだろうなどと思いつつ、しばらく眺めていたが、こちらの方が根負けして電気を消し、その場を離れたが、本当に寝ていたのだろうか。

 時には悲劇が起きることも。ヤモリがいなくなったと思い窓を閉めると、室内にバタッと落ちてくることがある。そういう時の彼らの動きは素早い。物陰にサッと隠れてしまい姿を見せない。
 室内に入り込むのはいいが、その後、外に出られなければ物陰でミイラになってしまう可能性さえある。それはお互いにとって不幸だから、寝る前に窓を閉める際は、できるだけゆっくり、そっと閉めて彼らを中に閉じ込めないようにしている。

 昼間に庭の草陰で彼らの姿を見かけることもある。特に小さな子ヤモリが結構いる。それが毎夜、窓ガラスに来る家族の一員かどうかは分からないが、挨拶ぐらいはしてもらいたいと思う。「初めまして」とか「いつもお世話になります」とか。こっちだって君らに気を使って無駄な電気を点けているのだから、と。せめてこちらに首を曲げ、一瞥ぐらいしてくれてもよさそうなものだがなどと勝手に思っている。

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白美人が夜忍んで来る

 同じ「夜の訪問者」でも歓迎されざる者もいる。白美人(ハクビジン)! いや、間違えた。色白の美人ではなくハクビシンだった。
 夜11時過ぎ、そろそろ寝ようかと思いPCのスイッチを切ると窓の外で大粒の雨が降り出したような音が聞こえてきたので網戸を開け外の様子を確認した。すると、そこにハクビシンがいた。
 雨音のように聞こえたのはハクビシンが剪定したモミジの枝の上を歩く音だったのだ。
 目が合った時、タヌキかと思った。だがタヌキが出るという話は耳にしたことがなかったので、タヌキではなくハクビシンなのだろうと思った。とにかく直接見たのはこの時が初めてだった。

 実は以前から夜中に天井裏を走り回る音に気付いていた。ネズミがいる。当時はその程度に考え、あまり気にしていなかったが、ネズミが走る音にしては大きかった。
 我が家の周囲に何かが出没しているのは分かっていた。ある雪の日などは獣の足跡が残っていたし、庭を掘り返したような跡もあった。また猫ほどの大きさの茶色っぽい小動物の姿を目撃したこともあった。
 イタチだろうと考え屋根の隙間を塞いだり、コウモリ除けのスプレーを天井裏や屋根の隙間にかけたりもした。
 それでしばらくは奴らも姿を消した、はずだった。だが、どうもそうではなかったようだ。

 ハクビシンについて情報を収集すると
1.夜行性
2.小さな穴を塞ぐ
3.屋根に届く木や枝を伐採し、ハクビシンが屋根に上らないようにする
4.木から飛び移ることはできない
5.身を隠しそうな雑草を切り、ゴミを外に置かない
6.ハクビシンが嫌いな音を出し、明るくしておく
 などがあったので、早速、屋根近くの庭木を伐採、剪定する。

 以前は猫だと考えていたが、その時に屋根への足場になりそうな木は思い切って伐採していたが、今回さらに枝を切っていった。
 強烈な臭い、例えばニンニクなどの臭いは嫌いらしいので、昔ながらの臭いがきつい防虫剤、ナフタリンを買ってきて天井裏に大量に投げ入れた。
 また暗がりを好むとあったので、街灯を遅くまで点けていたり、各部屋の電気を点け、できるだけ外に明かりが漏れ、庭を照らすようにしている。
 さて、これで効果があればいいが。
教訓。「夜の訪問者」に妙な期待はしない方がいい。大体、チャールズ・ブロンソンの映画「夜の訪問者」にしてからが、夜にやって来る訪問者にロクなものはいない。我が家の愛しきヤモリは別にして。



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