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ヤナセVSバルコム、BMW福岡の陣の勝者は(2)


浮気心をくすぐられる

 「○○と畳は新しい方がいい」とは昔よく言われた。今こんなことを言えば、たちまち「セクハラ!」と訴えられそうだが、新しい相手に心動かされたのは事実だ。一度などすっかりその気になったが、既(すんで)のところで思い止まった。何分相手が悪い。日本人はブロンドと青い目をした欧米系に弱い。よく見ればソバカスだらけでも、ちょっと笑みを浮かべられるとチャーミングに思えてメロメロになる。

 かくして一度諦めた相手探しをまた始めた。この間まで気に入っていた相手はアウディA3スポーツだった。もともと今より少しコンパクトな車を探していたからアウディA3スポーツは問題ないというか、試乗して気に入ったのだ。
 ハンドルの軽さを含め全体的なレスポンスは国産車並みで、BMWの重さとは比べ物にならなかった。これなら人気になるはずと思い、ググッと気持ちが傾いた。
 試乗したのは新車だったが、端から新車を買う予定はなかった。実のところ今までで新車を買ったのは一度しかない。あとは全てユースドカー。車は走ればいい、と考えていたし、車を眺めてニタニタする趣味も、毎日、車を磨き上げる趣味も持ち合わせていない。第一、青空駐車だから雨にも当たれば黄砂で汚れもする。これが新車ならちょっとした汚れも気になるところだが、中古車ならそれほど気にならない。
 というわけで、ほぼ目安を付けた車を見に行った。気に入れば買う予定だったが、いざ試乗してみると今ひとつピンと来るものがなかった。というか車から降りた直後、内臓に不快感を感じた。微振動が伝わってきて、身体に怠さを感じたのだ。わずかの距離を試乗しただけでこれだから、とても500kmあまりはこの車で走れないと判断し購入を取り止めた。

 これを機にアウディA3スポーツという選択がすっぽり抜け落ちた。個体の問題でA3スポーツ全体の問題でないのは分かっていたが、とにかくA3に乗りたいという気がものの見事になくなってしまった。
 カーリースという選択もある。車に詳しい友人がそう教えてくれた。それはいままで考えたことがなかったので早速色々調べることにした。ついでに国産車ならと尋ねると、スズキの「NEW スイフト」がコンパクトで走りもいいと教えられた。
 輸入車のリースは法人対象で、個人事業主もOKということだったが、リース金額が結構高かったので取り止め。ただ、国産車ならカーリースはアリだと分かったのは収穫だった。
 スズキ「スイフト」のリースはかなり考えたが、やはり高速走行時の安全性を最優先にした。最近、高速道路の事故が激増しているだけに、あまりにもコンパクトな車は避けたかったのだ。
 そんなこんなで結局、今乗っているBMW3シリーズを修理して乗るのがベターという考えに行き着いた。これで車選びは終わるはずだった。

 ところが、またまた浮気心をくすぐる相手が現れた。今まではアウディA3をネットで探していて、BMW1シリーズは全く見ていなかったのだが、それでもと、1シリーズの中古車を探したのが悪かった。
 初年度登録2017年の中古車が複数台あったのだ。出品者はいずれもヤナセBMW福岡で、デモカーとして使用していたもので走行距離は5,000km未満。これは買い得と、購入をほぼ決定。
 しかし、根が慎重居士だから、一度は購入と決めたものの翌日から4日間旅行に出る予定だったので、帰国後に決めようと思い直した。

 結論から言えば、買うのをやめて今乗っている3シリーズを修理して乗ることにした。踏ん切りがつかなかったのは今乗っている車のエンジンの調子、燃費、乗り心地がよく、販売店巡りで聞けば聞くほど、乗り換えると3シリーズの乗り心地は得られそうにないと分かったからだ。特に高速走行の安定性と、地面に吸い付くようなコーナリングが。これなら多少手を加えて後3年乗って廃車。3年後には片道500kmあまりも1人で運転するのはきつくなるだろうから、長距離運転はやめて小型車で中短距離運転にふさわしい車に替えるのがいい。そう決めた。

未使用車、デモカーが相次ぎ市場に

 かくして大山鳴動してネズミ0匹。2週間も車選びに時間をかけて、結局元の鞘に収まり今乗っている車をこのまま乗り続けることにしたわけだから、大いなる時間の喪失といえるが、全くムダになったわけでもない。その間、色々な情報が得られたのは大きかった。
 その内の一部は前回書いたが、今回もヤナセBMW福岡で何かが起きているのではないかと感じさせられることがあった。
 そう感じたのは新古車(未使用車)が複数台、中古車市場に出ていたからだ。新古車の説明はいまさら必要ないかもしれないが、ご存じない人のために説明すると、登録しただけで全く乗られていない車、未使用車のことである。
 未使用だけど登録だけはしているから新車としては販売できない。つまり中古車価格での販売になるわけで、買う側にとっては新車同然の車を安く買えるメリットは大きい。
 一方、売る側にすれば新車で売れるものを登録したというだけで価格を下げて売るわけだから利幅は減る。なぜそんなバカらしいことをするのかと不思議に思われるかもしれない。なかには、それって横流し品? 犯罪絡みだったりすると却って高い買い物になるのでは、と不安に感じる人もいるかもしれないが、そういう心配はほとんど無用。
 というのも、未使用車を販売するのはカーディーラーで、自社で登録した車を中古車市場に出しているのだ。モデルカーが自社で試乗車として使った車なのに対し、未使用車は文字通りの未使用。一度も乗られることなく倉庫に在庫として置かれていた車である。

 こうしたことは車業界だけでなく多くの流通業で行われている。例えば携帯電話販売業者が大幅値引き販売できるのも同じような仕組みだ。
 カーディーラーはメーカーから、例えばヤナセBMW福岡がカーディーラーで、BMW Japanがメーカーだが、メーカーはディーラー(販社)に対し、厳しい販売目標数字を課している。その数字を達成できなければ何らかのペナルティーが加えられる。逆に達成すればインセンティブが与えられるわけだ。
 もう少し分かりやすくいえば、月間、年間○○台売れば、△△が報奨金(名目は色々だが)としてバックされる。これは見方を変えれば△△は仕入れ価格の値下げと同じだから、その分販売価格を下げて売っても利益は確保できる。
 ただ、年間○○台に販売台数が届かなければ△△の報奨金は得られない。しかし、後数台(数10台?)売れば、目標台数に届き報奨金が得られるならどうだ。自社登録(自社買い)してでも目標数字を達成しようと思っても無理ないだろう。

 「いまや自社登録は当たり前。業界で広く行われている」という声もあるが、それも程度もの。自社登録した車をそのまま所有していれば、それは不良在庫になる。なるべく早く販売した方がいいが、中古車市場への流し方も調整しなければならないし、目標達成のためとはいえ自社登録し過ぎれば報奨金で穴埋めどころかマイナスになる。
 ヤナセBMW福岡の前身、富士モータース時代は自社登録をし過ぎて、ヤナセに身売りした頃は「倉庫に自社登録車がゴロゴロしていた」と当時を知る関係者は言う。
 自社登録してでも販売台数を増やせば「メーカにいい顔ができる」反面、自社の首を絞めることにもなる諸刃の剣だ。

 現在、福岡市場ではバルコムの自社登録車は中古車市場で見かけない。対してヤナセBMW福岡は先月末から今月にかけて複数台、自社の中古車販売店に出しているのが気になる。たまたま今回だけなのか、今後も市場に出回るのか。福岡東店閉鎖と関係しているのか、それとも他の理由からか。

 考えられるのは、いままで「BMW Japanの言うことを聞かない」と一部で揶揄されていたヤナセBMW福岡が本気になった(尻に火が付いた)ということだろう。メーカーから指示された販売台数目標を達成しなければバルコムBMWにますますシェアを奪われかねない。傍目にもメーカーはバルコムBMW寄りに見える。ここらで反転攻勢に出なければヤナセBMW福岡はバルコムBMWに座を明け渡すことになりかねない。ヤナセBMWから現車、前車と続けて買っている身としてはヤナセBMW福岡にもっと頑張って欲しい、アフタサービスも充実させて欲しいと願うばかりである。



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