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街からコンビニが次々に消えていく

 この1、2年、各地でコンビニ店舗の閉鎖が目立ちだした。
相次いで5店舗も閉鎖し、街からコンビニが消えてしまった福岡市南区のある区域のような場所もある。
 かつては流通小売業の優等生で、右肩上がりの成長を続けてきたコンビニ業界。
だが、最近は出店過剰気味で以前の勢いがなくなっているのは事実だ。
それにしても最近の店舗閉鎖状況は激しい。
詳しく見ていくと、出店過剰という理由だけはない別の事情も見えてくる。

 この1、2年で5店も閉鎖し、コンビニ空白地帯ができることなど、少し前なら考えられなかったことである。
なぜ、そんな状況になったのか。
まず、閉鎖店舗の内訳を見てみよう。
ミニストップが3店に、セブンイレブンが2店だった。
 ここで問題なのは、狭い地区で5店閉鎖という数もさることながら、むしろ業界トップのセブンイレブンの店舗が同一地域で2店も閉鎖したことの方だ。

 もう少し詳しく見てみると、セブンイレブンの1店は団地の真ん中に位置していた。
以前、郵便局があった場所で、郵便局が20m程離れた場所にもう少し広いスペースを確保して移動したので、その跡にオープンしたのが4、5年前。目の前にバス停もあり、決して地の利が悪いわけではない。
 もう1店は20年以上前にオープン。
 当時、酒類販売は免許制で、免許を持たないところは酒類を売ることができず、いまのようにどこのコンビニでも酒類が買えたわけではなかった。そこで酒類販売免許を持った酒店などにコンビニへの業態変換を呼び掛けていた。一方、地域のお酒屋さんも売り上げ減少と、配達業務の肉体労働を嫌い、新業態への誘いに渡りに船とばかりに応じていた。
 同店もこうした例に漏れず、長年親しまれてきた地域の酒店の看板を下ろし、セブンイレブンの店舗に衣替えした口だった。それが再び看板を下ろすことになろうとは。しかも事前の予告はもちろん、1片の張り紙もなく、ある日突然、シャッターを下ろしたのである。

 ところで、両店ともにすぐ近くに競合店があったわけではないから、競争に敗れて撤退というパターンではない。
 では、なぜ閉鎖(店主にとっては廃業)したのか。ここにコンビニ残酷物語とでもいえる現状がある。

 この両コンビニには共通している点が2つある。
1つはサラリーマン経営者という点である。

 一口にコンビニ経営といっても、経営パターンの違いによって大きく3つに分かれる。
1.土地も建物も自己所有のオーナー経営者2.土地は借地で、建物のみ自己所有の経営者3.本部が用意した土地、建物で経営のみをするサラリーマン経営者
 このうち利益が出ているのは1と2のパターンで、3のサラリーマン経営者の店舗はどこも概ね火の車である。

 それでもコンビニ初期の頃は競合もなく、そこそこ利益は出せていたが、近くに競合店舗ができればとたんに売り上げ減で、厳しい経営を強いられるようになる。
 しかも周辺の市場調査がお座なりなのかどうか、よく分からないが、実際にオープンしてみるとオープン前に示された資料とは随分違うという話はよく聞く。
それで訴訟になった例も1つや2つではない。
 さらにひどいのになると他社グループ店ではなく自社グループ店がすぐ近くにオープンすることまである。どっちみち他社グループの店舗が出る。それなら他社が来る前に自社店舗を出店させるという、陣取り合戦のような出店もあると聞く。これでは出店させられる方、出店させられた方ともに大変である。
 まあ、体よくスクラップアンドビルドの駒にされているのかもしれない。というのもフランチャイズ店舗の経営者は社員ではなくそれぞれオーナーだから、本部の都合や命令で店舗の配置転換やスクラップアンドビルドをすることはできない。そのため近くに新店舗をぶつけることで、自然淘汰を狙っているといえなくもない。

 さて、もう1点は駐車場スペースがなかったことだ。
ちょっと前まではマンション1階の一角に出店というパターンが一般的だった。そのため駐車場スペースは最初から確保していないし、その必要性を感じていなかった。
 コンビニとは文字通り「便利さ(コンビニ)」を提供する店舗だから、顧客は徒歩で来る周辺住民。食品系スーパーマーケットよりさらに狭い商圏を想定している。
車での来店など当初から想定していないのは当たり前だ。
 もちろんいまでもこの前提はそのまま生きているが、客の来店形態が都心部の一部店舗を除き大きく変化しだした。
そのため最近は広い駐車場スペースを確保した単独店舗への出店が中心になっている。

 コンビニの売れ筋商品も変わってきた。
いまや弁当でも、飲料でもなく、実は公共料金の取り扱いが一番の「売れ筋商品」
なのだ。
こうしたことも車での来店が増えたことと関係しているかもしれない。

 3点目は24時間営業がコンビニ経営者にとってかなりの重荷になっている点である。
 現代がいくら24時間社会といっても実際に24時間稼働しているのは都心のみで、郊外や住宅地の店舗では24時間開けているメリットは少ない。ましてや地方の店舗では夜間のアルバイト自体が集まらない。そこに加えて万引きその他の被害は出るし、これではなんのためにやっているのか分からないとこぼす経営者は多い。
 実際、夜間のアルバイトが集まらなければ経営者自身が睡眠時間を大幅に削って店頭に立たなければならない。それでも見返りがそれなりにあるならまだ我慢もできようが、赤字が増えるだけでは廃業する店舗が今後ますます増えそうだ。
 ただ、本部にとって、こうした状況は悪材料ばかりではない。自らスクラップアンドビルドができない以上、自然淘汰的に旧型店舗の廃業が進むのはある意味歓迎できるからだ。

 いずれにしろかつての成長路線は通じなくなりつつある。
生鮮品を扱い始めた店舗もあるが、いまのところ主流になるとは思えない。
新たなビジネスモデルの創出に向けたコンビニの試行錯誤はまだまだ続きそうだ。
それと同時に、コンビニ残酷物語もまだまだ続くに違いない。



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