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 理由(わけ)あり商品が人気な理由(わけ)


「理由あり商品」は食品が人気

 このところ「理由あり商品」が人気だ。
以前から一部で「理由あり商品」の販売は行われていたが、最近はスーパーやデパートなどが「理由あり商品」の販売を積極的に行っているだけではなく、ネット販売でも人気商品になっている。

 呼び名は「理由あり商品」「もったいない」「規格外商品」などと色々で、販売方法もそれぞれ違うが、共通しているのは従来なら店頭に並ばなかった商品を販売していること。
 といっても機能、性能、中身に問題があったり、賞味期限切れの商品というわけではない(賞味期限切れの商品を「賞味期限切れ」と明示して半額以下で販売しているスーパーも関西にあるにはあるが)。
 では、どこが「理由あり」なのかといえば、ちょっと形が歪(曲がっているキュウリ)だとか、大きさが不揃い、数が半端、外装箱が少し傷んでいる、少しへこんだ缶詰、賞味期限の残り日数が少ない等々というわけだ。

 要は贈答品としては問題がありそうだが、見てくれさえ気にしなければ自家用消費にはなんら問題ない商品ばかりである。
 中身に問題がないのに価格が安いわけだから、このところの節約志向と相まって一気に人気が出たというわけだ。
 例えば博多大丸デパートは4月に「もったいない! 食品理由あり商品」と題して開催したが、あまりの人気に6月(5月だったかも)に再度開催。この時もレジに順番待ちの行列ができ、最後列の案内板を持って整理するほどの人気振りだった。

 実は「理由あり商品」人気はいまに始まったことではなく、随分昔からこの種の販売は行われていた。
ただ、昔は「規格外」というよりは「非商品」「くず商品」として密かに内部処理されていただけだ。
 例えばビスケット工場などでは製品にならない割れたビスケットなどを従業員用に持ち帰らせたり、安く分けるなどしていたし、デパートなどでは縦糸が1本欠けたジャケット、前シーズンの売れ残り衣料などは「従業員販売」という名で驚くほどの安値で販売していた。
 ただ、こうした「規格外商品」は大量生産・大量販売に比例して増え続け、もはや内部だけでは処理できなくなり、「従業員とその家族向け販売」という名の特定セールになり、さらに最近はアウトレット商品販売という名で流通小売りの一端を担うまでになっている。
 不況も影響して、三菱地所、三井不動産系のアウトレットモールは各地で出店競争をするほどの人気になっている。

安さよりお得感の演出が重要

 いずれも人気の秘密は価格的魅力だが、アウトレットやデパートの「理由あり食品」人気は安さだけが理由ではない。
 缶詰を例に取れば、つい先日まで1個500円、800円で店頭に並んでいたものが、残り賞味期限が半年を切ったというだけで半額近くで売られるわけだから、消費者にしてみれば値引きセールと同じ。非常に「お得感」がある。

 この「お得感」というのがキーワードだが、これは値引率とは別ものである。
例えば1000円のものを500円で販売するのも、100円のものを50円で販売するのも、値引率でいえば同じ50%引きだ。ところが、お得感は極端に異なる。

 両者の割引率とお得感を数字で表すと次のようになる。
100円のものを50%引きで買った場合
 100円×50%=50円
 100円−50円=50円 ← 50円得したわけで、これがお得感。

1000円のものを50%引きで買った場合
 1000円×50%=500円
 1000円−500円=500円 ← 500円の得(50円の10倍得)。

 以上のことから割引率は同じだが、お得感は得をした絶対価格であり、この差は大きいということが分かるだろう。
 つまりお得感は元々の価格が高いものほど大きくなるといえる。
さらにいえば、この種のセールは常に安くものを売っているスーパーなどより、比較的高い商品を販売しているデパートなどの方に有利に働くといえる。
 デパートの理由あり商品販売人気の背景には、このお得感人気がある。

 もう一つの側面は「もったいない」人気、言葉を換えれば節約人気だ。
節約という言葉にはどこかケチ臭い響きがあり、従来はあまり支持されなかった、少なくとも威張って言える言葉ではなかったが、「もったいない」という言葉が国際語になりだしたのと、不況の影響でこの言葉が新しい光を放ちだした。
つまり時代性である。

 「時代性」と「お得感」−−この2つが揃った時に「理由あり商品」が人気になったわけで、ただ単に規格外商品を安く売るだけではダメだ。

 同じ規格外商品を販売している店でも売れている店と売れない店があるのは「見せ方」が違うからだ。
 「見せ方」をどうするかという問題は業種が違ってもいえるが、そのことはまた別の機会にでも。



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