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 マーケットの見方の盲点(1)


 日本メーカーはいつも同じパターンを繰り返し、自分で自分の首を絞めていく。
電子レンジがそうだったし、パソコンがそうだし、デジカメもそうだ。
過去の歴史に学ばないのか、皆と同じことをしないと不安なのか、冒険が嫌いなのかよく分からないが、とにかく毎度同じ失敗を繰り返し、価格下落と利益率低下を招き、最後は体力勝負になる。
 だから市場には似たような商品ばかりが並び、消費者にとっては面白みがなくなる。そうなると選択肢は価格かブランド、せいぜい加えてもカラーしかなくなる。
これではアジア諸国に負けるのは当たり前だろう。

 例えば最近人気のネットブックと呼ばれる小型の携帯パソコン。
台湾メーカーのアスースが出してブームになったが、日本メーカーの参入は市場の動向を見極めた後で、最後発に近かった。
 後発なら後発でもよいが、後発ならではのものが付加されるべきだろう。
それがアスースやヒューレッドパッカード、デルと機能、性能共に大差なければ、後は価格勝負しかない。
 だが、価格はアスースに横並びの4万円台。これでは国内市場ではメーカーの知名度でなんとか売れるだろうが、国外(世界市場とまでは言わないが)では勝負できない。
もちろん端から国外市場は考えていないというのなら話は別だが。

 ネットブックに関して言えば元々その市場は存在していた。
OSがWindowsになる前のDOSの時代からサブノート、ミニノートと呼ばれる小型軽量パソコンの市場は存在していた。
ところがWindowsの登場で1画面に複数のソフトを開けるようになり、メーカーは画面の広さを競うようになり、サブノート市場の存在は忘れ去られていった。
 例外は東芝の「リブレット」で、同社が唯一、サブノート市場で孤塁を守っていたが、確か「リブレットL5」を最後に撤退した。当時、「リブレット」はヘビーユーザーの間で結構人気があり、そこそこ売れていたはずだ。私自身も「リブレットL3」を持っているが、随分と重宝したものだ。
 東芝というのは面白いというかユニークというか、ちょっと変わったところがあるメーカーで、NECが日本国内市場でしか通用しない「98シリーズ」で圧倒的シェアを誇っている時、海外を中心に「ダイナブック」を発売し、DOS/Vパソコンでは先を行くなど先見性はあるのだが、後が続かない。デジカメでも同じ道を歩んでいる。
 それはさておき、小型軽量パソコンが受ける市場が存在したという点が1つ。

 もう1点は価格。
5万円を切れば、あるいは5万円台なら爆発的に売れる市場は以前から存在した。
しかし、5万円前後でパソコンを売っても利益率が非常に悪いので、既存メーカーはその市場を無視してきた。
 これが日本メーカーのネットブック市場参入が遅れた理由である。

 さらに言うなら、両市場を合わせて捕らえることをしなかった、できなかった。
というのは、片方の市場向け商品を投入したメーカーはあったからだ。
片方の市場というのは前者のサブノート市場のことである。
 工人舎というベンチャー企業がこの市場向けの商品を出し、ヘビーユーザーを中心にそこそこ売れていた。ただ、価格が20万円前後と割高感があったため、ヒット商品になることはできなかった。
 20万円台ならパナソニックの「レッツノート」とほぼ競合価格帯になり、ブランド力、使いやすさでは「レッツノート」の方にはるかに分があったからだ。

 こう見てくると、もうお分かりだろう。
                                             (次に続く)


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