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伸びる企業には理由がある〜英田エンジニアリング(1)


 仕事柄、数多くの企業を取材してきたが、「ああ、伸びるのは当然」と納得できる企業は案外少ない。
 ちょっと変に聞こえるかもしれないが、多くの企業、特に中小企業の場合は「結果的に伸びている」ことが多く、伸びるべくして伸びている所は案外少ないものだ。
「伸びるべくして伸びる」ためには戦略的な発想と経営が必要だが、大手企業は別にして、中小の場合は目先の仕事に追われていることもあり、なかなか戦略的に物事を考えられない。結果、場当たり的にも見える経営に走らざるを得ないのが現状だろう。
 その点、英田エンジニアリング(岡山県美作市三保原678)は中小企業にしては珍しく戦略性を持った企業といえる。(文中敬称略)

ローカルでも不利ではない

 同社は現代表取締役会長の青山操男が冷間ロール成形機・造管ラインの製造・販売を主力事業とし、昭和49年、岡山県北の地、美作市で創業。当時の地名が岡山県英田郡英田町であることからも分かるように、社名の「英田」は地名から付けたものである。
 高度な技術を持った企業の所在地は都心部、というのは偏見かもしれないが、創業の地がローカルでも、その後都心部に本社を移す企業は結構多い。それはローカルと都心部では情報量に圧倒的な差があり、それがビジネスチャンスにも関係してくるからである。
 ところが前職時代から欧米各地を飛び回っていた青山に、ローカル立地のマイナス点は全く意識になかった。むしろスイスの企業などを見ていたから、ローカルのよさこそあれ、それがマイナスになることなど考えられなかったようだ。
「当初、お客さんは関西から東の方が多かったので、ここは中国自動車道にも近いので便利」と青山は言う。
 面白いのは本社所在地が旧英田町というだけでなく、青山自身が英田町出身、在住であるばかりか、現社長の万殿貴志も英田町の出身という徹底したローカル企業(地域に根ざした企業)だ。

 とはいえ、やはりローカルの弱点はある。一つは人材確保の難しさだ。
地場中小企業の多くが人材確保に四苦八苦しているのは景気低迷期でもさほど変わらない。それがローカル立地ともなればさらに苦労したに違いない。ところが、「当時この辺りは働く場所が少なかったから、人材確保でも有利だった」と青山は笑う。
 ただ、技術の世界は日進月歩。自社の技術力もアップしていくに従い、求める人材のレベルもアップしていく。その一方で地元出身の若者は大学卒業後、地元に戻ってこなくなる。親は地元で就職してもらいたいと考えているのに、子供は「地元に働く場所がないから」と帰ってこないのだ。
 逆に言えば、地元に働く場所があれば、それも高度な技術力を備え、自社ブランドの製品を持った企業があれば、大卒後、地元で就職する若者はいるということである。
 そこで先々を考え、青山が実施したのが自社のTVコマーシャルである。いまでこそ同社の顧客は県内にも多数いるが、20年近く前は関西以東が中心。県内でTVコマーシャルを流しても販促にはならない。
「製品を売るためではなく、人材確保と企業のイメージアップを目的にしたものです」
 大手企業ならいざ知らず、地場中小企業で販促目的以外でTVCMを流そうと考えるところはそう多くはないだろう。ところが、青山は販促より人材確保、企業のイメージアップにTVCMを使おうと考えたのだ。この辺りに青山の戦略的な思考を感じる。
                                                 (2)に続く


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