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壊れていく日本社会(5)〜海外市場頼みが国内を衰退させる


海外市場頼みが国内を衰退させる

 「パンがなければブリオッシュを食べればいい」というマリー・アントワネットの言葉に今の日本人は従い、高止まりしたままの米価対策で「コメがなければ麺かパンを食べる」とばかりにうどんやラーメン、パンに主食を替えつつある。
 昭和30年代、近所の同級生の家ではおひつの中に里芋が入っていて家族がおいしそうに食べているのを羨ましく見ていた記憶がある。
 その当時、私はおいしそうだな、いいなと見ていたが、今振り返ればサツマイモを混ぜて炊くことでご飯の消費量を減らしていたのだろう。
 それに似たことが今行われている。

 一度コメ離れを起こした消費者は今後コメの価格が下がると一部の人は戻るかも分からないが、大半の人は米食に戻らないだろう。
 今回のコメ騒動の前からコメの消費量は減少しているが、今回の米価高騰がとどめを刺す形になるに違いない。
 では、どうするか。
海外では健康志向と相まって和食ブームでコメの消費も海外では増えているから、今後は市場を海外に広げるべきだと輸出を奨励している。
 またもや外国頼みだ。

 今、日本の産業はほぼすべてと言っていいほど市場を外国に求めている。自動車がその筆頭だが、酒もコメも国内市場から海外市場へシフトしつつある。
 だが海外で売れるのはブランド力があるものだけで、コメ一般や普通酒や本醸造酒が海外で売れるわけでもない。
 売れるのはコシヒカリなどのブランド米や純米大吟醸・純米吟醸酒だけだ。

 ブランド米や高級酒が海外で売れていると聞けば右に倣えで皆海外市場向けの生産にシフトし出す。
 その結果国内市場には安いものか高騰したブランド米、ブランド酒しかなくなる。

 ここでちょっと考えてもらいたいのが焼酎ブーム。最近は少し落ち着いたとはいえ、かつて日本酒を造っていた酒蔵がこぞって焼酎も造り出した。
 日本酒が売れなくなり焼酎が国内市場を広げたからだが、かつては九州、それも南九州での消費量が80%近くだった焼酎がなぜ全国で消費されだしたのか。
 それにはいくつかの理由があるが、一つには価格の安さがあり、もう一つは産地の努力である。
 産地の努力の中には乙類焼酎独特のクセ(雑味臭)を消し、個性を無くして全国受け(東京受け)を狙ったマーケティングもある。

 ただ1995年当時「いいちこ」で有名だった三和酒類の西太一郎社長(当時)を取材した時、「マーケティングと宣伝の上手さがあった」という私の言葉に西氏は次のように反論した。
「ストーリーは後から作られるというか皆さんがそのようによく言われるんですが、実際は北九州から広島、大阪、東京という順に広がって行ったんです。ただ岡山と名古屋の間が清酒にこだわった地域で、越すに越されぬ大井川があった」
「何か最初から意図的に”下町のナポレオン”で仕掛けたというように書かれているがそれは違います。そんな簡単なもので売れるならたやすい。一過性のものならできるが、定番になるのはそんなたやすいものではない」

 焼酎ブームが去り、焼酎の売り上げはピークの2008年以来減少を続け、2024年は約3割減少している。
 因みに売上高1位は本格芋焼酎「クロキリ」で知られている霧島酒造(宮崎県都城市)で2位が麦焼酎「いいちこ」の三和酒類。

 日本酒も焼酎も国内市場は頭打ちで海外に市場を求めようとしているが、似たような例は海外でもある。
 「フランス人はワインを水代わりに飲む」と言われたことがあるが、それは水の価格がワインと同じくらいに高い、ワインを水で薄めて飲むということの2つから来た話のようだが、そのフランスでワイン離れが起きているとのこと。
 フランスでも若者のアルコール離れは顕著なようで、ワインの国内消費量は減少している。
 それならブドウ農家やワイン醸造所の経営は大変だろうと思うが、国内消費量が減った分、海外に市場を求め輸出量が増え国内消費量を補って余りあるらしい。
 協力の一端を担っているのは日本で、ここ数年スーパーやドラッグストアがワイン売り場を焼酎売り場以上に拡大しているのが目に付く。

 ともあれ市場に海外に求め内需を疎かにするのはリスクがあるということは直近の中国からの旅行者のキャンセル続出からも分かる。
 目先の売り上げを取るか、中・長期的な戦略で臨むか。それぞれに長所、短所があり軽々にこれが正解とは言えないが、やるなら3番手までで、それ以後に続くのは儲け少なくリスク大になりそうだ。
                                             (6)に続く
 


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