「エネミー・オブ・アメリカ」の世界が現実に(4)


 話を本題に戻そう。危険なのは国家による情報操作で、ウィキーリークスや元CIA職員のエドワード・スノーデン氏の暴露により、大規模な盗聴、情報操作が自国内だけでなく国境を超えて行われている(過去形ではなく、現在進行形)ことが白日の下にさらされた。しかもそれは過去のことではなく、いまも行われているのだ。その片棒を大手IT企業、マイクロソフトやアップル、グーグル、フェイスブックが担いでいる、と言うのが言い過ぎなら(必ずしもそうとは思わないが)、彼らの意図に反する形で担がされている。
 実際、グーグルは中国では中国政府と協力することを選び、中国政府が望まないキーワードによる検索は非表示にしている。
 また上記の企業はいずれも米政府(NSA)から情報提供を求められたと、つい最近明かしている。「多かったのは強盗やそのほかの犯罪に関する警察当局からの要求だった」と言っているが、あくまで「多かったのは」で、それが全てではないという点にこそ注意しなければならないだろう。

 NSAやCIAが最も重宝しているのがフェイスブックだ。なんといってもそこには本名が載っているし、出身校、友達、本人や友達の写真、さらには趣味や昨日どこでなにをしていたかといった、ありとあらゆる情報を得られるからだ。
 フェイスブックに登録すると「知り合いかも?」と見覚えがある名前が表示され驚いた人は多いはず。そこで「フェイスブックはなんて便利なんだ」と喜ぶか、「個人情報が知らない間に覗かれている」と、危険性を感じるかは人によって分かれるが、少なくとも私は後者のタイプで、フェイスブックへの登録はやめ、フェイスブックと同様の機能を売りにしているグーグルプラスは即座に退会した。
 映画「ソーシャルネットワーク」はフェイスブックがモデルになっていることはよく知られているが、その脚本を書いたアーロン・ソーキンと、主人公を演じたジェシー・アイゼンバーグがフェイスブックを退会した理由も、私が感じた危険性に近いものを感じたからのようだ。

 巨大なネットワークシステムが国家と結び付いた時、世論を自由に操ることができる。その怖さは誰もが感じるだろうが、本当の怖さは既述したように、そうと悟られず、微笑みを浮かべながら、静かに入り込み、洗脳に近い形で「操作」されていくことだ。
 映画「エネミー・オブ・アメリカ(原題:Enemy of the State)」は直訳すればアメリカ合衆国の敵だが、「State」は政府を指しているのか、それとも国民か・・・。
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