スタイライフ

 


ゴーン氏の守銭奴的なやり方は断罪すべきだが
長期勾留は許されない(1)


 前回に引き続き今回も「ゴーン問題」について読者(一般社団法人NPERC-J・清水肇さん)から届いたコメントと、それに関連した私の返事をお届けします。

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栗野さん

質問と言うか、もやもやしたものへの回答ありがとうございます。

栗野さんの問題設定、答えとまだかみ合わない気もしてます。

国際的な視点での、「日本の人権軽視」と言うことが多分栗野さんの論点かと思うのですが。
新聞なども、(1)弁護士立ち合いなしでの取り調べと、(2)拘留延長のこと。
(1)に関して、なぜ日本で認めないのか。栗野さんの取り調べ前にはゴーン側で事前打ち合わせは出来ているとのことです。ただ、ゴーン氏のようなスケールの大きく、複雑な嫌疑、組織ぐるみの関与などでは、自ら陣頭指揮をしたとはいえ長年のことなので応援を求めたいところでしょう。
一方検事側はそもそもすでに収集した疑惑に対する証拠に基づき、アウトラインを描いている起訴シナリオの裏付け、構想の曖昧さの回避、補強のための取り調べとすると、一気に攻め上げたい検事側にとっては弁護士の存在は邪魔でしょうね。
また、相手の孤立無援状況では検事側の目論見とは別の思わね矛盾点、作戦ミスなどから蟻の一穴で脇を責めることが出来る利点の可能性もあります。
これは、日本に限らず、国内外でも同じケースは山ほど有り最近のように国をまたぐ案件は増え、しかも法律を熟知し、多くの知恵者が巧みに争点を回避するシナリオの創作を前提にした犯罪を扱うためには、そのレベルでの検察と被疑者それぞれの権利や職務専念のための議論こそ要りますね。


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 外国映画・ドラマでは逮捕されると、すぐ「弁護士を呼んでくれ。弁護士が来るまで話さない」と言うシーンが放映されていますが、日本では弁護士の立ち合い、接見はかなり意図的に制限(邪魔)されているようです。
 逮捕直後は誰しも不安です。その不安な状況を利用して自白に追い込むというのが警察・検察のやり方で、以前は人権侵害にもつながるこういう取り調べが当たり前のように行われていました。
 結果、幾多の冤罪事件も生まれ、そういうことを防ぎ、被疑者の人権を守ろうという活動が弁護士たちの相手で起き「当番弁護士制度」が、大雑把に言えば生まれたと思います。これはたしか、まだ殺人事件に関してのみで、それ以外の逮捕容疑にまでは広がっていないと思いますが、「押しかけ弁護」みたいなもので、弁護士との接点を持たない人(一部の企業幹部や富裕層を除けば、多くの人はそうだと思います)には大助かり。ありがたい制度だと思います。
 この「当番弁護士制度」は全国に先駆け福岡で生まれたのではなかったでしょうか。

 似たようなものに国選弁護士があり、それとどう違うのかといえば、国選弁護士は公判を担当する弁護士です。殺人事件等の裁判では被告に弁護士をつけることが義務付けられています。
 しかし弁護士を知らない、弁護費用を払うカネがない人(現金、預金含め50万円未満しか持たない)もいます。その場合、国(裁判所)が弁護士を選任してくれます。ただ弁護士報酬は私選弁護に比べ少ないため、私選弁護ほど熱心に弁護活動をしてくれるかいうと疑問符が付きます。
 一方、当番弁護士は逮捕直後にやってきていろいろ相談に乗ってくれます。起訴前の一番不安な状況下に弁護士が来てくれるのは精神的にも大きな支えになるはずです。
 両者ともに理念は素晴らしいのですが、現実の運用はどうかといえば、やはり問題はあるようです。その大半は報酬と関連したものですが、弁護士余りが言われている昨今は逆説的な言い方ですが、国選弁護、当番弁護士に名乗り出る若手弁護士が増えるかもしれません。これは私の個人的な期待を込めた見解ですが。

 ゴーン氏の場合はもちろん私選弁護士、それも有名・優秀な弁護士達を選定し、彼らが弁護団を組んで弁護活動をするわけですから、一般人とは桁違いです。それでも弁護士との接見、打ち合わせが制限されることは不利益です。対等な立場で行われるべきで、「No.633:ゴーン氏勾留で変わるかもしれない司法の古い体質」で書いたように、今回の件をきっかけに勾留、取り調べ方法等が変わっていくだろうと思います。すでに取り調べの可視化は行われるようになってきましたから。

                                            (2)に続く

デル株式会社


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