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増えている、客の質問を無視する従業員(1)


 過去何回か「販売力」や「営業力」のダウンについて書いてきたが、どうやら原因は「理解力」のダウンにありそうだ、ということに最近気付いた。
 実は国語力のダウンが他の学科、例えば理科とか数学などの成績ダウンにも関係しているということには以前から気付いていたが、影響はそれだけにとどまらず、社会人になるとコミュニケーション力の不足という形で表れているようだ。
 一時期「KY」という言葉が流行った(いまもそうかもしれないが)。「KY」とは「その場の空気が読めない」ということらしいが、英語でもドイツ語でもなく、日本語の「空気」と「読む」の頭文字を取って合わせたところが、なんとも脳がないというか表現力、発想力、創造力の弱さを感じるが、この「KY」とコミュニケーション力のダウンはほとんど一致している。
 言葉という手段を使って意思を伝え合うことができないから、代わりに空気を読んでほしい(察知して欲しい)というわけで、これは1種の幼児化現象である。その結果、自己主張だけで相手の意見や話を聞こうとしない人達が増えている。

 社内にこういう人間が増えてくると上司は苦労する。社内で意思の疎通が図れないぐらいはまだいいとして(本当は問題だが)、顧客とトラブルになることもある。本来ならクレームになるようなものでないことが、コミュニケーション力の不足が災いして大クレームになるなどということが起こりうるのだ。
 他のクレームと違い、この種のクレームは処理しにくい。しかも当の本人は自分の問題点に気付いていないことが多く、そのことがよけいに処理を難しくする。組織にとっては頭が痛い問題だ。

 さて、以下に実例を2つ。
1つはビジネスホテルでの体験。
 東京から来た友人と岡山駅近くのビジネスホテルに1泊した時のこと。翌朝、友人が桃太郎の鬼退治話の元になった「温羅(うら)伝説」に関係した所に行ってみたいというので、フロントの女性に、どこに行けば見られるかを尋ねた。「たしか総社ではなかったかと思うが」と。
 すると、その女性はきょとんとした顔をして「温羅、ですか?」と言ったきりで、なにも答えようとしない。知らない、とさえ言わないのだ。フロントには他に客もいなく、暇なのにもかかわらず。実際、彼女はすることもなく、じっとその場に立っているだけだ。
 こういう場合、「お客様、申し訳ありません。私は不勉強で存じ上げてなかったのですが、誰か知っている人間がいるかも分かりませんので尋ねてみます。少々お待ちいただけますか」と答えるのが普通だろう。あるいは即座に観光案内を取り出し調べるとか、観光案内所に電話をして確認するぐらいのことは。
 社内教育でもそう教えているはずだし、マニュアルにもそう書いてあるはずだ。
にもかかわらず、それが出来ないのは社員教育が通り一遍で終わっているか、入社時の1回だけで終わっているということだろう。

 ホテルはサービス業で、不動産業ではない。単に空室を貸すだけなら不動産業だ。不動産業ならフロントに人は要らない。自動チェックイン機を配置しておけば済む。 サービス業というのはスチュワーデス(いまは客室アテンダントというらしい)の格好を真似て首にスカーフを巻くことではないはずだ。
 岡山駅前には桃太郎が3匹のお供を連れて鬼退治に行く像が建っている。その桃太郎に関係した話をホテルの従業員が全く知らないのもどうかと思うし、もてなしの心とは程遠いものを感じた。
 ところで、こちらはといえば、結局尋ねるのを諦め、朧気な記憶を頼りに取り敢えず総社市に向かった。

 岡山の桃太郎伝説をご存じない方のために少し説明しておくと、昔、吉備の国(岡山)に温羅という豪族(鬼とされている)がいて悪いことをしていた(地域を荒らしていた)。それを吉備津彦命が犬飼健(いぬかいたける)、楽々森彦(ささもりひこ)、留玉臣(とめたまおみ)という3人の家来と共に倒したと言われている。3人の家来が犬、猿、雉になり、温羅が鬼に変わり、桃太郎の鬼退治話になったというわけだ。総社市には鬼ヶ島ならぬ鬼ノ城(きのじょう)跡もある。

                                                (続く)


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