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ブランド戦略の成否が「お得感」の演出を左右する(2)


メードインジャパンの復権はあるか

 前提条件はブランド力と言い換えてもいいだろう。
ブランド力には商品ブランドはもちろんのこと、企業ブランド、地域ブランドなども含まれるのは言うまでもない。
ところが案外、このブランド力に無頓着な企業、地域が多い。
前提条件の価値を高めずして「お得感」の演出はない、にもかかわらずだ。

 お得感とは満足感の別義語でもある。
例えば「メードインジャパン」がブランド力になったのは価格が安い割に高品質で、耐久性に優れたものを作り、アフタメンテナンスもしっかりしていたからである。
それまでの日本製品は安かろう、悪かろうの代名詞でもあった。
それを努力の結果、覆し、メードインジャパンをブランド力にまで高めたのである。
 もし、これらの一つでも欠けたならメードインジャパンはブランド力ではなくなるだろう。
 例えば高くて高品質だがアフタメンテナンスが悪かったり、高い割には品質がいま一つだったり、安いが品質は落ち、アフタメンテナンスも悪くなればどうだろう。
 かつては安全・安心の代名詞的な企業が次々に経営破綻かそれに近い状態に追いやられたのを見れば答えは明らかだろう。
 これらの企業はいずれも目先のことにとらわれ、その前提条件をないがしろにしたか、忘れてしまったのだ。その結果、いま高いツケを払わされている。

 いま日本の製造業に欠けているのは、このお得感である。
「メードインジャパン」は価格が安い割に高品質で、耐久性に優れたものを作り、アフタメンテナンスもしっかりしているというかつてのブランド力を失っている。価格面では韓国・中国などアジアの新興国に負け、デザイン面では韓国のサムスンに一歩譲り、品質面でも並ばれている。
 メードインジャパンの製品が国際競争力を失ってきたのはコストパフォーマンスの問題だけではない。デザイン力、企画力、品質面を含めてお得感がなくなったからである。
ところが、そのことに気付いていない企業が多い。

 日本の製造業が凋落してきた原因は過去の成功体験、ブランド力にいつまでもしがみつき、変革を怠ったからである。
「モノづくり神話」にしがみついているが故に、商品企画力、商品訴求力、販売力を軽視する傾向が出ている。
相変わらず「モノづくり」を前面に打ち出し、製造業のテコ入れを図ろうとする動きが見られるが、それでは製造業の復活は望めないだろう。
 本物志向、こだわったモノづくり、を主張するだけでは製造業の復権はない。
重要なのは「マーケットとの関係でのモノづくり」である。それを行わない限り、日本のモノづくりに未来はないだろう。

                                                (続く)


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