崩壊するニッポン(7)
富裕層優先の経済が社会を壊す(1)

豪華列車を走らす一方で、路線を間引くJR


栗野的視点(No.814)                   2023年12月14日
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崩壊するニッポン(7)〜富裕層優先の経済が社会を壊す
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 富裕層以外は客ではない−−。そんな風潮が広がっている。交通機関も宿泊施設も観光も主要ターゲットは富裕層だ。その傾向がコロナ禍以後、特に強まったが、それで本当に経済が活性化するのか。この国は立ち直れるのか。むしろ逆ではないだろうか。

豪華列車を走らす一方で、路線を間引くJR

 この頃の社会の動きを見ていると、ある部分、バブル期と似ている。あの頃は誰も彼もが浮かれていた。実質収入は増えていないのに表面的な景気のよさに踊らされ、浮かれ、不動産投資をしない人は人ではないというような風潮すらあった。真面目にコツコツ働くのは才覚がない人、というような認識が広がり、毎晩お立ち台で扇子を振り回し踊り狂っていた人達もいた。

 だがバブルはいつか弾けるし、夢はいつか覚める。そうと分かっていても人は何度も同じことを繰り返す。失敗した奴がバカだ、自分は違うと言い聞かせながら。
 「コスパ」だ「タイパ」だと言って、効率ばかりを追い求める。だから「手っ取り早く稼げる」振り込め詐欺に手を染めるし、見てくればかりを気にし「リア充」と称して表面を装いInstagramなどの写真投稿サイトにアップして「承認欲求」を満たそうとする。「ボロは着てても心は錦」はいまやどこを探しても存在しない化石になった。
 「承認欲求」と一部学者は言うが、中身ではなく表面、外見、外観を繕い、人を欺くのは昔から詐欺師が取っていた手法。新しい衣を着せただけで中身は何も変わっていない。にもかかわらず見かけに騙される人が後を絶たないのはカネが全てと思い込ませる社会故だろう。

 経済優先、効率が全てという風潮は今に始まったわけではない。資本主義社会が進めば進むほどそうなるのは当前の姿であり、資本主義の究極の姿でもある。そして資本主義の中でも金儲け主義を加速度的に進めたのは中国の発展だろう。

 それにしても、と思う。公共サービスが経済優先、効率優先でいいのかと。例えばJR。民間会社だから効率重視は当たり前、採算重視は当然という意見もある。たしかに純然たる民間会社ならそういう意見も成り立つだろう。だがJRは設立当初から完全民間会社ではない。国鉄時代の負債はある意味、国が引き受けて切り離し、既存インフラはそのまま使用しながら赤字路線を切り離して自治体等に押し付けたり、「もうやってられない」と赤字路線廃止に乗り出す。
 その一方で豪華観光列車を建造し、これまた豪華な料金で売り出し、走らせている。

 これっておかしくないですか、と問いたい。JRはダブルスタンダード、二枚舌ではないのか。またそれに同意し、反論しない国民も国民で情けない。
 豪華観光列車は料金も豪華で、とても庶民が乗れるような料金ではない。そんな料金を払えるのは一部富裕層で、庶民は逆立ちしても無理だ。いや逆立ちすれば乗れる人はいるかもしれないが、私にはとても無理だ。そんな列車に乗るよりはゆっくりノンビリ鈍行の旅をして民宿を泊まり歩いてみたいと思うが、それさえできない。

 第一おかしいのは豪華観光列車が通る沿線で幼稚園児や住民が旗を振ったり手を挙げて歓迎(?)する姿だ。自主的ではなく動員されて行っている行為だろうとは思うが、あの歓迎光景を見る度に戦後間もなくの天皇陛下のお召列車を思い出し不快な気になる。
 富裕層の列車旅行を手を振って見送る? 自分達が利用している駅に停車し、地元産品を買ってくれるなら地元にカネを落とすからまだいいが、ただ通り過ぎるだけの列車に手を振って歓迎する国はいまや世界中探してもほとんど存在しないだろう。
 共産党一党独裁の中国でさえいまや見られないと思うが、北朝鮮ではどうだろう。いずれにしてもそれらの国と並ぶレベルということだ。

 それでも豪華列車の運行による収入が従来運行列車の本数サービスにプラスされるならまだいい。既存客に影響はないからだ。しかし、JR各社は既存列車の運行本数を減らし間引き運転している。
 それだけではない。JR九州は通勤時の列車座席数まで減らした。コロナ禍で乗客が減り、収入減になったからやむを得ずの処置だと言い訳をして。
                          (2)に続く
#崩壊するニッポン #富裕層優先社会


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