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「横並び」が日本を救う。(1)
〜過疎地に出向く移動ATM車


 日本社会に根強く残る横並び意識ーー。業界の秩序を守るとの大義名分の下、裏で価格統一を図り、抜け駆けを禁じ、それを破るものは村八分にして業界団体から排除したり、取引先に手を回して実質的な潰しにかかる。
 さすがに現在ではここまで露骨な手段に出ることはないし、また出来もしないが、それでも形を変えて行われている。談合やカルテルは今でも続いているし、今後も完全になくなることはないだろう。それを「必要悪」とする考えが業界だけでなくユーザーの中にもある限り。これはなにも日本だけの話ではない。OPECだって価格維持のための生産調整を公然と行っているのだから。

「横並び」で行こう

 とまあ、横並び意識は日本社会の悪の象徴(は言い過ぎか)のように思われている節もあるが、必ずしも横並びは悪いことばかりではない。むしろ大いに率先して、もっと組織だって、大々的に行って欲しいと考えている。
 そう「皆で渡れば怖くない」というフレーズが流行った時代があったではないか。あれで行こうよ、あれで行ってよ、どんどん行こう、と勧めたい、煽りたい。
 歩調を合わせて横並びで進むことこそ日本企業の得意とするところ、日本社会の特徴である。遠慮をする必要などどこにもない。談合大いに結構。うちは嫌だ、やれないと反対するところも最初は出るかもしれないが、その内きっと仲間に入れて欲しいと言ってくるだろう。その時は「排除」せずに受け入れてやって欲しい。参加企業の数が増えればコストは下がるし、エリア分けをして効率を上げることだってできる。なにより顧客は喜び、大歓迎しているのだから。

 企業は儲けるだけが使命でも喜びでもない。顧客の笑顔と感謝の言葉こそ最上の喜びではないか。企業で働く人達も喜んでくれる客の笑顔に接すれば、ああ、この仕事をしていてよかった、ときっと思うだろう。
 横並びのどこが悪いのだ、と胸を張り、未参加企業には「お前達も参加しろ」と声を大にして言おうではないか。横並びで行こう!

過疎地に出向く移動ATM車

 平成の世が終わろうとしている今、日本社会のパラダイムに変化の兆しが見えている。このまま一直線に進むとは思えないが、従来の儲け主義、自分中心主義、都会ファーストのパラダイムが、わずかとはいえ変化する方向を見せてきたのは大いに歓迎したい。
 例えば銀行。「晴れた日に傘を差し、雨の日に傘を取り上げる」と揶揄された銀行がこの数年、姿勢を変え始めた。なんと、雨が降っている地域に傘を差し出したのだ。
 もちろん、彼らがボランティア精神だけで傘を差し出すとは思えないが、それでもいままで見捨てていた地域に手を差し伸べようとする姿勢は大いに歓迎したい。

 銀行の姿勢が変化したきっかけは東日本大震災だった。銀行の支店も被災し、閉鎖のやむなきに至ったり、再開業するまでに月日がかかり、被災地の人達はさらなる不自由を強いられた。当座の買い物をするにも現金がいる。しかし、近くの銀行の店舗がなくなっていたり、ATMが使えない状態が続いた。
 この状態をなんとかしたい。そう考えたイオン銀行など極一部の銀行は移動ATM車を被災地に派遣したが、多くの銀行は災害時に対応していなかったため、そういう動きを取ることが出来なかった。その反省に立ち移動ATM車を整備する銀行が出始めたのだ。
 もう一つは過疎地のニーズに応えて欲しい、応えたいという動きが地方銀行を中心に広がり、移動店舗車を導入する動きが広がりだした。それが実際に稼働し始めたのが2016−2017年で、各行が競うように移動店舗車を導入し、銀行の無店舗地域や過疎地を巡回させだしている。
                                            (2)に続く


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